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88.路地先の地下施設

※以前執筆していた作品の103話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「ここらへんでいいの?件の路地はもう少し先じゃない?」


シールに先程の路地近くまで運んでもらい、店の物陰で下してもらう。いくら隠密魔法をかけているとはいえ、一目のある所で下してしまうと、僕らはともかくシールが隠密魔法の範囲外に出た瞬間突然現れたように見えてしまう。


ここならば目と鼻の先にあの路地が見えているし、シールもそのまま店から出てきた風を装えば不自然さもないだろう。


『それじゃ行ってくるわ。私達がいない間リリムをよろしくね。』


ルルが何かをシールに伝え、シールが親指をグッと立てる。元の姿の時はあまり気にしていなくても平気だったが、猫の姿になると隠密魔法の効果範囲が把握しづらいため、ルルには横に寄り添ってもらい、常に視界に捉えることができるようにしてもらっている。


『さて・・・しっぽがあたらないように気を付けないとね。』


『最悪当たってしまっても多少は大丈夫だと思うわ。この高さに設定してるってことは普段から猫とかは通る所なのでしょうし、いちいち猫に反応したりはしない・・・と思うわ。』


それは確かにそうかもしれない。警戒するに越したことはないが猫やら鳥やらにいちいち反応していては疲れてしまう。


しかし、ここに一体何があるのだろうか・・・路地の中の細道を曲がって進んでみても特に変わった様子はない。せいぜい店の裏口の扉がある程度だし、その店は何の変哲もない普通の食事処だ。もっとも、こんなところに繋がっている時点で疑うべき場所であることに違いはないが。


思っていたより何もなく、もう少しだけ調べたら人間に戻って店の中を調べようかと思っていたのだが、ふと、地面に切れ込みのようなものがあることに気が付いた。


『ルル、ここ見て。地面に切れ込みが入っている。』


『これは何かしら・・・っ!?グラ!こっちへ!』


ルルが切れ込みを確認している最中に、店の扉が開かれた。慌てて切れ込みの反対側に寄って様子を窺っていると、出てきた男はゴミ箱をどけて下に隠されていた蓋を持ち上げ、何かボタンのようなものを押している。そして辺りをキョロキョロと見回したかと思えば再びしゃがみこみボタンを押した。


そして、男の前に音もなく階段が現れ、再び辺りをキョロキョロと見回し、中へと下って行った。そして、階段が再び閉まる前に急いで僕たちも男の後ろをついていく。幸いにもこの男に僕たちの存在は気づかれていない様子だった。


『あの切れ込みは隠し階段だったみたいね・・・あのボタンを正しい順に押すことで現れるみたいね。』


『みたいだね。さて、この先に何があるのやら・・・。』


もしかしたら自分たちの疑い過ぎで、単にお店の食材保管庫に過ぎず、盗まれたりしないようにこういった警戒網を敷いてるだけかもしれないと、淡い期待も抱いてみたものの、階段を降り切ってたどり着いた所は、とてもじゃないが食材保管庫には見えなかった。


『ルル、ここがなんだか分かるか?植物を栽培しているようだけど・・・。』


『残念だけどすぐには分からないわ・・・。せめてこの植物が何なのか調べることが出来ればいいのだけれど・・・。』


一緒に入って来た男は棚の方から何かを取り出し、それを部屋の奥にある穴へと流し入れている。遠目で見た感じだと肥料のようなものに見えるが、それが何を意味しているのかは正確にはわからない。


『まあ、大抵こういう所で育てているのは麻薬の類だろう。経験則でしかないけど、何度かこういう施設は見たことがある。・・・こんなに大きいのは初めてみるけど。』


どこぞの貴族の家に忍び込んだ時も似たような地下施設があり、そこでも麻薬を育てていたりした。当然ながら人を狂わせるこの手の物は全世界的に所持・栽培を禁止している。そして、これがひとたび表に出てしまえば各国から責め立てられ、場合によってはこれもまた戦争の火種となりかねない。


『この施設が個人や小規模団体のものなのか、あるいは国を挙げて隠ぺいしているのかで話はずいぶんと変わってくるわね・・・。』


戦時中ほどこの手のものは需要が高まり、また、警備不足などで広まりやすくなる。物によっては痛覚を遮断したり、感覚を鋭くするものもあるそうで、兵士にそれを服用させて前線に送り込んでいた時代もあったというのを書物で読んだことがある。


『とりあえず少しだけどくすねることは出来たわ。あとはこの男と共に外に出て、店の中を少し探りましょう。もしかしたら国からの指示書とかが残っているかもしれないわ。』


これほど厳重な管理をしているのだから、そういった指示書は既に灰となっているかもしれない。だが、万が一それを発見することが出来れば、シトリの情勢は一気に下り坂になるだろう。


そして、別の棚からまた違った袋を持った男が外へ出ていこうとしているのに合わせて僕たちも外へと出る。この男は実力自体はそれほど高くもないだろう。先程ルルが植物を摘んだ際に収納魔法を起動してしまい、それでバレてしまったらどうするのかと思ったが、この男が気づいた様子は無かった。


これが例えば僕の弟子で密偵としての仕事を勉強している人とかだったら即破門にするくらい危ない行為だったが、ルルは最初から気づかれないと分かっていたようで、心配しすぎだとケラケラ笑い出した・・・念話の中で・・・。


その後はシールに降ろしてもらった場所で人の姿に戻り、宿へ行き服を着て再び店の中を探ってみた。だがさすがに指示書やそれに近いものは見つかるはずもなく、収穫があったとすれば店で出している料理の調理方法が記載されている書物だけだった。

いいねやレビュー・感想など頂けると非常に励みになります。


一言二言でも頂けるとありがたいので是非ともよろしくお願いいたします。


こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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