60.初めて
※以前執筆していた作品の78話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「急造の割にはすごいな・・・。お風呂まで付いている・・・。」
土の竜神が作り上げた家は、個室が一つと浴室が一つの家で、部屋の中には羊毛のベッドまであり、外見はただの真四角な物だったが中は案外快適に過ごせるようだ。
浴室は水魔法が刻まれた魔道具でお湯を出すことが出来るようになっている。浴槽にお湯が貯まるのこそ少し時間が掛かったが、魔法で作られたお湯なので温度が変化することもなくゆったりと入浴をすることが出来た。
「土魔法や水魔法はあまり興味がなかったけど、こういう使い方が出来るなら勉強してみたいな。」
「あら、それなら明日から教わってみたらいいんじゃないかしら?」
突然浴室に入ってきたルルに驚いて溺れそうになってしまった。一人一軒貰ったというのに何故わざわざ僕の方へ来たのか判らない。
「恋人同士は一緒にお風呂に入って背中を流すのが常識だって言われたから・・・。」
誰に教えられたのかと問えばリリムを筆頭に全員から言われてしまい、そういうものなのかと納得してここへ来たらしい。
「僕も経験がないから何とも言えないけど、多分リリムたちはからかってるだけだと思うよ。それと、僕はすでに体を洗ってしまったから特に必要はないかな。」
とりあえず明日文句の一つでも言うとして、改めて見るとルルの肌はすべすべで、タオルで隠しているもののしっかりと膨らみが分かる程度には胸も大きく、少しばかり照れているのか顔を赤らめており非常に扇情的であった。
「あの・・・そんなにまじまじと見られていると体を洗いにくいのだけれど・・・。」
「勝手に入ってきたのはルルの方でしょ?僕のことは気にせずに体を洗ってていいよ。」
それでもルルは立ち呆けており、このままでは風邪を引いてしまうかもしれないので、タオルを奪い取って無理やり体を洗う。
背中を向けられたので肩から腕と背中を洗ってあげる。肌は見た目通りすべすべだったが、それだけではなくぷにぷにもちもちとしており、ずっと触っていられるような体だったので、洗うのを忘れて腕や背中を触り続けていた。
「グ、グラ・・・そろそろいいんじゃないかしら?」
「前も触っていい?」
今度は耳まで真っ赤にしていたが小さく頷いたので、遠慮なく触ろうとしたが、肩が少しばかり震えているのに気が付いたので、ルルの頭をポンッと叩いて湯舟の中へ戻った。
「ま、まあ僕も男だからね。あんまりからかい過ぎると歯止めが効かなくなるからほどほどにね。」
「ご、ごめんなさい・・・異性にこんなふうに触れられるのは初めてで・・・こ、こんなに恐怖感を覚えたことはなかったわ・・・。」
竜神と対面したときも、戦争に巻き込まれたり暗殺者に狙われた時ですら恐怖で震えたことはなかったと、床にへたり込んで呟くルルは涙目になっており、先ほどまでと違いタオルで隠していないのでしっかりと見えてしまっている。
これはこれで眺めているのも楽しいが、さすがにルルに申し訳ないのでしっかりと目に焼き付けてからルルを湯舟へ招いた。
二人で入るとさすがに狭かったが、ルルを膝に乗せて後ろからそっと抱きしめてあげたところ、触れた瞬間こそビクっとしたが何とか落ち着いたようで、力を抜いて体を預けてきてくれた。
「本当、ごめんなさい・・・恋愛本とかは読んだことがあるから、大丈夫だと思っていたのだけれど・・・こんなにドキドキするとは思わなかったわ・・・。」
「まあ可愛かったしいいんじゃないかな。ルルが受け入れてくれるまでは僕も待てる・・・と思うし、ゆっくりでいいよ。」
正直、今この状況ですら興奮状態が続いているので危険なのだが、だからといって無理やりにしてもルルを傷つけてしまうだけだろう。今はとにかく自分の理性を信じて我慢するしかない。
「本当に我慢できなくなったら無理やりでもいいからね。私はそのくらいの事じゃ嫌いにならないから。」
そう言われて、ふとリリムと話していたときに浮かんだ疑問を思い出した。彼女は一体僕のどこに惹かれ、こうして恋仲となってくれたのだろうか?
「ルルは・・・どうして僕の恋人になってくれたの?僕は多少はモテるほうだとは思うけど、それほど魅力的って訳でもないと思うし・・・。」
「そうねぇ・・・最初は格好いい人だなって思ったわ。それと、隠密の魔法を使う人と仲良くなったことはなかったから、うまく気を引いて隠密魔法の研究に利用しようなかって・・・でも、一緒に旅をしてきて、何て言ったらいいのかしら・・・波長が合う・・・って言うのかしら?リリムとはまた違った心地よさというか、安心感があって・・・。」
利用うんぬんに関しては、僕も彼女たちに取り入って強さの秘密を探ろうとしていたしお互い様だろう。
波長が合うというのも何となくだがわかる。お互いの名前くらいしか知らないような状況の時でも、彼女とはずっと話していられると感じていたし、その強さに驚きこそしたが、恐怖などは微塵も感じなかった。
「好きになったのはいつなのかは分からないわ。気が付いたら好きになっていて・・・最初は、私のような人の理から外れた人間が、普通の人と同じように恋愛なんて出来る訳がないって諦めていたわ。でも、レオナやノエルに色々相談して・・・いつか、グラに気持ちを伝えようって思ったのよ。まあ、こんな早くに告白するとは私も思っていなかったのだけれど。」
そういってくすくすと笑いだすルルは、すっかり調子を取り戻したようで、今度はこちらに同じ質問を返してきた。
僕は、実は好きになったのは出会ってすぐくらいのことで、山の中で死者が出てしまった時に、被害者と共に悲しんでいたルルを見て、長く生きているというのに人を慈しむ心をしっかりと持っていて、そのやさしさが妙に魅力的に感じた。
「やさしい・・・初めて言われたわ。私を見る人の目は、恐怖か羨望かしかなかったから・・・。」
ルルの持つ力に、知識に、恐怖を抱くというのはわからなくもない。どれほど時が経っても姿が変わらないのを不気味に思う者がいるのも理解できる。
だが、羨望というのはどういうことなのかと聞けば、それはリリムやエレナのような者たちからの目だと言う。
「好意的なものだからいいのだけれど、愛・・・とは違うじゃない?それって。でも、あなたは私を愛してくれている。過程がどうであっても、今は私を一人の女性として見てくれている。それが・・・すごく嬉しいわ・・・。だから・・・触っても大丈夫よ・・・。」
そういってルルのお腹の方へ回してある僕の手に触れてくる。どこを、とは言わない。だが、何を示しているかはすぐにわかった。今度はこちらが逆に緊張してしまったが、せっかくお許しがでたのだから、触れない理由はない。
手を少しずつ上に上げて、ゆっくりと触る。腕やお腹も柔らかな感触だったが、"ここ"は格別の柔らかさで、少し力を入れれば指が沈んでいく。こうして触れるのは初めてだったので勝手がわからず、ただただその柔らかさを堪能するために手を動かしていた。
お互いに呼吸が荒くなってきたのを誤魔化すように口を重ねた。ルルが向き合うように座り直したので体を抱き寄せてもう一度キスを、今度は舌を絡ませて吸うように、貪るようにキスをする。
そして、口が離れた途端に眩暈がして、そのままぐったりと湯舟の縁へ寄りかかり動けなくなってしまった。
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