41.レオナの恋愛観
※以前執筆していた作品の59話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「なるほど。アガレスでも魔物の大量出現があったのですね。」
ランドロー王子が言うにはウアル連合国内でも何か所か魔物の大量発生があったらしく、いずれもかなりの被害が出ているそうだ。
それもそのはずで、アガレス王国での事件は私たちが解決したがウアルにはそれほど超人じみた者はいないそうで、領軍も国軍もかなりの被害をだしながらなんとか退治できたらしい。
「一匹一匹は決して強い魔物ではないらしいのだが、とにかく数が多い。当然ながらこれほどの数の魔物など前代未聞の出来事で手を焼いている。何者かが人為的に起こしているのは間違いないんだけど、そこから先に進まなくてね。」
そんな国情が不安定な時に結婚式などしていていいのだろうかと思ったが、ランドロー王子としてはむしろあえて結婚式を行うことで、各国の有識者を集め対策を練りたいらしい。そして同時に、相手方がなんらかの動きを見せてくれれば儲けものという算段だそうだ。
「それに、アガレスからはノエル様が必ず来てくれると思っていたから、ノエル様を有効利用・・・おっと、信頼して託せば何か成果があがるんじゃないかなってね。」
「武力無き者が生き残るには周りを利用しろと教えたのは私ですからね。アガレスの剣神の誇りを賭けランドロー王子に有効利用されましょう。」
ノエルが大仰じみた動作で手を差し出しランドローへと向かう。そしてそれを笑いながら頼りにしていると手を差し伸べるランドロー王子。一応雇い主であるノエルが力を貸すというのなら、私たちもそれに従わざるを得ない。
一先ず策を練るにも何をするにも情報が無ければ何も始まらない。一応王族の方々にはノエルが来ていることを伝えてもらったが、基本的にノエルは今この国にいないことになっているため、ランドロー王子の下へ情報を集め、それをまた個室でノエルを含め私たちで考えるという状態になっている。
そして、私とリリムがレオナたちの護衛に、グラとシール君とノエルがランドロー王子の護衛に就いており、今はレオナの部屋でアルルとセインも含めて休んでいる。
「ちらほらと各国の人が集まっているのだが、どこの国も同じような状態らしい・・・。一体誰が何のためにこんなことをしているのだろうか・・・。」
「誰が、の部分は分からないけれど目的なら各国の軍事力を削るのが目的でしょうね。あえてそれほど強くない魔物を召喚して、一級冒険者が出てこないようにしつつ兵士の数を削っていくのが目的だと思うわ。」
そしてその先に待っているのは、国の乗っ取りか征服か。あるいは人類の滅亡でも狙っているのか。何にせよ穏やかな話ではない。
「怨嗟の声を貯めることで魔王を呼び出す・・・とか?」
アルルが読んだことのある本の中では、人々の怨嗟の声を糧として魔王が蘇り、世界を滅ぼそうとしたところを勇者が止めたらしい。
「魔王はそんなことで人に関わりに来るほど行動的ではないですね。アレは何というか・・・姉様と同類ですから。」
否定したいのだけれど、心当たりが多すぎて何も言い返せない。今代の魔王・・・魔族の王は常に何かを研究しているし、魔族の仲間内はともかくそれ以外の生命に興味を示したことなどないだろう。
何より、人に敵対するのなら私たちが黙っていないと脅してあるのだから、こういった件で味方になることはあっても、頼まれても敵として関わりにはこないだろう。
「ルル様たちって魔王と友達なんですか!?」
友達・・・それはないと思う。彼らは私たちのほうが悪魔だなんだと罵ってくるのだから友好的ではないだろう。
実験に協力してあげると言ったのに城が壊れただの土地が砕けただの山が消し飛んだだのといちいちぐちぐちと文句を言ってくるのだから・・・。
「ルル殿の交友関係はどうなっているんだ・・・。王子に魔王に、シールという少年は竜神だそうじゃないか・・・。」
魔王と竜神に並べられるグラがちょっと可哀そうだけれど、考えてみればどこかの王族と仲良くなったことなど一度もなかったし、私たちからすればグラが一番異質だなと思う。
「ま、まあそんな話はいいじゃない。それより、レオナとランドロー王子の出会いとかの方が聞きたいわ。」
「私たちの出会いか・・・。この国は異種族を奴隷にする貴族がちらほらといてな。そういった者たちから奴隷を開放するためにあれこれしていた時に出会ってな。ま、まああれだ。一目惚れって奴だな。人間にあれほど美しくかわいらしい男がいるとは思わなかった。そこからは何かある度に彼に報告するために会っていて、いつの間にかこうなったというわけだ。」
随分とかいつまんだ説明をされたが、まあ自分の恋愛話は気恥ずかしさがあるからあまり多く語りたくもないだろう。気になるのはむしろ種族差の部分などをどう思っているのかのほうが大きい。
「寿命はどうしようもないからな。それに、愛しているのだから今を共に生きることが出来ればそれでいい。間違いなく彼が先に逝くことになるだろうし、それは辛く思うが・・・先のことを憂いて愛すべき人と共に居れぬほうが辛いし後悔する。異種族の祖先はそうやって、刹那的に生きていたからこそ混血の者が生まれているのだろう。私もそうやって、刹那的にでも後悔のない人生を、愛する人と共に歩みたいと・・・思・・・。」
いつの間にか全員黙り込みじっとレオナの方を見つめている。そしてその視線に気が付き、自分が中々情熱的なことを話していたと気が付いたレオナが顔を真っ赤にしていた。
「ま、まああれだ。好きになってしまったものはしょうがないし、同じ時代に巡り合った今、彼を愛したいし彼に愛されたいと思うものだ!」
レオナ様可愛いと従者二人にからかわれ、狭い部屋の中で追いかけっこが始まってしまった。彼女たち三人もまたそれぞれ寿命が大きく異なる。アルルが一番先に逝くだろうし、逆にセインは殺されたり、生を諦めたりしない限り生き続ける種族だ。
だがそれでも、同じように愛し合って、今を共に生きていこうと誓いあって・・・だからこそ先の別れを憂いることがないのだろう・・・。
私たちの生には終わりが存在しないだろう・・・。全ての未来がいつか過去になり記憶の片隅にすら残らない・・・。だからこそ誰かと共にいることを諦めた私たちとは真逆のようで、彼女たちがとても眩しかった・・・。
或いは、どれほど先でも終わりが来ると分かっているからこその考え方、生き方なのかもしれない。どちらにしても私たちにはできないことだ・・・。
どれほど人を愛しても、いつかそれが記憶から零れ落ちる。深く深く愛したのに顔も名前も思い出せなくなってしまう時がいつか来る・・・。それが・・・とても怖い・・・。
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