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転生

ほぼ処女作です。楽しんでいただけると幸いです。

「ゼェ、ハァ……ハァ……………」


傷だらけの男は眼前にいる首と胴のわかたれ、心臓部に剣を突き立てられた生気のない龍の姿を確認すると仰向けにドサリと音を立てて倒れる。


「ハ、ハハ、ハハハハハハハハハ。俺は……俺は勝ったぞ!世界最強に!!これで………!!」


男は狂ったように笑い、歓喜の声をあげる。だがそれもしょうがないと言えるだろう。彼が倒した龍は世界の頂点に座するもの、目指すことすら烏滸がましく、かの龍に傷をつけたもの、それどころか倒す存在など数千年の歴史を持つこの世界において存在しなかった。そしてどうしても殺さなければいけない存在。そんな怪物を男は屠ったのだ。歓喜に打ち震えても仕方がないだろう。


「だが俺もここまでか………」


男は目線を下に向け自身の体を確認する。右腕はなく、全身の至る所に致命傷といえる傷があり、流した血の量の多さからしても男が今も意識があり、生きているというのは奇跡といえるだろう。


『そうだな。お主のここまでだな。』


亡骸となった龍の上から光球があらわれ男の言葉に続く。突如として現れた光球に男は表情を変え、亡骸の方睨めつけながら叫ぶ。


「なっ!!お前は殺したはずだ!!」


『そうだな。我は貴様に殺された。』


「……………。騙したのか?」


『いや騙して訳では無い。だからこそ我は今こんな姿であろう。』


「………………………」


一度確認すると声がしているのは亡骸からではく光の球からだ。殺したはずの怪物の声が聞こえたことにより平静を失ったが確かにこの姿は奇妙だ。


『まず1度説明してやろう。我が貴様に言ったその武器であれば我を殺せるというのは本当だ。』


「ならっ!なぜ死んでいない!!」


『話を最後まで聞け。我は肉体的には死ぬが精神的には死ぬことは無い。まぁいわゆる不滅いうやつだ。と言っても元の姿に戻るには10年以上はかかるだろうな。』


「………………………………」


全身全霊をかけ、己の持てる全てを使い打倒したはずの龍は死ぬことがないと言われ男は呆然となる。


『そう落ち込むでない。我が生まれてから数百万、我を殺したものなどいなかった。我は今まで何度も戦いを挑まれた、この世界のイレギュラーといえる魔王にそれを殺した勇者、他にも様々な英雄達と戦った。だかなその誰もが我に多少の傷をつける程度だった。それをお主は弱き人の身でありながら我を殺しきったのだ。誇れ。お主は世界で初めて我を殺した。他の誰にも出来なかったことを成し遂げたのだ。』


「だが……!それでは意味が無い!!」


男は残った片腕を地面に叩きつける。これでは意味がなかった。男がこの怪物を、この龍を殺そうと決意したのはただ力試しではなかった。


『意味とな?それは一体……いや直接見た方が早いな。』


「なっ!?」


光球は男に近づきそのまま男の頭を通過し外へ出てくる。


『ふむ。そういう事か。なら安心しろ、我はお主が思っているようなことはしたことはないし、今後する予定もない。』


「それは………一体……」


突如近づき自身の頭を通過して行った光の球に呆気をとられなが問う。


『そのままの意味だ。我が人間の世界に干渉したのは数百年前が最後だ。貴様の国もその故郷も何かしたことも今後する予定もない。』


「なっ!?」


『それと貴様にかけられた術も解いてやろう。』


「術……?いやそれよりもおまえそれは一体……」


『はぁ……。我を殺せるほどの強者のくせにこの程度の術にかかり騙されるとは……嘆かわしい。』


これみよがしにため息を吐く光の球がさらに光りを増していく。それと同時に体から何かにあった違和感が消えていく。


「これは……?」


『これでもまだ我を殺さなければいけない怨敵、悪逆非道の暴龍だと思うか?』


「……いや」


『そういう事だ。お主は我を暴れ狂う邪龍と思い、次に狙われるのが故郷だと知りそれを止めるべく我を討伐しに来た。』


「ああ。」


『邪龍が聖域と呼ばれる場所にいるのもその邪竜がお主を故郷を狙っているという情報もそんな邪龍の存在を人に聞かされるまで聞いたことがないという状況も全てが異常。そうだろう?』


「…………」


『だが貴様はその全てを信じた。少しの疑いも持たずに。その理由が先程まで貴様にかけられていた術だ。』


男は瞳を閉じ、深呼吸をしゆっくりまぶたを空ける。


「私は騙されたのか?」


『ああ。で、どうしたい?』


「……?どうしたいとは?」


『この我を殺したんだ。願いの1つや2つぐらい叶えてやろう。報復したいというなら我がしてやっても構わん。自分でしたいなら今すぐその傷を治しやろう。それとも全く別の世界に転生させ一から始めさせることもも可能だ。』


「それは本当にできるのか?」


『我は出来ん事は言わん。で報復に行くか?』


「いや……………それはいい。」


『ほう?良いのか?』


「ああ。そういうのはもう疲れたんだ。」


『そのくせ我をわざわざ殺しにきたのか』


「それは………すまない。」


『ハハハッ!別に気にする必要はない。お主の記憶は見させてもらったからな。守りたかったのだたろう。そういう人間は嫌いでは無い。それにはじめて負けて我は中々どうして気分がいい。』


申し訳なさそうに謝罪する死にかけの男を横目に龍は快活に笑いながら答える。


「そうか………。なら勝ててよかったよ。」


自身の不甲斐のせいで攻撃し、その上身体にかけられた術まで解いてもらい申し訳なさで消えてしまいたくなるが龍自身が気にしていなそうな姿に胸を撫で下ろす。


『ああ。……それでどうする?』


「私の記憶を見たんだろう?だったらわかるだろ?私はこの世界に疲れたんだ。だからこそ別の世界に転生などと言ったんだろう。」


『そうか。なら別の世界に転生させてやろう。』


「頼む。」


『だが勿体ないな。』


龍は先程の男との戦闘を思い出す。今まで幾度と戦ってきたがそれでもやはりこの男は凄まじかった。ほとんど攻撃を最小限の動きで避けられ、避けられない攻撃は一刀に伏せら、そして流された。その上傷をつけたものすら5人といない我の体を切断させた。だからこそ思わずにいられない。あれほどまでに鍛えた肉体を捨ててしまうのかと。


「別に転生したら鍛えられない訳では無いだろう。転生した先でもう一度強くなればいいだけの話だ。」


『フハハッ。確かにそうだな。』


「それとありがとう。」


『ああ。ではな。』


男の体が少しづつ光の粒子となり空へと浮かんでんでいく。そして最後の一欠片がも彼方へと浮遊していき男の姿は無くなった。


『ハハハハ。久しぶりに楽しめたな。このままあやつが向こうで何するのか見たいものだな。いや…………。そうだなそうしよう!だがその前に我の名を語った愚か者にその罪贖って貰わねばならんな。』


そう言い光球もその場から姿を消して言った。

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