冒険者たちは魔石を駆り、魔物を狩る。~二人で頑張ってきたのに、ルールだからって勝手にパーティメンバー増やさないでよ! もう、何としてでもこいつを追放してやる!~
小鳥です。
気分転換に短編を書きました。
百合に挟まる男は赦せませんね......。
森林、洞窟、海......。すべての場所にはダンジョンと豊富な資源がある。だが、ダンジョンは資源となるモンスターが常に往来しており危険がいっぱいだ。そんな険しく恐ろしい世界を商人の代わりにめぐり、レアアイテムをギルドに卸す。それが私たち冒険者の役割だ。
今日も私と、相棒のロミィはダンジョンに潜りモンスターを狩る。
「出たよ、出た! レアモンスター! エクシィ、殺していい?」
ロミィは今日もはじけるような笑顔で、強烈な言葉を投げかける。私はそんな天真爛漫な彼女が愛おしい。私は、笑いながら首を振る。
「サラマンダーはしっぽだけでも十分にお金になるから殺さなくていいよ。驚かすだけでしてあげて」
はーいと彼女自身の持つ杖を掲げるとサラマンダーの手前に雷を落とした。彼女はギルドのメンバーの中でも天才魔導士といっても過言ではない。彼女の絶妙な魔法のテクニックにより、燃え盛る襟巻のついたサラマンダーは見事しっぽだけを落としてその場を立ち去った。
「エクシィ! 見て、見て! サラマンダーのしっぽ~」
浮かれたロミィは私にいまだぴちぴちとうごめく赤いしっぽを見せる。
私は微笑みなながら彼女の煌めく長い髪をしっとりと撫でる。
「ふふ、えらいえらい。じゃ、そのしっぽもらうね」
仔犬のようにふにゃっとした笑顔で頭を私の手によせるロミィ。
ロミィは私の手を堪能した後、自分の手で握りしめながらこちらに上目遣いで見つめる。
「どうする? もう戻る?」
「そうね、ロミィの魔力も限界でしょ」
私は彼女の腕につけられた魔石を見ると、魔石はパチパチと光を明滅させていた。ロミィの魔力が尽きかけている......。かくいう私の魔石もパチパチと点滅していた。このままでは自分たちの命も怪しい......。だが、彼女は少し私を安心させるようにいつものように朗らかに笑った。
「へへ......。ちょっと疲れちゃった」
彼女の言葉を聞いて私は、急いで彼女をおぶってモンスターを振り切りながらギルドへと戻った。
「おかえりなさいませ! エクシリア様」
「ただいま戻りました。よろしくお願いします」
「中々の量ですね、確かにアイテム頂戴しました! 魔力も減っているころでしょうし、そこの休憩場でお休みになっていてください」
私たちは彼女の言う通り、大きな水晶が真ん中にある休憩場のソファに座った。ここに入ると、水晶から魔力が放出されているのか、フワフワとした気分になる。リラックスできる冒険者の癒しスポットだ。ロミィは人の眼も気にせずに私の膝を枕にしてうたた寝をはじめようとする。
「こらこら......。ふふふ」
彼女の綺麗な髪をすいていると、私の横にどんという音と共に少し背の高い男が座った。
男の方を見ると、女性なら少し興味の惹かれるような目鼻立ちをしていた。だが、私は興味がない。ぷいとそっぽを向くと男は少し首を傾げた。
気にせずロミィの世話をしていると、男がこちらの顔を見るふりをして、膝の方のロミィの緩やかな谷間に気を取られながら話しかけてきた。
「ねぇ、君たち二人だけでパーティ組んでるの?」
「ええ、まあ」
「君たちは恵まれている。俺様に出会えたという運命に。どうだ、俺様と組まないか?」
「いえ、人手は足りていますので」
私たちを見つめ続ける男に見向きもせずに突っぱねるも、男は強情にも立ち上がり、ロミィの足元の方へと座り目を見て話そうとする。
「まぁ、そういうなって。俺は回復用の魔石を使用できる回復士だ。君たち魔導士とは相性がいいと思うけどな。特に君の膝で寝てる子。彼女は上物だ。だが、魔力消費が激しいだろ?」
確かに、ロミィは人一倍魔法が使えるし、強大な力を引き出せる。だけどその分、すぐに疲れるし魔力切れしやすい。それでも、この男をパーティに引き入れたくはない......。
面倒事を起こしたくないと頭を悩ませていると受付から
「お待ちのエクシリア様~! 換金ができましたので受付にお越しください」
「やっとね。ほら、行くわよロミィ」
私は眠りこけたロミィをゆすり、柔らかな腕を抱えて引き連れる。
「ちょっとお嬢ちゃんたち!」
引き留める男。だが、私は見向きもせずに離れる。ああいうのはきっとロミィの身体目当てだ。
ずっと、彼女の胸元ばかり見ていたし......。
「別に回復士なんていらないです。第一、回復士なんて戦闘の役になんて立たないでしょう?」
鼻で笑い、私たちは受付へと向かう。
受付から金銭をもらった。重さはいつもより少し多めといったこところか? サラマンダーのしっぽがうまく高額で売り払われたのだろう。私は浮かれながら外へ出ようとした。だが、そこで受付嬢に止められる。
