あれから12年! 散歩中にお見かけした運命の方に、婚約を申し込みました。
なろうラジオ大賞に応募用の1000字未満のお話です。ホラー、コメディに続いて異世界恋愛ジャンル。
(*^-^*)
「フェルナンド様、またぜひいらしてくださいね」
馬車が走り去ったのを見送った途端、伯爵家のお嬢様であるアンジェラ様が乳母の私に話しかけてきました。
「あ~!フェルナンド様、カッコよかった! 婚約できたなんて夢のよう」
「本当にお嬢様の執念はすさまじいですわ」
「もう、呆れて言ってるのがわかるわよ! 」
それは仕方ないです。
「散歩中に転んだのを助けて貰って、好意を抱いたと言って良かったのですか? 」
「あら、本当の事を言ってはいけないの? 」
「フェルナンド様、戸惑ってらっしゃったじゃないですか? 」
「いいのよ。本当の事ですもの」
「……嘘ではないですが……」
それが12年前の出来事で、フェルナンド様が7歳の時というだけで。
当時3歳お嬢様は、お転婆だった。ある日メイドたちの目をかいくぐり、屋敷から逃げ出しました。やっと見つけた時に仰ったセリフ。
「あたくち、うんめいのひとをみつけまちたわ! 」
それから人が変わったように、行儀が良くなり勉強やダンスのレッスンにも熱心になりました。
あれから12年! 15歳になったお嬢様の熱意に旦那様がとうとう折れ、先方に申し入れご婚約が結ばれました。
一途を通り越して、もはやホラーです。
感慨にふけっていると、後ろから声をかけられました。
振り返るとフェルナンド様。馬車から降りて彼だけ戻ってきたようです。
「散歩中に助けたと仰られましたが、どうしても覚えが無くて。もしかして、人違いではと心配になり。でもアンジェラ様が3歳の時だったんですね」
茫然自失のお嬢様様。
12年の執念をどうやって誤魔化せば……。
「でも、良かったです」
なんと、フェルナンド様は笑顔で仰いました!
「あの小さかった女の子が貴方だったんですね」
「覚えて下さっていたんですか?」
「ええ、『おにいちゃま、ありがとう』と言ってくださった姿がとても可愛らしかったので」
お嬢様は、初恋の君が自分を覚えていたことに完全に舞い上がっています。
「それでこれから散歩でもしませんか? 」
そんなお嬢様に、フェルナンド様はデートに誘いました。
お嬢様は真っ赤な顔で頷かれ、嬉しそうに伯爵家の庭園を連れ立って行かれました。
お嬢様の12年の執念じみた想い知って、微笑みを浮かべるなんて。
もしかして、お似合い? 私は散歩中のお二人の姿を見て、『割れ鍋に綴じ蓋』という東の国の言葉を思い出しました。
1000字以内に収めるのは難しかったです。(◎_◎;)
他のジャンルにも挑戦したいです。