69.防衛拠点
※以前執筆していた作品の86話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「どうしても・・・話さないとダメかい?」
ガイムさんとミスフィが僕らを、というかルルとリリムを狙った理由を聞き出そうとしているのだが、どうにも口を割る気がない様子なのでルルも半ば諦めているようだ。
「まあ、目的は大体判ってるんだけどね。氷の蛮人は吸血鬼の亜種みたいなもので、死者の魂を喰らうことで自らを強くしていく能力を持っているんだ。それに魔道具なんかを喰らうことでもその力を手に入れるらしいから・・・今回の戦争に乗じて大量の魂を喰らおうとしてるんじゃないかな。」
つまり、この戦争で大量の死者が出ればそれだけ彼が強くなるということのようだ。そして、死者を大量に出すためにはルルたちのような強大な力で、死者が出ずに制圧されるのを防ぐためだろうか。
予測の域は出ないがそれでも、何も分からない状態でいるよりかは幾分かマシだろう。一先ずこの二人のことはフェロンに任せておき、僕らはアガレス王国へと向かう。
「それにしても・・・どうしてシールは氷の蛮人について詳しいんだ?」
「んー・・・まあ天才にも色々な過去があるってことだよ。」
シールが言葉を濁しはぐらかすのは珍しい気もするが、話したくない過去があるのだろう。これ以上の詮索はしないようにしつつ、竜の姿へと化身したシールへと乗り込む。
さすがに町の外に突然竜が現れたため町中は随分と騒ぎになっているようだが、そこはフェロンが上手く説明しておくと言っていたため気にしないようにする。
空の旅はすさまじい速度で進んで行っているのだが、シールが風を操り風圧が襲ってこないようにしてくれてるため、思ってたほどの苦痛はない。さすがに寒さや音は防ぎきれないようだが、そのくらいは自分でどうにかすることが出来る。
「エリーお姉ちゃん・・・大丈夫・・・?」
頭を襲ってくる痛みに耐えつつ、コロンには大丈夫とだけ伝えておく。戦争が始まって一年と少し、アガレス王都に強結界を張り、スフラの町に弱結界を張りつつ自分で周囲警戒をしておく。
慣れたくもない生活に慣れてしまったが、ここ数日の戦火は少し前までとは比にならないほど大きくなっている。
これまでは隙を見て漁に出たりして食料調達も出来たのだが、今は全くそんなことも出来ず町民も衰弱してきている。
アガレス王国の他の町の民はその殆どが王都かスフラに集められている。死傷者が殆ど出ていないせいで国が衰弱してきているのだから皮肉なものだ。
「エリアス殿!只今戻りました!・・・やはり襲ってきているのは召喚獣の群ればかりで人間はいませんでしたね。」
アルマ殿下の声が聞こえて一先ず安堵する。スフラの町を第二の防衛拠点とする際に殿下とその配下が派兵された。そして襲ってくる敵を蹴散らしてくれているのだが、その敵がまた悩みの種でもあった。
以前この町を襲った召喚獣の群れが、強さを増して軍隊として向かってきている。さすがに殿下の隊ともあれば問題なく戦えているようだが、いかんせん数が多すぎる上、隊列を成して襲ってくるから余計な疲弊が貯まる一方であった。
それでも、この辺りはまだマシなほうだろう。戦争の前線ではこの召喚獣の群れに加えて、バエル王国・シトリ教国・ウァレフォルの混血種たちの連合軍まで加わっているというのだから・・・。エレナさんとノエルさんがいなければとっくに崩壊していただろう。
「ごめんなさい・・・私がもっと強ければこんな戦争すぐに終わらせるんだけど・・・。」
元々水魔法は後方支援系の魔法や生活魔法系が多い上に、私自身そっちの研究ばかりしていたせいで攻撃魔法は殆ど使えない。
せいぜい圧倒的な水量で押しつぶす程度のことしかできないため、平原でそんなことをしてしまえば水害のほうがひどくなってしまう。
「とんでもない!あなたのおかげでアガレスの民は最小限の被害で済んでいるのですから、感謝こそすれ、あなたに恨み言をぶつける者など一人もいません!」
そう言ってもらえると多少は気が楽になる。それでもこのままだとジリ貧だ。何か・・・策を取らなければならないのだが、戦争経験の無い私が思いつくことなど何もない。
そして、戦いから戻ってきた兵士達に回復魔法を掛けている最中、私の代わりに周辺警戒をおこなっていた兵士の一人がとんでもない報告をしてきた。
「り、竜が!竜が東の空から飛んできてます!ものすごい速度です!」
「なんだと!?全兵へ告ぐ!町民を守れ!俺が時間を稼ぐから王都へ向かう準備をしろ!」
とうとう来たか・・・。ウァレフォルの竜人の民・・・。戦ったことはないから不安もあるが、私と殿下で守り切るしかない。本来の姿に戻るとコロンが怖がるのだがそんな悠長なことは言ってられない。
