第二話 新入生入部!
前回の箱根駅伝が終わった後、
監督の平林が退任した。
表向きは、体調不良のため
本人から退任の申し出があったと
されているが、
実際は、就任以降一度もシード権を
奪取できなかったことの
責任をとらせた形での解雇である。
平林が、
無名校であった城西拓翼大学を
本戦の常連校まで成長させた
立役者であることは、間違いない。
しかし、結果が出せないと判断されれば、
『即、クビ』になるのが、
大学駅伝で指導者をする者の宿命なのだ。
そして、後任の監督には、
コーチをしていた櫛部川が
就任することとなった。
第二話 新入生入部!
今年、ジョーダイには、
十人の新入部員がその門を叩いた。
これは、蒼太たちの代の倍の人数である。
皆、高校での実績は
他校のエース級には及ばないが、
総じて負けず嫌いであり、
光れば輝く原石のような選手ばかりだ。
まさに、櫛部川監督好みの選手と言えよう。
(高校では輝けなかったが、
絶対に大学では活躍してやる!)
新入生の目は闘争心で
ギラギラとした輝いていた。
引越しの荷物を持った新入生が
寮の食堂を横切ると、
あの人物の存在に気づく。
「おはようございます!!!」
体育会系特有の気合いに溢れた挨拶が、
駅伝部寮の食堂に響く。
挨拶の相手は、前回の箱根駅伝、
八区で気合いの走りを見せた蒼太だ。
襷を繋ぐことは出来なかったにせよ、
無名選手でありながら、
一年生で箱根路を走り、
多くの人々の心を震わせた蒼太は、
一年生にとって
ヒーローそのものである。
「もっと力抜きー。
俺もお前らに負けへんよう頑張るさけ、
これからよろしくたのむで!」
蒼太は一人っ子だ。
弟のような後輩たち、
いや新しい仲間できて嬉しかった。
「はいッ!!」
(でも、こいつらの体育会系のノリは、
しばらく抜けそうにないな。)
と蒼太は思った。
そして、こいつらには、
あんな思いはさせられない!
寮の食堂に飾られた額縁の中にある、
あの日のハチマキを見て、
あらためてそう決意した。