「ああ、ちょっと待って下さい。大変申し訳ないのですが、二人組でのパーティは認可が下りなくなりまして......」
「え、それって」
「はい、最低でも三人組からのパーティ編成でないとダンジョンに行くことができません。すぐに見つけるのも難しいでしょうし、私どもからの推薦で一人お呼びしております」
「それって、まさか」
ギルドの受付嬢の言葉を聞いて嫌な予感がよぎった。すると、先ほど私たちに絡んできた男が立ち上がり、私にそのにやけ顔を晒してきた。
「だから言っただろう? 運命だって」
「こちら、ギルドレベル45のシエロ様です。シエロ様はソロでも活躍されていましたが、今回のギルドパーティ編成法に則り新たにエクシリア様のパーティに編入いたします」
「よろしくな」
私やロミィの了解もなしに淡々と決まっていく。ギルドのルールとなれば仕方がないが、男が私たちのパーティに入るなんて気持ちが悪い......。どうにかして変更はできないものか。
「あの、パーティメンバーが最低3人というのは仕方がないとして、メンバーをこちらから提案するのはできないのですか?」
そういうと、受付嬢は今までのような明るさから一転して、規則読み上げモードに入っていったように感じた。
「可能です。ですが、その場合一度パーティメンバーに一人追加した後、追放申請をしなくてはなりませんが当てはありますか?」
「いえ、今のところは......」
受付嬢は私の言葉を聞いてパっと明るくなり、私たちにエールを送る。
「大丈夫です! エクシリア様ならトリオでもうまくやれます。 多くのギルドがありますが、一番レアアイテム収集率と帰還率が高いんですから!」
「そういうことじゃないと思うけど......。また、行ってきます」
「いってらしゃいませ~」
彼女の手を振る手をよそに、私はギルドを出ると早速この新たに加わったメンバーをどうにかして追放する方法を考えていた。自分の腕に装着されていた魔石を見つめる。魔石には魔力の管理と、自分やメンバーのステータスをチェックできる機能が搭載されている。 私はなにもない草原で手を広げた。
「ステータスオープン」
そういうと、魔石は外の景色を透過して映像を映し出した。そこには、いつも通りの私の体力・魔力、そしてギルドレベルが見えた。さらにその下にはギルドのルールを見ることができる欄がある。
・NAME:エクシリア
・HP:50/50
・MP:32/32
・G.Lv:40
*ルール(ヘルプ)
「ルールオープン」
ギルドのルールには、新規の欄に先ほど受付嬢から聞いた『パーティ編成はトリオからでないと、ダンジョンへの進行ができない』という文言の他に、トリオからでないとギルドからの援助や宿屋の割引のような福祉提供が受けられないと書かれていた。私は、そっとステータスを閉じてため息を吐いた。
「どうしたの、エクシィ」
ロミィは、私の肩に両手と顎をのせて頭を左右に振る。
私は、彼女の頭を撫でた後、心配させまいと精一杯の笑顔を見せる。
「ううん、なんでもないの。さて、またひと稼ぎしますか」
「仲がいいねえ。妬いちゃうね、その距離感。俺様も混ぜてくれよ」
こいつだけは、こいつだけには笑顔は見せたくない。だが、優しくて明るいロミィは天真爛漫に彼の手を掴み挨拶をする。
「私、ロミィ! これから、よろしくお願いしますね。シエロさん!」
「当たり前だろ、ロミィちゃん。俺様は回復士でも魔法は一通りマスターしてるし、多くのダンジョンを攻略してきた。だから、頼ってくれていいんだぜ? 仔猫ちゃん」
「仔猫ちゃんって、キザな人ね。私、そういう自分に酔ってる人嫌いよ」
そういうと、男の目つきは変わり、私との距離を近づける。思っていたよりも背丈が高く、その圧にのけぞってしまう。彼は私の顎をクイッと手で自分の顔に持ってきた。
「嫌い嫌いも好きのうち。みんな最初はそういうさ。だけど、いつの間にか俺様のトリコになっちまう。俺様はそういうホシの元に生まれたんだ。いつか、君も俺様の魅力がわかるはずさ」
と言って、彼は顔を私に近づける。その顔はキスをしようせまる顔だった。だけど、私は耐えられず、彼を平手打ちした。我慢がならなかった。こいつは自分の立場というのを理解していない。ただの数合わせの駒に過ぎないってことを......。
「やめて、そういうのマジで無理だから。次、ロミィに同じことしたら殺すから」
「怖いねぇ......。でも、おもしれー女。メガネでイモ臭いが、素材は悪くない。俺がスイートポテトにしてやるよ」
「冗談は顔だけにして」
こいつは口を開くだけで不快になる。ロミィに近づくだけで手が震えるし、君が悪い。
この、自己満男! 絶対にこいつをこのパーティから追放してやる!!
