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5.王宮へ向かう道中

※以前執筆していた作品の11話途中~12話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「そっかぁ・・・見失ったかぁ・・・。まあ、この町に人攫いはいないと思うから大丈夫でしょ・・・。」


夕刻より少し前に無事王都へとたどり着き、その後わずか数分で気が付けばルルは姿を消していた。もうすぐ夕飯の時間ということもあり、城下町からは多種多様な食事処からいい匂いを漂わせていたため、ルルの行先は不明だが目的は明らかだった。


むしろ気になるのはリリムの反応のほうだ。あれだけ大好きな姉とはぐれてしまっているのに随分と落ち着き払っている。初めて出会った町では、姉とはぐれた際に結構焦ってたらしいのだが・・・。


そんな疑問を思い浮かべていると、こちらの心を読んだのかリリムが答えてくれた。


「私は、それほど心が強くありませんので、知らぬ土地に一人でいると心がざわつき不安の衝動に駆られるのです。それは時として己が意志で律することができなくなるほどに。ですが、今はあなたがいますので。信頼している・・・というほどではありませんが、アガレスの王子ともあろう方が、私たちに害を成すとも思えませんので。」


特に表情を変えることもなくスラスラと言い切るリリムだが、聞き捨てならない言葉にグラは内心度肝を抜かれた。だが、既に彼女たちの人外魔境っぷりに慣れてしまっているのか、表情を崩すこともなく返事をすることができた。


「王子?僕がかい?僕はただの一騎士だよ。」


「おや?違いましたか。あなたの見た目も魔力反応も、あなたの先祖と瓜二つでしたので。」


普通こういった話の時は父親か、兄妹やせいぜい祖父母たちくらいとの比較だと思ったけど、以前あったことがあるというその先祖とやらは、果たして何代前の先祖のことを言っているのやら。


あるいはもしかしたら建国した勇者アガレス本人のことをさしているのかも・・・さすがに勘ぐりすぎだろうか。


ルルはこの国へは初めて来たと言っていた。常にずっと一緒にいる印象をこの姉妹に抱いていたのでリリムも初めてこの国に来たのだと思っていたが、実はこの国に来たことがあるのだろうか。何にせよ、王宮へ向かう大通りで話すようなことではない。


だが周りの人に聞かれた様子はなく、リリムも周りに聞かれないよう音の方向や距離を調整したのだろう。それは隠密としての技能のひとつである、僕自身も会得しているためそれほど不思議には思わなかった。


「そうだね・・・。まあ、ここでする話でもないだろう。せっかくだから王宮へ案内するよ。そこで、僕のことも話すし、色々と聞かせてほしいからね。」


「えぇ。私個人としては特に予定もありませんので。あぁ、ただ、途中で姉様を見つけたら少しばかり寄り道させていただきます。」


そう言ってこの話は終わりとして、二人でのんびりと歩き始めた。




「そういえば、王都だというのに、道があまり入り組んでいませんね。」


通常であれば王宮への道は攻め込まれた際に簡単に敵を近づかせないよう入り組んでいるはず。少なくとも私が見てきたいくつかの国はそのような作りになっていたし、その理由も利も理解できている。だからこそ、大通りを真っすぐ歩いていくだけで王宮へたどり着くことができるこの国はおかしい気がする。


「あぁ、アガレス王都はそもそも東西北を大山に囲まれているし、南には海が広がっている。最終防衛拠点はもちろん王宮ではあるんだけど、その遥か手前の段階で効率的に守備を固めることができているからね。」


確かにあの大山は一部の者にとってはともかく、軍隊を動かすとなると戦略上の通り道としては不適合極まりないだろう。だからといってこの道がまっすぐであることの理由としては弱い気もするが。


「アガレス王国は民こそ国の資本。それを思想に掲げていてね。王都内を敵兵士がうろうろするようなことになったら、その民に余計な被害が出てしまう。それならばさっさと王宮までたどり着いてもらって、王宮内を戦場にしたほうがいいという考え方なんだ。もちろん、それだけの精鋭騎士をそろえているけどね。他国へ攻め入った歴史こそないけれど、侵攻をそうやって何度も防いでいた歴史はあるし、事実アガレス騎士の強さは世界的にも頭一つ飛びぬけていると思う。贔屓目が無いとまではいえないけど。」


それだけの自信と実績があるということならば、まあ変わった作りではあるが理解はできる。この作りならば仮に魔物の侵攻があったとしても、目指すべき場所が明快で一本道であるため余計な被害は抑えることができるのだろう。もしかしたらそちらの方が目的としては大きいのかもしれない。


