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37.道中の教導 ルルの能力

※以前執筆していた作品の54話~55話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「それでは出発いたします。本日中に王都にたどり着くため、少々早めの行軍となります。」


馬車に乗り込み、スーレ領の騎馬部隊の一人にそう説明され困惑しながらも頷いた。ここから王都までは結構な距離があるのだが、現在乗っている馬車はここへ来る前に、アガレス王都からレゾンを目指した時の馬車と馬によく似ている。多少の違いはあれどこの馬車も特別性なものだろう。


馬車は7人を乗せているにも関わらずかなりの速度で進行していく。そしてその前後両脇を囲い守るように騎馬隊が列を成している。


道中も魔物などは出るらしいのだが、この速度についてこれるような魔物はこのあたりにはいないだろう。


道中は特にやることもなく、ルルと犬の女の子との会話に皆耳を傾けている。アルルというこの少女はルルにとても憧れているらしく、常に興奮気味に話しかけているアルルに対して、ルルはやや引き気味だがしっかりと質問に答えていった。


「じゃあ1年間も土の中で過ごして土地を耕していたんですか!?」


話はルル達が転移に失敗したときの話だったが、以前聞いていた内容と少し食い違っている。


転移魔法にルルが失敗して土の中に飛ばされ魔力の殆どを失った結果1年近く冬眠するはめになったと聞いていたのだが、絶望の竜神が死の間際に転移魔法を放ちルル達を飛ばしたことになっていたり、その土地がやせ細っていたため土の中から耕していたことになっている。


どちらが本当なのかとルルの方を見ていたら視線が合い、ばつが悪そうにすぐに視線を逸らされた。どうやら彼女たちの理想像を壊すまいと少しばかり嘘をついているようだ。


他にも、大津波を凍らせてせき止めたとか、村が丸ごと燃え盛ってしまった時に村人全員の命を救い、怪我を癒した話など色々していた。


「ちなみに大津波を止めたのは浜辺で眠っていた時に巻き込まれて溺れかけた際に無理やり脱出するためですし、村が燃えたのは姉様が実験に失敗して廃村を消失させただけです。さらに言うと、その時助けられたのは巻き込まれた私だけです。」


ルルの話がどこまで本当なのか半信半疑で聞いていた所、リリムから真実を教えてもらったので、いつぞやの仕返しとばかりににやつきながらルルを見ていたら少しばかり顔を赤くして話題を変えるのに必死になりはじめた。


「そ、そういえばアルルは魔導士になりたいって言っていたわよね?」


「は、はい!でも私あんまり魔法は使えないんです・・・」


魔法というのは正しい術式を理解して組み立て魔力を流すことで発動する。それが上手く使えない原因は術式の理解が足りないか魔力を流すことが出来ていないのか魔力そのものが無いかのどれかだ。


「あなたの場合、魔力は十分足りているのだけれど、術式への理解が足りていないのと、魔力を上手く流し込めていないのが原因ね。術式への理解は勉強すればいいし、魔力の流し方は今教えてあげるわ。」


そういってルルはアルルの両手を取り何かをしている。見た感じではわからないが今の会話から察するに魔力の流し方を教えているのだろう。


「アルルは私が教えてもどうにもならなかったのだが、ルル殿ならそれが出来るというのか。」


関心したようにレオナが呟くが、魔力の流し方は教えるのも理解するのも難しく、僕も母上の英才教育をもってしてどうにか習得出来たほどだ。大抵の者はそこで挫折し魔法を使うのを諦めるのだが・・・。


「魔力の流し方は感覚でしかないから、言葉での説明は難しいのよね。ただ、一度覚えてしまえばどんな魔法も基本は同じだからすぐに色々出来るようになるわ。」


ルルが手を放しそう伝えると、アルルは手を見つめ何度か閉じたり開いたりを繰り返した後、外に手を出して魔法を放とうとする。そして"えいっ"という掛け声と共に炎弾が放たれ地面に着弾した。


後ろを走っていた騎兵が驚き少しばかり隊列を乱したがすぐに修正した。なかなか鍛え上げられている兵のようでそこに関心していたが、ふと考えれば草が生い茂るこの草原に炎弾など打てば火事になってしまうと思い着弾点の方を見たが、一切燃えている様子はなかった。


だが燃え盛る大地を見るよりも信じられないような光景が目に映り、慣れていない異種族三人は唖然としていた。


「中々見事な炎弾でした。あとは術式と戦術を勉強していけば立派な魔導士になれると思います。」


何事もなかったかのように淡々と伝えるリリムだが、彼女はその直前まで馬車の中にいなかった。


炎弾が放たれると同時に馬車から飛び降り、着弾点に先回りし着弾と同時に消火を行い、そして馬車の中へ走って戻ってきた。


いや、走って戻ってきたというのは少し違うか。地面を蹴り上げ飛び跳ねるようなその走りは、馬よりも遥かに早くルルが中で止めてくれなければその勢いで馬車が大破してしまっていたのではないかと思うほどだった。