‐‐‐‐‐--------------------------------------
シエロが加わって数か月、パーティとして申し分ない報酬をもらえるようになった。トリオの力というのは大きいようだ。今日は、その報酬で大きな宿屋に泊まることにした。
「明日、ボスダンジョンに入る。そのために英気を養うとしようぜ、お嬢ちゃん方! だが、すまん! 2部屋しか取れなかった! なので、俺様とロミィちゃん。そしてエクシィに分かれる! じゃあ!」
「待ちなさいよ、変態。なんで男女じゃなくてあんたとロミィが相部屋なのよ」
「順番だろ。次はお前を抱いてやるって......」
こいつはすぐに調子に乗って私を触ろうとする。私の何がいいかわからないが、いやらしい手つきをはねのけて私は彼に怒鳴りつける。
「マジで無理! あんたそれしか考えてないわけ?」
「エクシィ、そんなに言わないで上げてよ。ほら、もう行こ。ごめんなさい、やっぱり私エクシィとじゃないと寝れないから......」
ロミィは私の手を自分の手に絡ませて相部屋の方のドアノブに手をかける。
それを見たシエロは、ため息をついてこちらをギラギラと見つめる。
「女とは寝たことあんのかよ......。なるほど、ますます欲しくなってきたぜ」
うすら寒くなった私とは相まって、ロミィは顔も見せずに私を部屋へと連れ込んでいく。
「もっと仲良くできないの、エクシィ」
「ごめん。どうしても、あの人は苦手で」
「仲良しできないと、私嫌だからね。シエロさんだって悪い人じゃないよ。実戦経験は向こうの方が上だから」
「でも、嫌なのはイヤ!」
そういうと、ロミィは私の口に舌を絡ませてきた。いつもそうだ。私が嫌々と口にすると彼女はこうやって私の口をふさぐ。ロミィはそのまま口を放す。私が寂しそうに舌を出していると
「もう、困った人......。でも、エクシィがいるから私も生きていられるんだよ? シエロさんも、彼がいるから、私たちだって難易度の高いダンジョンを攻略できるんだよ」
彼女は私の正面にたって、両手を掴んで私を振り回す。そして、ベッドへと押し倒していく。
日も暮れて、ろうそくだけがゆらゆらと私たちの肌を魅せる。ロミィがそっとろうそくを消して私たちは長く寒い夜を温めあった。
翌日、私たちはシエロの言う通り、ボスダンジョンへと向かう。 正面から異質だったが、入るといつも通りの自然的なダンジョンとは程遠く、黄色いレンガ造りの壁がくねくねと別れては、出会いを繰り返す迷宮といった感じだ。
「なんだか、不気味......」
振るえるロミィの肩をさすりながらも、私の左手も震えていた。
「そうね。用心してかかりましょ」
私たちが警戒して進むも、シエロは何も考えずにズカズカと入っていく。どんなダンジョンでも朝飯前かと言わんばかりでモンスターが現れても笑いながら吹っ飛ばす。この人に警戒心や恐怖心というものはないの?
