90.禁忌魔法の成果
※以前執筆していた作品の105話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「それで、全員でお腹を空かせながら待ってたのね・・・。呼んでくれればよかったのに・・・。」
皮だけ剥かれた野菜に、とりあえず用意してみた肉と、なんとなく沸騰させてみた鍋を囲って、どうしたものかと悩んでいたところへルルが地下から戻ってきた。どうやら地下研究所の作成が終わったようで、水を汲みにいこうと出てきたらしい。
「水汲みは私が行ってきます。姉様は食事を・・・」
「いい機会だし、少しは料理を覚えてみたらどうかしら?」
風が爆ぜる音と共に突風のように姿を消した二人に呆れつつ、ルルが野菜を手に取り刻んでいく。シチューを作るというので、手持ちのパンを取り出して火で軽く炙っておく。
「お皿は纏めて置いてもらえれば後で片付けるわ。焦がさないように時々掬うようにかき混ぜてね。あと、リリムが戻ってきたら水だけ下に持ってきてもらうようにしてくれるかしら。」
いったいどこまで水を汲みにいっているのか、シチューを作っている間いつまでたっても二人が戻ってくる気配がなかったためグラにだけ先にシチューを渡しておく。
「魔法で出した水じゃダメなのか?」
「魔力の含有量が自然水と段違いなのよ。今の私に必要なのは魔力が余り含まれていない水が必要だから、魔法で出した水は適していないわ。」
とにかく一刻も早くこの植物の調査を進めなければならない。といっても、リリムが水を持ってきてくれるまでは記憶を漁るくらいしか出来ないけど・・・。
「さて、この魔法を使うのも久しぶりね・・・。うまく出来るかしら。」
収納魔法の中から水晶玉を取り出し手をかざしながら詠唱を始める。この植物が危険だから野宿にした・・・というのは建前で、本当はこの魔法を使っている所を誰かに見られるわけにはいかないからだ。
リリムはもちろん知っているから例外だし、グラとシール君なら見られてもそれほど問題ないかもしれないけれど・・・秘密にしておくに越したことはない。何せ今から見る情報は、蘇生魔法などと同様に、世界的に禁忌とされている魔法の一種を使って得たものなのだから。
水晶に刻まれているのは外部記憶の魔法。簡単に説明すれば日記帳みたいなもので、私が記憶した情報を収納しておくことが出来る。もちろんこれは禁忌の魔法ではないし、一般的ではないものの使用する賢者は何人かいる魔法だ。
問題なのはその情報内容の収集方法だ。神と呼ばれる存在がどれほどのものかは分からないけど、この世界で生きている者でこの魔法が使える者は私以外にいない。それが”情報転写”の魔法。
有機物無機物問わずそのものが持っている情報を全て引き出すことが出来る魔法。基本的には気付かれないように人がいない時や、死体などからしか引き出さないけど、対象の持っているあらゆる情報を引き出すことが出来るため、それこそ全知に近い状態になることが出来る。
ホルンがこの魔法に勘付いてしまい全世界に禁忌の魔法として触れ回った時には、すでに大体の知識はこの水晶に写すことが出来ていたから、あまり困りもしなかったけど、使用を自粛するように強く言われているので出来る限り使わずにいたのだけど、今回はそんな甘いことを言っている場合じゃないかもしれない。
「やっぱり・・・神滅戦争の時に使われていたものと同じ成分だわ・・・。」
かつて神の国とまで呼ばれるほどに文明が発展していた国が、跡形もなく滅ぼされたときに使用されていたとされる薬物がこの植物から作ることが出来る。突然国が滅んだ原因を探る時にも、この力を使って当時の記録を水晶に残しており、当時の記録と現状を照らし合わせてみても似ている部分が多い。
「当時は明確に神の国を滅ぼすためだけに使われたからまだ被害は一国だけで済んだ。管理も徹底されていたし、島国だったから隣国とかへの被害もなかった・・・。でもここは違う。この大陸だけで言っても四国あるし、これを使う目的が明確でない以上他大陸へ被害が広がる危険性もある・・・。」
「姉様、水を汲んできまし・・・姉様!」
いつの間にか背後に立っていたリリムに気がつかないほど消耗してしまっているとは・・・。この魔法の危険な点はこの体力・魔力消費量の異常な多さにもある。恐らく不死の体でなければ耐え切れなかったかもしれないほどに消耗していた体を支えてもらう。
試験管に水を入れ、そこに植物をちぎって少し入れて蓋をする。同じ動作を繰り返して十本の試験管を作り、それを五本ずつ別々の箱にしまっておく。そして残った分を全て汲んできてもらった水の中に入れて氷漬けにしておく。
「あとは・・・手紙を・・・ホルンに・・・。」
紙を取り出して水晶へ転写した情報を紙の方へと写し、リリム名義でプルソンへ、聖皇の下へと箱と手紙を送ってもらうように頼んだ所で意識が途切れた。
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