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上洛青春物語   作者: 幸京
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2001年春~2002年冬 大学2回生編

「そうそう、そこに石板がある」

5月下旬、僕のアパートで、ドラクエ7の石板の場所を吉村君に教えてもらう。

アパートから徒歩15分程にある古本屋では、同地区で買取品が新品中古に関わらず50点以上あれば、従業員が自宅まで無料で買取出張に来てくれるのだが、初めて買取出張を依頼した時に来てくれたのが吉村くんだった。その日、買取価格を確認してお金をもらい、店に戻る吉村君にペットボトルのお茶を良ければと手渡した。

「マジで?あざす」

と突然砕けた言葉使いになり、そのままフタを開け飲み始めた。

「自分、よく店に来てくれてんな。ありがとな」

「いえ、今日はわざわざありがとうございます」

「敬語使わんでええで、俺、26やけどホンマに」

吉村君は大学を6年通ったのち中退して、今の古本屋で働いていると教えてくれた。

それから買取出張を依頼すると常に吉村君が来てくれて、そのたびに10分程であったが2人でゲームをしたり、商品売買値や、従業員の人間関係を教えてくれた。

石板の場所を教えてくれた吉村君が麦茶を飲み干すと、僕から買い取った漫画や小説、CD、ゲームソフトを店の鞄にしまい立ち上がった。玄関で靴を履く背中に話しかける。

「ありがとう。石板どこやろって彷徨っていたから」

「他にも分かりづらい石板あるでな。7はムズイで」

「吉村君はFFだけじゃなくて、ドラクエも全部やってるんやな」

「せやな、ロープレは好きやけど、格ゲーやアクション、パズル系はホンマ苦手や」

そう言って、笑いながら店に戻って行った。

6月下旬、いつものように買取出張をお願いすると、その日は吉村君ではない男の従業員が来た。

この人は吉村君情報によるとバイトの女の子に手を出し、その子の彼氏が店に怒鳴り込んできたことがあったらしい。

その人から買取金額を提示され、お金を受け取る際に僕は何となく聞いてみた。

「今日は吉村さんじゃないんですね?」

「え?、あぁ、吉村なら辞めましたよ」

「あ、え、そうなんですか?」

「はぁ、何かありました?」

その人は訝し気な様子で僕に聞く。

「いや別に。いつも吉村さんが来てくれたので」

「あ、そうですか。それではまた宜しくお願いします」

と、お店のクーポン券とチラシを渡して帰っていった。

お茶は渡さなかったし、吉村君の連絡先は知らない。

中古のドラクエ7は結局クリアすることはなく、出張買取に出すと100円だった。



「地元に来ることがあったら、連絡してよ」

あかり先輩は居酒屋の前で皆にそう言うと、数人のサークル員達と一緒に駅に向かって帰って行った。

夏休み、サークルであかり先輩の送別会を行った。あかり先輩は3回生になると大学にまったく来なくなり、前期が終わると大学を辞めて実家に帰り、働くことにしたらしい。

何があったのか、詳しい事情は知らないし聞く気もなかった。

僕は結局、自分の想いを告げられなかった。

傷心旅行というわけでもないだろうが9月上旬、ふと鳥取に行こうと思いつくとその日に金券ショップで青春18切符を購入して出発、鳥取で一泊するとそのまま山口にも一泊、広島にも一泊、計4日間の気ままな一人旅だった。

鳥取では日本海を眺めながら砂丘で佇み、山口ではフグを生まれて初めて食べ、広島では厳島神社のライトアップに感動しながら、あかり先輩は元気かなと、もう逢うことはない人を想った。

その後の日々は、映画を見て本を読み酒に呑まれて年が明けた。親から成人式はどうするのか聞かれたが、帰省するのが面倒だったから出席せず、長い冬休みに突入してもバイトもせずにダラダラと過ごしていたところ、とんでもない事が起きた。大学の同回生からバレンタインの日に告白されたのだ。

20歳にして初めての彼女、何をするにもとにもかくにも浮かれ、何をするときもとにもかくにも緊張した。

成人式を欠席しながら大人になり、

こうして僕の2年目が終わるのだ。


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