「そんな怖がってちゃ、お宝は手に入らないぜ。俺様が手本を見せてやる」
スライムやゴブリンのような弱いモンスターが群がるも、シエロは無視して払いのけていく。
そしてそいつらは追跡を諦めて後方にいる私たちを見つけて襲撃してくる。
「フレイムバースト!」
「サンダー・スラッシュ!」
光と共に私の剣筋が拡散していきゴブリンが死亡していく。そして、ロミィの手から発した炎はスライムを焼き尽くす。
「雑魚はロストで、中級からは慎重にね」
「ロストするとレアアイテム取れなかったりするもんね。何回も言わなくても分かってるよ」
にしても、あのシエロというのは連携という言葉を知らないのだろうか。ワンマンプレイが目立つし、結局おいしいところはあいつが持っていく。地道に私たちが相手のHPを削っているというのに......。
「ロミィちゃん、雑魚は全部エクシィに任せればいいのに優しいね」
「あんた、後方のこともちょっと考えなさいよ」
「でも、切り抜けてるんだからいいだろ。お前がヘタれば所詮はそれだけの女ってことだろ? 俺様は女が好きだ。でも、使えない・振り向かない・可愛くないやつは俺様に必要ない。俺様をがっかりさせたくなければがんばれよ。ロミィちゃんは大丈夫だけどな」
こんなやつのどこがいいっていうの!? 誰があんたなんかについていくもんですか! ボス戦で恥をかかせてやる! そう思っていると、シエロが扉の前の丸いくぼみに魔石を埋め込んでボスへと通ずる扉を開けた。
「さあて、本番と行きますか!」
相手に恥をかかせつつ、アイテムを手に入れる。その方法は一つ、私が先に攻撃すること。
あいつは先に攻撃する癖がある。その癖を利用して、あいつを踏み台にしてしまえばいい。
頭の中でシュミレーションをしていると、魔法陣が現れてそこから巨大な骸骨のボーンアンデッドキングが現れた。
「よっしゃ、先手必勝!」
彼は、前進して手に持っていた杖を前に突き出す。クソ長い詠唱をしている間に私が駆け寄り、シュミレート通りに彼の背中を蹴り飛ばす。
「おらぁあ! ブースト・スラッシュ!」
「っぐえ! あの女、オレを踏み台にしやがって!」
だが、私の剣はボーンアンデッドキングに届かずに跳ね返されてしまった。逆にそのボスの口から吐き出された業火に焼かれてしまった。私が地面に落ちていくのを感じた。それに、熱い......。腕に火傷を負ってしまい、その場で倒れてしまう。 魔力なしでこの火力って、強すぎでしょ。
「ロミィちゃん、カバー!」
「はい! マジックシールド!」
ボーンアンデッドは私の攻撃に怒り、シールドに火球をなんども撃ってくる。
「無理しちゃって......。オレがあいつに眠りのデバフをかけてからが勝負だろうが! てめえもロストしたいのか! お荷物は回復薬飲んで寝てろ! オレがいく。 ロミィちゃんはこいつがある程度回復したら援護して」
「わかりました! エクシィ、元気出して」
ロミィから手渡された回復薬を彼女に支えてもらいながら飲み干す。うえぇ、なんだこの味は......。
「くっ......最悪。くそまずいし」
「大丈夫? 無理しなくていいよ」
「大丈夫......。HPも回復したし。戦える。ロミィはボスアイテムを」
「うん。ほんと、無理しないでね」
私のおでこに口づけした後、ロミィはシエロとボスとの戦いに加わる。相手ボスのステータスを確認するとHPはすでにごくわずか。ここでアイテムをドロップしないと、完全ロストになってしまう。
「あいつの動きを止めないと! ロミィ、楔を」
ロミィはうなずいて彼女のポケットから楔を5つ取り出した。ロミィはその楔をボスの周りに正確に打ち付けていく。私は剣をしまい、両手を地面に着く。
何かを察知したシエロは私と同じ姿勢を取った。まさか、こいつ鎖の魔法を?
「「チェーン・バインド!」」
声が重なり、魔法も二重になって鎖がらせんを描いて飛び出ていく。その鎖の締め付けが強いせいで、ボーン・アンデッドキングが落としたアイテムは少ないまま消えてしまった。
「ち、骨3本か。あーあ、誰かが俺様に譲ればキングの王冠とか手に入っただろうに」
「......」
押し黙って地面を見ていると、ロミィの肩に触れてシエロは回復した後私の方にも同じようにしてきた。
「最後はまあ、いい働きだった。だが、次にオレの指示なく動いたらオレが追放する。いいな」
「そんなこと、できるわけ......。だってこのパーティのリーダーは」
「いつまでもリーダー面できると思うなよ? これを見ろ」
そういうと、彼は肩に手を回して首を絞めるギリギリで魔石からステータスを映し出す。
「そんな、そんなこと」
「これが、現実だ。さっきオレが書き換えてやった。今日からこのパーティのリーダーは俺様が務めるぜ......。いい加減いうこと聞きな、貧乳女」
彼の方をにらみつけると、シエロは手を放してボスエリアの奥へと向かう。そこには、私たちの持つ魔石より大きなものが柱の上に携えてあった。
