44.ウアル連合国の宝物庫
※以前執筆していた作品の62話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「いよいよ明日ね。何事もなければいいけど・・・。」
結婚式前日、王都はすっかりお祭りのような賑わいとなり、そこかしこで王子と新王女の話で賑わっている。
襲撃があるとすれば前日から当日にかけてではないかという各有識者たちの読みの下、王都周辺の南と西を私が、北と東をリリムが警戒網を張り巡らせ高台に待機している。
町中は現在グラとアルルで怪しい者がいないか探り、王城内はセインとノエルが目を光らせている。現状では問題ないが一瞬たりと気を抜くことが許されない。
「それにしても・・・随分と人使いの荒い王子様ね・・・。まさか私たちにこんな依頼をしてくるなんて・・・。」
数日前、新しくできた武器の具合を確かめるためにグラとアルルで模擬戦をしていた時のこと。ランドロー王子自ら私たちを呼び出し、決定した策を伝えてくれた。
「来賓の方々は前日までに王城入りしてもらい精査を受けてもらう。その後は前夜の祝賀会があり、当日は王都を巡った後、城内でまた祝賀会が開かれる。その間我が軍と護衛の方々は王城に集い、王城内のみの警護を行う。」
王都の守りを捨てるということだろうか?下手に兵士たちを配置すれば王都が戦場になりかねない。ならばいっそ王城で迎え撃とうというのはアガレス王国のやり方によく似ている。
だが決定的な違いがある。兵士一人一人の実力が違い過ぎる。数の優位が効くのは平地などの戦場であって、室内戦ではむしろ少数のほうが優位にたつことすらある。ウアル連合国の兵士たちではあまりにも無謀な策だと思う。
だが、続けてランドロー王子から伝えられた策は、策と言うにはあまりにも滅茶苦茶な内容だった。
「王都内に関しては前日の内に怪しい者がいないか洗っておく。そして式が終わるまでは誰も王都に出入りできないようにする。前日から当日まで王都内の守護と、王都周辺の警戒を君たちに一任したい。」
そういって私とリリムとシール君に目を合わせる。つまり私たち三人で王都内外の危険を全て排除しろというのだ。
「君たちの事情はレオナやグラセナ王子から大体聞いている。君たち三人ならその程度造作もないはずだ。もちろん報酬は出す。我が国にも王族専用の宝物庫を兼ねた書庫がある。そこへの出入り並びに倉庫内の物を好きなように使ってもらって構わない。」
つまり簡潔に言えば国宝を全てくれると言っているような物だが、問題はその中身を私たちが知らないということ。確かな約束として書類も用意してくれているが、中に私たちが求めるような物がなければそんなもの意味がない。
「もちろん、中に何があるかは伝える。いや、見せたほうが早いな。ついてきてくれ。」
椅子から立ち上がり私たちを引き連れ案内しだす。移動中グラに確認したところ、絶望の竜神の財宝があるかもしれないとのことらしく、この提案はグラがしたそうだ。
「ルルたちが探している物は、歴史上的には各英雄がそれぞれ持ち帰り、国宝として各国に保管されている。全てではないだろうがアガレス王国にもいくつかあるだろうし、この短剣とかを作る際に使われた魔石の宝玉もその財宝の一部だったらしい。」
「それはまた・・・随分と思い切ったことをしたのね・・・。もしかしてその宝玉を渡すことにした時点でこの策を案じていたんじゃないかしら?」
小声で話しをしていたが耳の良いアルルには聞こえたらしく、振り返って親指を立ててきた。それはつまり正解だという合図なのだろうか・・・。
「つまり、すでに国宝に手を出してしまっている以上断る訳にもいかない・・・ということね。」
こんな回りくどい根回しをされるくらいならいっそ真っすぐ依頼を出してもらったほうがまだマシだったかもしれない。
とはいえ、普通入れない場所に入れるということでシール君はワクワクしているし、リリムはリリムで特に難色を示してもいない。
私一人反対をしたところで二人の負担が増えるだけなら、何も言わずに頑張るしかないだろう。
「ここがその倉庫だ。一応入るときは報告をしてもらい、持ちだす物は記録を残しておきたいから伝えてほしい。」
そういって案内された場所は謁見の間にある王様用の椅子の後ろで、一見すると何もないただの壁沿いだったが、ランドロー王子が手をかざした途端、壁の一部が消え奥へと続く道が開けた。
「なるほど、血液に反応する魔法か。それで王族専用ってことなのね。おぉ!これは銀鉄・・・いや銀と鋼の合金!?これで剣作った方が良かったんじゃないの?」
中は想像以上に広くなっており、書物は棚に並び宝玉や合金、武器類は種類ごとに箱に纏められている。そしてそれを見てシール君が興奮しながらあっちこっちに移動し物を確認している。
「すごいわね・・・。これは空間魔法で作られた場所かしら?あきらかに広すぎるわよね・・・。」
城の大きさからしてもこれほどの広さの倉庫があるとは思えない。終わりが見えないほど広がっているようにも感じるこの場所の床や壁からは魔力の流れを感じ取れた。
「そうだね。アガレス王国の倉庫も似たような作りだし、古代にはこういう文化があったのかもしれないね。」
他国の王子が入り込むことはさすがのランドロー王子も若干躊躇ったが、今更グラを仲間外れにするというのなら私たちも一切協力しないと伝え、グラもノエルも共に入れて貰うことが出来た。
書物に関してはその殆どが古代の文字で書かれており、王子たちはまったく解読できていないそうだ。さすがのシール君も自分が生まれる遥か前の言葉には疎いようで、どんな内容なのかリリムが話しているのを聞きながらも、宝玉や武器の方に目移りしていた。
「当然と言えば当然なのだろうが・・・ルルもリリムも古代語を読めるのだな。シール殿は読めないようだが・・・。」
古代という言葉が示す年代は、話の内容によってまちまちだが、ここの書物に使われている言語は凡そ1000年から1800年前に使われていた文字で、その時代は一番熱心に研究をしていたので下手したら現代の言葉より理解できるかもしれない。
尤も、その当時誰が何を研究していたのかも大体把握していたため、というか人の研究所に忍び込んでは情報を盗み出していたため、これらの書物からは特別新たな知識というのは得られなかった。
「今の平均的な魔導士の実力を鑑みれば、これらの書物を解読してしまうと結構な騒ぎになりかねませんね。おとなしく眠らせておくことをお勧めします。」
リリムが今読んでいるのは、上級魔法を魔法具にする方法が記載されている。丁度リリムが影縫いを付与した技術などが細かく載っているため下手に解読してしまうと身の丈に合わない武器や道具を簡単に手に入れることが出来てしまう。まあすでにそんな武器を持っている人がここにいるのだけれども・・・。
「一先ずこの辺で一度引き上げるとしよう。それで、どうかな?引き受けてもらえないだろうか?」
一瞬、ランドロー王子が何を言っているのかわからなかったが、そういえば王都の守護を任されて、その報酬がこれだったなということを思い出した。
「僕は大賛成だね。2日王都を守るだけでこんな色々貰えるなら断る理由がないよ。僕の研究も進みそうだし。」
「私も問題ありません。私としてはこの牙には見覚えがあります。おそらくこれは絶望の竜神の牙・・・であるならばこれを頂くことが出来れば私たちの旅にも進展が生まれるでしょう。」
二人が文句なしに了承する。私はリリムと同じく牙が気になったがそれ以外は特別欲しい物もないため、適当に宝玉を頂くとだけ伝えて了承の返事をした。
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