56.土の竜神ガイム
※以前執筆していた作品の74話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「すまないな。あの転移魔法陣は竜神用に調整したもので、魔法抵抗力の低い者は飛ばされる位置がずれてしまうみたいだ。」
彼曰く、シールは丁度民家の目の前に、ルルはほんの少しだけ離れた位置に飛ばされたのだが、リリムと僕は二人に比べてかなり抵抗力が低いらしく、転移先がずれてしまったという。
少しばかり色黒なのは太陽に焼かれたからだろうか、健康的な肉体を持つこの人は米酒を飲みながら机の向かいに座っている僕たちに説明してくれた。
「改めて、俺は土の竜神ガイムだ。今はこの土地で色々研究をしている。といっても、食の竜神が残した料理本の研究だがな。」
神話の時代から生きているという彼は、同じく神話の時代より交流のあった食の竜神が残した物を再現しているらしい。中には手に入りにくい食材などもあるらしく、そういった物を自家栽培する研究も同時に行っているという。
ちなみにこの場所は、幻想世界ではないが普通の人は立ち入り出来ない特殊な場所らしく、ルルの持っている地図でも正確な場所は把握できていない。
「君たちが探しているミスフィは、風の子と共に川へ行っている。暫くすれば戻ってくるよ。」
ミスフィというのは霧の竜神の名らしく、彼の奥方だそうだ。竜神同士で結ばれることは珍しい話ではあるが、食の竜神も含めて三人とも幼馴染だったらしく、結婚してから竜神の名を得たらしい。
「私たちはここへ700年前に倒された竜神に関してお伺いしたく訪ねたのですが、ガイム殿は何かご存知ではありませんか?」
「さっき外の彼女にも同じことを聞かれたよ。何でも君たちが倒してくれたそうじゃないか。礼を言う。アレが暴れてしまっていては大変なことになったからね。」
すでにルルが同じ質問をしていたらしく、詳しい話は食後に改めて話すとだけ言われたので、これ以上深く聞くこともなく話題を変える。
「土魔法というと、人形生成や建築魔法の印象があるのですが、そういった類の研究はしていないのでしょうか?」
土魔法と聞いて、殆どの人が最初に思いつくのが、土を魔法で練り上げて家を作り上げたり、巨大な建造物を作る際に使う物だと考える。
あるいは土から作り上げた人形を使い魔のように使役する魔法だろうか?フェロンが使役していた蛇に比べて必要な魔力などが少なく、物理的に頑強な物になる分、戦闘力が足りないことが多いため、戦争などに用いることが難しい。
「もちろん昔はそういう研究もしていたさ。土から鉄を作り出す研究とかもね。まあ、でも、なんだ。適当に城やら遺跡やらを作ってみたんだがどうにもつまらなかったというか・・・。適正があったから極めてみたものの、正直飽きてしまってな。今はせいぜい旨い野菜がとれるような土壌作りとか、その程度しかしていない。」
むしろ今は友が残した料理の研究のほうが楽しいらしく、あまりにも多すぎるその内容は三百年ほど研究し続けてもまだまだ作っていない料理が沢山あるほどらしい。
ちなみにその食の竜神はどこにいったのかと訪ねれば、異世界へ旅立って新たな食を探しているらしく、どこで何をしているのかはまったくわからないそうだ。
「ミスフィの研究に関しては、ここへ来る前に砂漠を見かけただろう?あんな感じで、幻想世界をつくり出して現実世界と繋いでいってるそうだ。最初は砂漠しか作れないが、その土地を育てることで住みやすい土地になるとかなんとか・・・、まあその辺は興味があったら本人に聞いてくれ。」
現実世界の中にはどうしても作物が育たないような土地もあり、そこで生きていかざるを得ない生命もいる。
そういった者たちを救うために新たな世界を作る・・・というのが建前で、本音は自分が世界を作り出すとか神様みたいで面白いというのが理由らしい。
かたやただの料理研究家で、かたや神を目指しているという異色の竜神夫婦には、さすがのリリムも呆れているようで、先ほどから口がポカンと開いてしまっている。
少し時間も経ち、ルルとリリムがガイムさんの調理を手伝い始めたため手持ち無沙汰になってしまい家の外を散策し始めた。
ここから川まではそれなりに距離があるらしく、シールたちはいまだに帰ってきていない。もしかしたら魚を獲るのに苦戦しているのかもしれないが、気軽に手伝いに行ける距離でもないし、どうしたものかとふらふらしてたら、何もないはずの空間がわずかに歪んでいることに気が付いた。
「これは・・・隠し扉かな?霧の竜神が何かを隠しているのか・・・ふむ・・・。」
見たところ危険な罠が設置されている気配もなかったため、せっかくだし竜神に挑戦してみようと扉に触れてみたら、あっさりと扉が開き拍子抜けしてしまった。
どうやら隠してはあったものの、鍵がかかっていたわけでもないらしく、普通の扉のようにあいた先には余り大きくない空間にびっしりと本棚が詰まっており、その本棚も隙間が殆ど見当たらないほど埋め尽くされていた。
「何の本だろうか・・・!?えっ!?こ、これは・・・」
何気なく手に取った一冊をパラパラとめくってみてみれば、中には裸の女性やら下着姿の女性の絵が並んでおり、中には男性とまぐわっている絵まであった。
どうみても"そういう本"であるそれを見てしまい、思考が停止してしまう。恐らくは竜神の書庫であろうここに何故こんなものがあるのだろうか・・・。
他にも何冊か取って確認してみたが、やはり方向性は多少違えど同じような内容の本ばかりであった。中には転写機を使ったのか、実物と遜色ないような物まであり顔が火照っていくのを感じる。
そして、ふと視線を感じて入口のほうへ振り返れば、この土地の住人であろう人物が立っていたのだが、その見た目はシールよりも年下に見えるほど幼く、しかしながら出るところはしっかりと膨らんでいたりもしつつ、さらにはかなりきわどい水着を着ていたため思わず目を反らしてしまった。
「ややや!私の秘密基地に潜入できるとは!少年よ中々やりますねぇ!」
なんだか、面倒なことになる気しかせず、どうしたものかと頭を悩ませる・・・。
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