「テレポート魔石じゃん、ラッキー! これで入り口まで帰るぞ」
私はそれが苦手だ。なぜかどのダンジョンにも備えてあるテレポート魔石。簡単に移動できる分、使うといつも少し気分が悪くなる。
「そんな誰が作ったかわからないもの、使いたくないわ」
「便利だからいいだろ。いくぞ」
有無を言わさずにシエロはテレポート魔石に自分の魔石をかざす。ロミィは、私に手を差し伸べる。震える手を彼女は優しく握り、魔石に触れる。
一瞬にしてダンジョンの入り口に戻ってきた。だが、気分の悪さは意外と平気だった。あれ、体が慣れたのかな? それとも、改善されたのか......。どうにせよ、私たちは帰りの労力を気にせずに戻ることに成功した。 ギルドのある町の方へ帰る道すじまで戻ると、なぜかいるはずのないモンスターが現れた。
「ああ? 珍しい色のオークだな。皮でも剥いでやりゃあ、値打ちになるか?」
彼はまた杖を出して、軽く痛めつけていた。だが、オークは抵抗していきなり手から炎を出した。
そんな馬鹿な。オークを含むほぼすべてのモンスターは魔法を持たないはず......。
「こいつ、魔法使いやがった! ハハハ、いいねえ。楽しくなってきたじゃねえか」
「待って。もっとそのオークを分析してから!」
しかし、シエロは当たり前のように私の言葉を無視してくる。私のことなど存在しないように。
力づくでも止めたいが、彼の力はさっき嫌というほど思い知らされてる。どう頑張っても今、彼に牙をむいても目の前のオークのように弄ばれ、身ぐるみをはがされるだろう。ひょっとしたら、ロストだってありえる......。
「よっしゃ! 色違いオークの皮と肝ゲットォ!! じゃあ、帰るか」
彼がオークの切り裂いた腹の中から肝を素手で取り出した瞬間は自分のことのようにゾッとしたと同時に自分出なかったという安堵が入り混じって気分が悪くなった。
口元を抑えながらギルドに帰り、精算するとシエロの読み通り色違いオークからドロップしたアイテムは高値で売れた。私たちはそのお金で珍しい食事処へと向かった。
「このパーティもいい感じになってきたな。俺様としてはもっと女を増やしてハーレムパーティにしてぇなぁ。そうすりゃ、このすっぱい葡萄酒も甘くなるだろうて。なぁ、ロミィちゃん」
隣にいるロミィに手を伸ばし、肩を組むシエロ。だが、それを邪険にするわけでもなくロミィは歳暮のように微笑んだ。
「一杯目なのにもう赤くなってますよ。ふふふ」
私は水をグイッと飲み干し、グラスを乱雑に置いた。
「酔っ払いって、まじ不快......」
「エクシィもお酒のんだら、こんな感じでしょ? かわいいからいいじゃん」
「え、そうなの? 最悪......」
さらにシエロの手は下へと下がっていき、ロミィのお尻を撫でまわしていた。私がいつも癒されているお尻を取るな、このエロオヤジが......。
「いいじゃねえか! 酒が飲めるなんて贅沢、オークを狩れてなきゃできてねえ。俺様の前に現れたオーク様に乾杯!! ハハハハ!」
「でも、あのオーク何だったんだろ......」
「レアモンスター? でも色違いとか魔力持ちとか聞かないよ?」
「考えても意味ねえって。どうせ同じモンスターで、俺たちの養分なのさ」
「でも、いつの間にか同じ場所で復活してる」
全滅させてから奥へ進んだとしても、来た道を戻ると同じモンスターが行きしなと同じような配置で出現していた。はじめはおかしいと思っていたが、稼ぎになると思い始めてからは考えるのをやめていた。
「なんなの......。一体」
ロミィから分けてもらった発泡酒をちょろっと飲んだ時の苦みが残ったような気持になりながら、食事処を後にした。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
シエロがパーティメンバーとなり、さらにはリーダーになってから数日も経たずに彼の権力はさらに強くなった。一向に私とロミィは彼に反抗できずに、彼の傍若無人な戦い方と態度に振り回されていた。
「ハハハ! そらそらがんばれ、魔剣士」
「人使い荒すぎ!」
「はぁはぁ......」
ロミィも私も魔石が点滅し始めたせいで洞窟の奥が見えたり消えたりしている。洞窟の奥のバットが、その光に怯えてさらに奥へと消えていく。シエロはそんなことも構わずに真っ先にロミィの方に向かっていった。分かりやすい男で逆に気持ちがいいとも思える。
「あ......ありがとう、ございます。エクシィにも」
「あいつは自分でどうにかなるだろ? それより、ロミィちゃん俺様も癒してくれよ」
シエロは大胆にも彼女の腰に抱きつき、背中に顔を摺り寄せる。さすがの聖母のようなロミィも嫌悪感をあらわにした。
「い、いやですよ! 離して下さい! もう、いい加減にしてください」
「ああ? なに、ロミィちゃんもそんな態度取っちゃうのぉ? 俺様、寂しくて死んじゃうぅ」
抵抗して返り討ちに会うこととかどうでもいい。今こそ、こいつに歯向かわなかったら一生後悔する!