機先を制するために海竜の姿に戻り、飛んでくる竜へ向かって渾身の息吹を放った。「どうしても・・・話さないとダメかい?」
ガイムさんとミスフィが僕らを、というかルルとリリムを狙った理由を聞き出そうとしているのだが、どうにも口を割る気がない様子なのでルルも半ば諦めているようだ。
「まあ、目的は大体判ってるんだけどね。氷の蛮人は吸血鬼の亜種みたいなもので、死者の魂を喰らうことで自らを強くしていく能力を持っているんだ。それに魔道具なんかを喰らうことでもその力を手に入れるらしいから・・・今回の戦争に乗じて大量の魂を喰らおうとしてるんじゃないかな。」
つまり、この戦争で大量の死者が出ればそれだけ彼が強くなるということのようだ。そして、死者を大量に出すためにはルルたちのような強大な力で、死者が出ずに制圧されるのを防ぐためだろうか。
予測の域は出ないがそれでも、何も分からない状態でいるよりかは幾分かマシだろう。一先ずこの二人のことはフェロンに任せておき、僕らはアガレス王国へと向かう。
「それにしても・・・どうしてシールは氷の蛮人について詳しいんだ?」
「んー・・・まあ天才にも色々な過去があるってことだよ。」
シールが言葉を濁しはぐらかすのは珍しい気もするが、話したくない過去があるのだろう。これ以上の詮索はしないようにしつつ、竜の姿へと化身したシールへと乗り込む。
さすがに町の外に突然竜が現れたため町中は随分と騒ぎになっているようだが、そこはフェロンが上手く説明しておくと言っていたため気にしないようにする。
空の旅はすさまじい速度で進んで行っているのだが、シールが風を操り風圧が襲ってこないようにしてくれてるため、思ってたほどの苦痛はない。さすがに寒さや音は防ぎきれないようだが、そのくらいは自分でどうにかすることが出来る。
「エリーお姉ちゃん・・・大丈夫・・・?」
頭を襲ってくる痛みに耐えつつ、コロンには大丈夫とだけ伝えておく。戦争が始まって一年と少し、アガレス王都に強結界を張り、スフラの町に弱結界を張りつつ自分で周囲警戒をしておく。
慣れたくもない生活に慣れてしまったが、ここ数日の戦火は少し前までとは比にならないほど大きくなっている。
これまでは隙を見て漁に出たりして食料調達も出来たのだが、今は全くそんなことも出来ず町民も衰弱してきている。
アガレス王国の他の町の民はその殆どが王都かスフラに集められている。死傷者が殆ど出ていないせいで国が衰弱してきているのだから皮肉なものだ。
「エリアス殿!只今戻りました!・・・やはり襲ってきているのは召喚獣の群ればかりで人間はいませんでしたね。」
アルマ殿下の声が聞こえて一先ず安堵する。スフラの町を第二の防衛拠点とする際に殿下とその配下が派兵された。そして襲ってくる敵を蹴散らしてくれているのだが、その敵がまた悩みの種でもあった。
以前この町を襲った召喚獣の群れが、強さを増して軍隊として向かってきている。さすがに殿下の隊ともあれば問題なく戦えているようだが、いかんせん数が多すぎる上、隊列を成して襲ってくるから余計な疲弊が貯まる一方であった。
それでも、この辺りはまだマシなほうだろう。戦争の前線ではこの召喚獣の群れに加えて、バエル王国・シトリ教国・ウァレフォルの混血種たちの連合軍まで加わっているというのだから・・・。エレナさんとノエルさんがいなければとっくに崩壊していただろう。
「ごめんなさい・・・私がもっと強ければこんな戦争すぐに終わらせるんだけど・・・。」
元々水魔法は後方支援系の魔法や生活魔法系が多い上に、私自身そっちの研究ばかりしていたせいで攻撃魔法は殆ど使えない。
せいぜい圧倒的な水量で押しつぶす程度のことしかできないため、平原でそんなことをしてしまえば水害のほうがひどくなってしまう。
「とんでもない!あなたのおかげでアガレスの民は最小限の被害で済んでいるのですから、感謝こそすれ、あなたに恨み言をぶつける者など一人もいません!」
そう言ってもらえると多少は気が楽になる。それでもこのままだとジリ貧だ。何か・・・策を取らなければならないのだが、戦争経験の無い私が思いつくことなど何もない。
そして、戦いから戻ってきた兵士達に回復魔法を掛けている最中、私の代わりに周辺警戒をおこなっていた兵士の一人がとんでもない報告をしてきた。
「り、竜が!竜が東の空から飛んできてます!ものすごい速度です!」
「なんだと!?全兵へ告ぐ!町民を守れ!俺が時間を稼ぐから王都へ向かう準備をしろ!」
とうとう来たか・・・。ウァレフォルの竜人の民・・・。戦ったことはないから不安もあるが、私と殿下で守り切るしかない。本来の姿に戻るとコロンが怖がるのだがそんな悠長なことは言ってられない。
機先を制するために海竜の姿に戻り、飛んでくる竜へ向かって渾身の息吹を放った。
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