そんな話を、大通りを歩きながら堂々としているのだが、本来であれば私たちほどの美男美女が並んで歩いていれば、すれ違う人たちは自分たちに見惚れて振り返ったりしてしまうだろう。


だが、私たちに見惚れる人はおろか、今ここを歩いているということに気が付いている人もいないだろう。


姉様を見失った辺りから、グラさんは隠密の認識阻害の魔法を使用している。王子として活動したり城下町を歩くこともあるのだろうから、密偵として活動している現在は下手に見つかるとまずいのかもしれない。もっともそれなら王都に着く前くらいから使用していただろうし、単に話しかけられるのが面倒だから隠れているだけかもしれないが。


グラさんが私にも同じ魔法を掛けようとしてきたが、私も認識阻害の魔法は使用できるので、同じように自身に使用している。


「リリムは光属性が適正だと思っていたけど、隠密の魔法も使えるんだね。」


魔法というのは多種多様に存在するが、使用できるのは適正がある魔法だけ・・・というのが一般論だが、まあ1000年以上生きている私たちに今更そんな常識が通用するはずもない。


私は本格的に鍛え始めたのは実はまだ800年くらいなので、子供の頃から天才と称され、大人たちに混ざって研究・鍛錬を行ってきた姉様とは天と地ほどの実力差があるが、それでもグラさんの常識では測りきれない程度には強いつもりだ。


「君たちは、逆に使えない魔法とか、苦手なこととかはあるのかい?」


お互い沈黙が苦手ということもなく、黙って歩くだけでも問題ないのだが、仕事なのか生来の性分なのかグラさんは道中もこうやって質問をしてくる。内容もどちらかといえば自身の鍛錬のための質問という感じが多いので、姉様も私もちゃんと答えている。


「そうですね・・・。前にもお話しましたが、姉様も私も空間へ干渉する系統の魔法は苦手ですね。空間収納はなんとか最低限使用できるのですが容量が少ないですし、転移魔法に至っては発動したらどこに飛ばされるか分からないというのが現状です。」


収納魔法に関しては、その辺の冒険者を捕まえてきた方が容量の多い魔道具を持っている可能性が高い。転移魔法はそもそもこの旅を始めることになった原因の一つでもあり、特に苦手意識が強い。


他には幻影を作り出したり、姿を隠すような魔法も苦手だ。なので隠密行動をとる際は認識阻害と、魔力制御を行って魔力探知をされないようにするくらいしかできない。無音で歩いたりなどは技術としてできなくはないが完璧には程遠いうえに、魔法でないから気づかれる時はあっけなく気づかれてしまう。


そんな話をしている時にふと気になったことがあったので、グラさんに質問してみる。


「グラさんの使用できる魔法は隠密系統が中心と仰っていましたよね。迷宮や遺跡などには行かれたことはありますか?」


私たちが生まれるよりもさらに古い時代の人々か、あるいは神々が遺したとされる遺跡には、多くの罠と財宝が眠っていると噂されている。多くの冒険者や傭兵は一攫千金を目指し遺跡や迷宮の攻略に挑み、罠や魔物の前に散っていくか、浅い場所で素材を集めては売り払い金銭を得る日々を送っている。そして、世界ではまだ三か所の遺跡しか踏破されておらず、その遺跡を踏破した団体は英雄だなんだと崇められている。


「興味がないって訳じゃないし挑んでみたいという気持ちもあるけどね。忙しいし、立場的に死ぬわけにはいかないし、なにより、罠を感知できたところで魔物に勝てるかは別問題だからね。」


時折見せる、グラさんの自嘲気味な発言と笑い方には少しばかり違和感を覚える。私たちや竜神などと比べれば実力不足ではあるが、それでも優秀な冒険者と呼ばれている者たちよりかは強いと思う。


実戦経験が少ないが故に自信が持てないのか、あるいは別の理由があるのかは不明ではあるが、少し勿体ないとも思ってしまう。まだ数日共に過ごしただけではあるが、彼の眼や耳は既に私たちと同じくらいか、あるいは私たち以上に優秀かもしれない。戦闘能力に関しても、難易度の高い遺跡にでも挑まない限りは問題なく思える。


なんにせよグラさんが遺跡攻略に興味があるというのであれば、もしかしたら今後ともに挑むこともあるかもしれない。その時がくるまでには彼の自信の無さも払拭できているかもしれない。


そんな事を思いながら二人は王宮へとたどり着いた。

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こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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