「あんたいい加減にしなさいよ!!」
私は剣を取りだしてシエロの首筋にあてがい、ロミィから離れさせる。
私は初めからこいつが嫌いだった。ロミィは私に怯えながらも背中に回ってくる。
「エクシィ、怖いよ」
「ごめん。でももう耐えられない。私がどう扱われたって構わない。でも、ロミィが傷つくのは絶対に許せない!!」
シエロの首筋からスーっと血が垂れていく。それと共に私も血の気が引いてい来る。モンスターと違って相手は人だ。
「やれるもんならやってみろよ! まあ、オレより強え女なんていねえけどな」
「だったらここで証明してあげるわ!」
剣を振り上げて、彼の脳天から剣を振り下ろそうとすると何者かによって剣が止められた。
「邪魔しないで」
振り向くと、そこには優男がおっかなびっくりになりながら私の剣を必死で抑えていた。そのせいで彼の手は血まみれになっていた。
「な、なにがあったかはわかりませんけど......こ、こんな場所でに、人間同士で争うのは危険すぎですよ!」
同じ洞窟で探索をしていた別のギルドパーティがたまたま見かけて私たちの争いを止めに入ったようだ。私は剣を収めて彼に回復薬を手渡した。
「......ごめんなさい。無関係なあなたを傷つけるつもりじゃ......」
「いいんですよ。平和になったことが何よりです! あ、僕はミカエルっていいます。こっちはパーティメンバーのアリアとウォグロー。これも何かの縁です、協力して洞窟を抜けませんか? もちろん分け前は半々で」
「半々だぁ? おまえ、優男の割にはがめついな。そういうとこ、気に入ったぜ」
「へへ......生き残るためですから」
シエロは、自分より背の低い彼に手を差し伸べると、ミカエルも彼の手を取り、私たちは、6人で行動することになった。6人それぞれで明かりを持って、洞窟のダンジョンの奥へ進んでいくも、モンスターは現れなかった。変だ、さっき現れたバットもいなくなってる。
「いませんね。モンスター」
ミカエルの声が洞窟にこだまする。声を出してもモンスターはこちらに向かう足音さえ聞かせてくれない。シエロは、あくびをしつつ後ろを指さす。
「白けてんなぁ......。戻るか?」
「もしかしたらボスがめちゃくちゃ強いのかも......」
ミカエルが警戒するも、ボスのうなり声も聞こえない。奥へ進んでいくと、テレポート魔石のようなものと魔石の元となる魔鉱が光り輝いていた。ここは、採掘場ってこと?
「こりゃあ、ボスよりいいもん見つけたなあ! こりゃ高く売れるぜ!」
なんだか、このあたりにいると気分が悪い。それにも関わらず、シエロは魔鉱に触れようとする。だが、それをミカエルが阻止する。
「だめだ、ギルドレベル50以下が簡単に触れていいものじゃない。 ここは、レベル55の僕たちが採掘して加工するよ。僕たちは、錬金術士なんだ」
「魔石とか武器を作れる便利屋か! 野郎集団にしては、使えるスキル持ってるじゃねえか」
ミカエルたちは自分たちの持ち物からピッケルのような採掘道具を取り出して、魔鉱を掘り出していく。でも、魔石にしては色が違いすぎないか? 私たちの魔石はこんなに透き通っているのに、原石はあんなに濁ったような色なの?
「よし! 完成だ! ......あれ、この魔石透明にならないな。レアなものなのかな」
ミカエルの言葉に嫌な予感がした。その瞬間、魔石にひびが入る。ピキピキという音と共に魔力のようなものがミカエルたちを包み込んでいく。
「なんか怖いよ......」
「ロミィ、下がってて」
私はロミィと共に下がりつつ、私は自分の剣を取りだす。シエロも当然自分の魔法の杖を取り出して警戒する。ミカエルは魔力の霧に包まれて苦しそうにもがいている......。
「こ、これは!? ど、どういウ......。ウゥ、ウガガガ、ウガガアアアアアアアアア!」
ミカエルたちは、急激に体を変異させてオークのような見た目になっていた。そして彼らは、私たちに襲い掛かろうとする。ロミィに変異オークが襲い掛かろうとした瞬間、私は思い切ってその腕を切り落とす。
「ウガアアア! い、イタい...。。。イタイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
そう言っているのも束の間、彼の切れた腕の切り口から新たに腕が生えてくる。こいつ、死なない?
そして、オークたちは手を私たちに向けると雷の魔法を繰り出した。見覚えがある。これは、前に見た魔法が使えるオークの時!
