84.魔王国アモンの三将
リニューアル後のオリジナルストーリーです。
エレナが魔王国で何をしていたのかというお話です。
「さて、まず初めにだが、魔王国アモンのことを・・・魔族のことをどれだけ知っている?」
こちらに反抗の意志が無いことが伝わったのか、牢から出て応接間のような所へと案内されました。
魔王様と共にたどり着いたその部屋には、私を攫ってきた筋肉質な方と、両手が翼のようになっている若い女性と、牛のような角が生えている老人の三人がすでにおり、彼らは魔王様の側近であるらしく、私との打ち合わせに参加させるようだ。
「そうですね・・・。私の認識としては、魔族は魔法に長けている種族であり、主としては長命である一方で争いが絶えず若くして亡くなる方も多いと伺ったことがあります。歴史に関しては・・・今の魔王国には意味のない話ですわね。」
かつてはその横暴さから侵略をしたり、逆に討伐のために侵略されたりと言ったこともあったらしいけど、ここ数百年はそういった話を全く聞かず、自国内でしっかりとした国作りをしているという噂を聞くくらいだった。
だからこそ人間の国には歴史的なことこそ多く文献が残っているが、種族の特徴などはあまり文献が残っていない。
「ふむ・・・。種族的な定義を言うのであれば、魔族とは体内に魔石を宿している種を指す。ただし魔物のように核・・・つまりは心臓のような働きを魔石にさせているものは除くがな。」
眼鏡をクイッと上げながら話す魔王様の話によると、魔族が魔法に長けているのはその魔石のおかげだということらしい。
ただ心臓や脳のような働きというわけではないので、破壊されたとしても即死するわけではないし、回復も一応できるとのことで、感覚としては臓器の一つとして捉えるのがいいとのこと。
「純血種と混血種がいる点に関しては竜や人間と同じだ。俺や魔王様は純血種の魔族・・・っと、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は雷の竜神テイルトール。強さには自信があるがルルに体を痛めつけられてしまってな。服を着た状態で悪いな。」
テイルトール様は確かに私を攫った時と違い、しっかりとした燕尾服を身に纏っている。
ルル様にやられた際の傷が治っていないとのことらしいので回復魔法を掛けようかと相談したが、純血種の魔族の方は回復方法が特殊らしいので断られてしまった。
「回復魔法の術式が違うだけですので、もしよろしければ後ほどお教えいたしましょう。私はハロルド。魔王様が幼い時より仕えております。牛魔族との混血種ですが力仕事よりも事務仕事の方が得意としております。」
「・・・リュカ。・・・幻魔鳥翼族との混血。・・・調査とかは得意。」
ハロルド様は事務仕事が得意のようですが、それでも体つきはしっかりとしているため肉体労働も問題なくできるそうだ。
リュカ様は髪でお顔が隠れてしまっていたり、頻りに口元を手(?)で隠していたりとかなり控えめな方のようだ。
「三人共私に長く使えている将だ。戦闘能力や知能面はリリムと同程度だと思えば分かりやすいだろう。」
「真正面から戦ったら今のリリムには負けるだろうけどな。」
「最後に会ったのは何年前でしたかな。」
「リリム・・・会いたい・・・。」
皆様ルル様とリリム様に面識があるようで、魔王様と違い好意的にも見えるので何だかんだ良好な関係を築いているのだろうと思う。
「話を戻そう。魔族が総じて長命であるのは魔石による所が大きい。だが他は人間と同じようなものだ。生命維持のためには食事も睡眠も必要だし、健康的に育つには住居などの環境も重要だ。」
過去の魔族たちはそういった物を力で奪い取って得ていたらしいけど、その結果どうなったのかは歴史が証明している。
だからこそ今、あるいは未来を生きるためには自分たちで生産していく必要があるのだが、そこを理解していない魔族が先代魔王を筆頭に多くいたため、玉座を簒奪し環境整備に踏み出したようだ。
「俺としては魔王様の考えよりルルの考え方の方が合ってるんだけどな。奪ったらそれっきりだが、作った物を買えば何度でも楽しめるって言われてな。」
「私は奪われる側になった時の恐怖を思えば、互いに生産者として手を取り合う方が賢明であると思いましたな。テイルトールがリリム殿の甘味を奪った時は災害かと思う程に暴れてましたからなぁ。」
「暴れたリリムが魔王様の逆鱗に触れ、リリムを倒した魔王様がルルの逆鱗に触れ、あの時が一番ヤバかったな。さすがに魔王国が滅ぶと思ったぜ。」
「・・・リリムが暴れていた原因はお前だったのか。」
どうやらその時にお二人と知り合いになり、停戦協定をルル様と魔王国で結び、リリム様の養生とルル様の研究のために暫く魔王国に滞在していたらしい。
「リリムの怪我・・・ひどかった・・・。私がもっと強かったら・・・魔王様もテイルトールも殺してやったのに・・・。」
「・・・私はともかくテイルトールなら殺せるんじゃないか?特に今は・・・」
「はっはっはっ!そしたらリリムに土下座して泣き付いて助けてもらうさ。そうすれば悪者はリュカのほうだからな!」
「・・・じゃあ私はルルに泣き付く。」
「卑怯者め!」
「どっちが!」
互いにルル様とリリム様を味方につけて代理戦争を行おうとしている二人を横目に、魔王様が二枚の地図を取り出してきた。
「魔王国領域内を記したもので、こちらが古い地図でこちらが最新の地図だ。海に面している所に昔は無人だが島があった。だが、私とルルが戦った結果島が消えた。わずか半日の出来事だ。もしルルが敵対してきたら全力で説得してくれ。」
ちょっとした喧嘩くらいなら止めることもできなくはないだろうけど、本気でルル様が戦争を仕掛けてきたのなら、私ごと消し炭にされそうなので力にはなれないだろう。
いや、義理の母親になるのだから多少は見逃してもらえるかしら・・・?
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