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79.レゾン奪還

※以前執筆していた作品の96話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「シトリ教国を攻め落とすというのはいい案だと思うわ。転移魔法もシトリ教国の方から来ているようだし。」


将軍から伝えられた陛下やノエル様の案は、バエル王国とアガレス王国の拮抗状態を保ちつつ、電光石火の如くシトリ教国の首都まで攻め上げていくというものだった。


当然ながらこの策を成すほどの兵力はアガレス王国にはない。だが、ルルとリリムの二人だけで壊滅させることも容易だと言われれば手を借りない道などない。


「シトリ教国には個人的にも恨みが出来ましたので、私も本気で行かせてもらいます。」


闘志に燃えるリリムの腰には、先日まではなかった剣が2本刺さっている。これはアガレスの宝物庫から持ってきた特殊金属などを使用しリリム自ら叩き上げたもので、シールと出会う前までは剣士として生きてきた彼女の本気の状態らしい。


衣服も普段のスカートなどではなくアガレス王国の軍服を着ている。これに関しては白を基調とした普段の服だと、戦場ですぐ真っ赤に染まってしまってダメになってしまうから、汚れに強い繊維で作られた、汚れても構わない服ということで着ているらしい。


「僕もリリムに頼んで武器を作ってもらったし、ここから先は僕も結構戦えるよ!」


シールは衣服こそ普段と変わらないが、その両腕に大小さまざまな輪っかのようなものをいくつも装備している。これは戦輪というものらしく、回転による斬撃強化を行うような感じの投擲武器の一種らしい。


風を操るシールだからこそ一度投げられた戦輪は失速することなく、敵を切り裂き続ける。シールが今まで見せていた風の刃の物理版のようなものだろう。


その破壊力は先日現れた熊たちですら、この戦輪の前では無力と化すほどだとリリムは説明する。出始めこそ魔法で風を操っているが、加速した戦輪は純粋な物理攻撃である上に、アダマントで出来ているこの戦輪の前では結界すら意味を成さない。


つまり、避けるかこの戦輪ですら切り裂けないような硬度で防ぐしかないのだが、大小さまざまな戦輪が四方八方から失速することなく飛び交い続ける中で避けるなど不可能だろうし、アダマントより硬い装備などそうそうあるものでもない。


「自分で作っておいてなんですが、これは私でも突破が困難ですね・・・。重さがある分多少は遅いと思うのですが、その遅さを補う手数の多さですからね・・・。」


リリムで突破が困難だと言われ、それならルルはどうだろうかと振り返ってみれば、"投げられる前に術者を瞬殺できるから問題ない"とだけ言われシールが冷や汗をかいていた。


そのルルはというと、蝶を模ったらしい眼鏡を付けていたり、"獅子王"という演劇でよく使われている被り物をつけ、背中からは孔雀のような羽を生やしている。誰がどうみてもふざけているようにしか見えない恰好をしていた。


「ちゃんと意味はあるのよ?この眼鏡はどんな状態でもしっかりと視界を確保できるようにしてくれるし、この帽子は上空からの奇襲を防いでくれる結界を自動で張ってくれるし、この羽は・・・あれよ・・・かっこいい!」


全員が口をぽかんとあけたままルルを見つめ続けていると、しょぼんとした顔でそれぞれの道具を仕舞い始めた。やっぱり若干ふざけていたらしく、その理由は"私も少しくらい目立ちたい"ということらしい。


「そんなことしなくても、戦いになればルルが一番目立つだろうに・・・。」


「だって、シトリ教国の兵士たち弱すぎるんですもの・・・。あれじゃ私の出番がないわ・・・。グラにいいとこ見せたいのに。」


少し顔を赤らめて上目遣いでそんなことを言われてしまえば、返す言葉も見つからない。とりあえず周りのニヤニヤとした視線が痛いので咳払いをしつつ進軍開始の合図を送る。


結局僕とルルに関してはいつもと変わらない恰好で進むことになった。













「噂には聞いていましたが・・・改めて目撃するとすさまじい・・・。殿下はよく彼の者たちと旅ができますな・・・。」


シトリ教国との元・国境があるレゾンの町まであっという間に取り返すことに成功してしまい、道中の兵士たちはただ普通についてきただけだったため実感が沸かないようだった。


そうなったのもこの化け物三人のせい・・・いや、おかげというべきだろう。シールが戦輪を飛ばしたかと思えば一軍が全滅し、リリムが駆けだしたかと思えばまた別の一軍が殲滅され、ルルに至っては音も気配もなく一軍を消滅させてしまったのだからそんな感想が飛び交うのも無理はない。


魔法さえ封じられなければこんなものだし、魔法を封じられたとしても、もうどうにでも出来ると言い放ち、三人はそれぞれ町周辺の残党処理へと向かった。


「そういえば殿下、氷の蛮人とやらは死者を喰らい強化されると仰っていましたな。敵兵とはいえ、大量の死者が出てしまっておりますが大丈夫なのでしょうか?」


もちろん普通なら大丈夫じゃない。熊を倒した所からここまででどれほどの死者が出たかはわからないし、その殆どを氷の蛮人が拾い集めているとシールが言っていたから、相当強化されている可能性がある。


だが、それでもルルたちより強くなることなど有り得ないだろうし、であるならば敵の兵力を削って置いた方が都合がいい。それに、万が一僕らの方ではなく、ノエル様の方へ氷の蛮人が現れたとしても対応できるように手は打ってある。丁度その策の準備も整ったようだ。


「グラさーん!ノエル様に届けてきましたよー!でもあの剣ってこんな距離届くんですか?」


以前、遺跡の中で発見された二本一対の剣。今僕が持っている赤い宝玉が埋め込まれた剣に魔力を流し魔法を起動することで、もう一対の青の宝玉が埋め込まれた剣の元へ転移することが出来る。


色々調べた結果、ルルたち程の魔力があれば問題なくノエル様の下まで転移出来ることが判ったため、アルルに依頼して青の魔剣をノエル様へと渡してきてもらった。


それと、ボタンも一緒に届けてもらい、こちらは流す魔力量は少なくても十分届くことが判明している。届けてもらったボタンは現在ルルが持っている首飾りと一対になっており、魔力を流すことで信号を送ることが出来るだけの玩具だ。


緊急事態になったらボタンを押してもらうようにノエル様に一緒に伝えてもらっているため、向こうに何かあったらこの二つを使ってすぐに駆け付けることが出来るだろう。


もちろん、敵にこれを利用される可能性もあるため、転移するのは僕と三人の内の誰か一人だけと決めている。これは緊急事態の内容までは分からないため、戦闘が出来る者一人と、戦闘以外の緊急事態に対応できるであろう僕が向かうための取り決めだ。


「転移するときに私も近くにいたら一緒に行きますね!戦ったりは苦手ですけど移動なら任せてください!」


そう言って胸を叩くアルルに頼りにしてると伝えたところで、残党処理に向かっていた三人が戻ってきた。ルルに至ってはついでに国境にあるシトリの砦も全部潰してきたと言い放ち、将軍やアルルを絶句させていた。

いいねやレビュー・感想など頂けると非常に励みになります。


一言二言でも頂けるとありがたいので是非ともよろしくお願いいたします。


こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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