「こいつら、魔石の力でモンスターになりやがった! 面白れぇ! 倒したらどんなアイテム出すんだァ!?」
「ちょっと、シエロ! くぅっ! ロミィ、踏ん張れる?」
「う、うん。大丈夫。でも、あの人たち倒していいの?」
「今の私たちにできることはなにもない! まずは自己防衛を優先よ」
黙って頷くロミィを見守り、彼女の手を握った後私は剣に水の魔法を纏わせてオークの一人を凍らせて叩き割る。オークの眼が手に入るも、気持ちが悪すぎて地面に捨てた後、もう一人のオークに近づき炎を纏った剣で焼き切る。二人をロストさせた後、残りはオーク一匹となった。
「くそが、こいつ強ええ!」
オークに力負けするシエロを見るが、特に気にしなかった。このままこいつがやられればいいとも思った。でも、優しいロミィが彼の元へと駆けつける。
「シエロさん!」
「ロミィちゃん! 女に助けられるなんて焼きが回ったか......」
シエロは態勢を立て直した後、オークに水の魔法で渦を作り、天上に巻き上げたがなおもオークは立ち上がる。そして今度は私の方へと突進してくる。私は剣で迎え撃つ。
「折れっ! しm」
その瞬間、横から影が入っていく。ロミィ? 助けてくれたの?
「おい、立てるか。貧乳女」
そこには腕から血を流し、魔石もひび割れてしまったシエロが立っていた。
「シエロ、どうして......」
「女が、俺様の眼の前で死ぬってのが寝覚めが悪いんでな。つい体が動いちまう。立てよ、お前の力貸せよ」
私は、シエロの手をはねのけ自分の力で立ち上がる。そんなことでは私はなびかない。でも、礼だけは行っておくわ。ありがとう。
「貸して、くださいでしょ。私も剣が折れてしまった。しょうがないから帰るまで手を貸してあげる」
「エクシィ! 私たち3人なら倒せるよ! やるだけやろう!」
私たち3人はオークに向かって呪文を唱えた後、手を前に広げる。
『ミラクル・ストーム!!!』
風と雷と、水の魔法の組み合わせによる最上級魔法を3人で組み合わせることで消費を減らしつつ最大火力でオークに撃ち放つ。オークの方へと竜巻と雷が向かっていく。雷の電撃と風の風圧、そして、オークの周りにくっついていった雨雲から放たれていく雹が、オークのHPを永遠に削っていく。
「ここで永遠に眠りな。錬金術師さんよ」
オークはぐったりと倒れた後、人間に戻り白くなった。死んだんだ......。
「私たちのせいで......」
「ロミィちゃん、俺たちのせいじゃねえ。魔石を舐めたこいつらが悪い。そして、人間をモンスターに帰る魔石も悪い。俺様たちは悪くねえよ」
そういうと、彼は死人の持っていた魔石を取り出してポケットに入れた。
「まぁ、いただくもんはいただくけどよ」
「そんなもの、捨てなさいよ」
「俺様が使うわけじゃねえよ。モンスターになろうが需要は一定数あるんだ。金にはなる」
こいつのこの金にがめついところがやっぱり嫌いだ。魔石に呪われて死ねばいいのに......。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「ロミィ......」
「私も、怖いんだよ? いつか自分がミカエルさんみたいにモンスターになるんじゃないかって......」
ベッドの上で自分たちの人肌を感じあい、ほっとする。ミカエルたちがモンスターになってしまったのを見て、私たちは魔石を使うことに不安と恐怖を覚えた。でも、これがないと生きることは難しい。
「俺様がいる前で、よくいちゃいちゃできるな」
椅子に座り、落ち着いた表情で語るシエロは、配慮の無さも異常だがいつもの能天気さがなくて異様に感じる。
「あんたが勝手に入ってきたんでしょ? それで、どうしたの」
「どうしたもこうしたもねえよ! これ見ろ」
彼は自分の魔石を見せた。それは以前の戦いのときに傷ついたままのモノだった。
「ギルドに取り換えてもらいに行ったんじゃなかったの?」
「取り換え不可だとよ。魔石不足が酷いらしい。今回渡した魔石も粗悪品で売れんかった。クソが......。骨折り損じゃねえか」
「これからどうするの?」
「知るか......。このまま行くしかないだろ......。明日、魔鉱ダンジョンに行くぞ」
「あそこ、気味悪いよ」
ロミィが私の背中にくっついて離れない。それでも彼は焦っているのか、ロミィにも当たり散らす。
「しょうがねえだろ! どこも冒険者に魔石集めを要求してんだよ!!」
「こ、怖いです......シエロさん」
「悪い、ロミィちゃん。じゃあ、明日に向けてゆっくり休めよ」
シエロは、くたびれた表情で私たちの部屋へ出ていった。ちょっと、可哀想かも。でも、こいつに同情したら負けだ。私は、私たちの邪魔になるあいつを追い出したい。それが私が今、旅する理由。ミカエルのようにどこかで誰かと出会えるかもしれない。そう思いながら私はロミィに抱かれながら夜を見た。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
次に目を開けた時は、シエロにドアを何度もノックされていた。私たちは着替えた後に言われた通り魔鉱のダンジョンへと潜る。ここは前に行った場所よりも、人工的に整備されていたため、明かりも多少ある。
「よし行くぞ。まずは第1層の魔鉱を掘り出す」
いつもより地味目な作業に驚きつつも、私はピッケルで魔鉱を採掘していく。そして、だんだんと下へ下へと降りていく。下に行けば行くほど魔力が空間を覆いつくし、重苦しい気分になる。
「もう上に上がったほうがいいんじゃないの?」
「だめだ。もっと、もっと下に。下に行って魔鉱を掘るんだ。それが俺たちの仕事だ」
だが、下へ行こうとするも『通行禁止』の標識があり、行けなくなっていた。
「ほら、ここ人が行ける場所じゃないって! 帰るわよ」
「俺は、もっと力が欲しい。俺様が強くなるためには魔石が欲しい! いや、こいつがオレを欲しがっているんだ! ......そうか、こいつは俺だったのか......」
「シエロ? 何言ってるの?」
背中を向けてぶつぶつと、意味不明な言葉を言っているシエロを振り向かせると、その瞳や顔はもうモンスターのような風貌をしていた。
「あんた、どうしたの」
「チカラが、ほしいィ! 魔石がないならァ、魔鉱を取り込めばいい話だったんだ! だから、魔石は私なんだ! 私が魔石だ! ウガアアアアアア!」
うなり声と共に魔力の霧がシエロを覆いつくす。洞窟のダンジョンを壊していきながら図体が大きくなっていく。全て壊れる前にロミィと外へ出る。他の冒険者たちも異変に気付いて、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。
「でかい......。さしずめ、オークキングっていうところかしら......」
「シエロさん! ああ、ああ! エクシィ......」
「大丈夫、ロミィ。あれはシエロじゃない。ただの、化け物よ!!」
彼女を諭すと同時に、私は問答無用に彼に炎の魔法を斬撃と共に飛ばす。
シエロは魔石に呪われた。いや、私が呪ったのかもしれないが......。そんなことどうだっていい。
「これで、あんたを追い出せる。魔石に感謝しないとね」
ロミィは少し涙を浮かべながらオークキングの足元を凍らせる。だが、そんなことも気にせずにやつは、その氷を足ごと引きちぎって振り払う。引きちぎった跡からすぐさま足が生えて歩くのを止めない。
「マセキィ......。マセキィイイイイイイイ!!! もっと、チカラヲオオオオオオ!」
「どれだけやっても死なない......。気持ち悪いわね。いいわ、すぐに楽にさせてあげる」
私は雷の魔法を剣に纏わせて、斬撃を分散する。斬撃はオークキングを細切れにしていく。
ロミィはそれに合わせて重力を操る魔法で細切れになったオークキングを寄せ集めていく。
「うが、ぐがががが!!!」
「こんな状態でも、まだ生きてるの? もう潰れなさい」
浮いていたパーツは少しずつ集まり続けて、顔のパーツだけが出来上がっていく。やがて彼は口を開きだしていく。
「魔石はぁ、死なない! 魔石はずっと、人間たちに力を与えてやったぁ! 命を助け続けたぁ! それなのに、人間はぁ!! 魔石に歯向かう気かぁ!」
「恩着せがましいんだよ。さっさと死ね」
「あなたを、永遠に世界から追放します!! ごめんなさい!」
「うわあああああああああああああああああ!」
引き寄せられたパーツは、私たちの作った重力の黒い渦に巻き込まれ散り散りになり、伸び縮みを繰り返して黒い物体の中へと消えていく。そして、私たちがその魔法を消すと、オークキングの影形もなくなっていた。
「おわった......」
「私、人殺したの?」
「ロミィ、私たちはオークキングを倒したのよ。人なんか殺してない。いい?」
ロミィは静かに頷いた。騒ぎに気付いた他の冒険者たちが野次馬のように群がるのを横目に、私たちはその場を離れていく。どこか、遠くへ行こう。ここじゃない、他の国で......。魔法を使わなくていい国へ......。私は、魔石を腕から取り外した。ロミィが着けていた方も取り外し、歩き続ける。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「静かだね」
「久しぶりに二人だけの夜......。嬉しいよ、ロミィ」
数か月歩いた先にあった隣国で私たちは家を一から作った。もちろん、魔法はなしで。
大変だったけど、とてもやりがいのある体験だった。
おかげで誰の邪魔もされず二人の時間をこうやって楽しめる。
「ねえ」
「なぁに、エクシィ」
「愛してる」
「ふふ、何急に」
「なんとなく」
「......私も、愛してる」
ロミィの少し冷たく、柔らかな体に抱きつく。ロミィもかたくなる私をぎゅっと抱きしめる。
今日も、窓の外から大きく丸いツキが私たちを見守る。ただ、それだけで、幸せ......。
end.
他の作品もよろしくお願いします。