「ルル様も凄いけど・・・リリム様も凄いのですね・・・」


そんな感想を天馬の純血種だというセインが呟いている。あれを凄いの一言で済ませるとは存外大物なのかもしれない。


「これで~私も~ルル様と同じ~魔法使い~♪」


初めて思い通りの魔法が使えたことが嬉しかったらしく、アルルはご機嫌に鼻歌まで歌い出した。そして次はセインが同じように手ほどきを受けている。


セインの場合は適正の無い魔法を無理に使おうとしてしまっているがために上手くいっていないらしい。


純血種の場合適正の有無による得手不得手が人間よりも顕著に表れるそうで、セインにはレオナが教えることのできた魔法、炎や氷の魔法に関して適正が殆どなく、風魔法と雷魔法に適正があるとのことだった。


風魔法に関してはシールも教育に参加しており、道中だけでいくつか魔法を使えるようになっていた。













「それにしても、ルル殿は素晴らしいな。自らが強いだけでなくこうして教育を施すことまで出来るとは。」


ルルほどの人外まではいなくても、それなりに実力を持った者なら世界中にいる。だがその殆どは誰かに教える技術があるわけではないので、魔導士を目指すなら良き師に恵まれることが最も重要なことだろう。


レオナもその一人で、自分では強くないと言っているが2種の属性を持つ精霊族が弱い訳もなく、どちらかと言えば経験不足の面が大きいのではないかと思う。


そして彼女も人に教えるのは苦手らしく、これまで何度となく教育に挑んだが成果が出なかったそうだ。


「そういえば、ルル様の適正ってなんなんですか?」


純真無垢なアルルが質問するが、その質問にルルとリリムは一瞬顔をしかめたように見えた。


適正というのは言ってしまえばその人の得意魔法が何かという話でもあり、それが知られてしまえば対策も取られやすいのであまり他言しないのが普通なのだが、この二人にそんな常識など通じるものではないだろう。だからこそ、二人が言いよどんだ理由がわからなかった。


「私は・・・そうね、夢を壊してしまうようで申し訳ないのだけれど、ほぼ全ての魔法に関して適正が無いわ。最初に覚えたのは炎魔法だったから炎魔法なら多少は覚えがあるけど、それ以外で言うなら、知識面でならともかく技術的に私にしか使えない魔法というのは1つしかないわ。」


その一つが、アルルや母上に使った"導き"の魔法らしい。ルルが独自に開発したその魔法は、被術者の才覚を見抜き引き出すという物らしい。


そしてこの魔法を習得し自らに使った結果何も才覚がないことが判明してしまったということだった。


「私とあなたたちの差は、赤ん坊と大人の差と同じで、才能の差ではなく時間の差でしかないのよ。私にとってはそれが唯一にして絶対の差だけど、同じだけの時間を鍛錬に費やした人には勝てないと思うわ。」


「まあルル姉は狂気的なほどの研究者だし、殆どの時間を鍛錬とか研究に使ってるらしいから、神話の時代から生きている人でも無いと超えられないんじゃないかな・・・。」


ルルの発言に対してシールが呆れながらそんなことを話している。逆にリリムは意外と怠け者のきらいがあるようで、適当に休んでいたら気が付いたら姉ととんでもない差が出来てしまっていたとのことだ。


「次に研究したいことも決まっているのだけれど・・・それをするために探しているものがあってね。七百年前の財宝が見つからない限りは先に進めないのよね。」


その探しているものが七百年前の財宝なのだろう。彼女が次にする研究に関しては以前少し聞いたことがある。


といっても、単にすごい素材からすごい武器を作ってみたいというだけだそうでその財宝でなくても、例えば竜神の牙とか心臓でもいいとシールやエリアスを見て呟き戦慄させていたのを覚えている。


「なるほど・・・だが七百年前にルル殿が倒した物の財宝なら、各国の国宝として伝えられているのではないだろうか?各英雄たちは財宝を持ち帰ったことで英雄として認められた部分もあると聞くが・・・。」


レオナの疑問にルルもリリムも口をぽかんと開いていた。どうやらその可能性は思ってもみなかったことのようで、今まで一度も確認したことがなかったらしい。


「姉様・・・これは・・・どうしましょう。アガレス王国とウァレフォルの集落を攻め滅ぼして探し出しますか?」


「止めてくれ・・・。二人を相手にして我が軍が戦える訳がないだろう・・・。滅ぶくらいなら国宝の一つや二つ明け渡すよう陛下に進言してみる。」


正体がバレないよう静かにしていたノエル様だったが、さすがにリリムの発言は看過できなかったらしく、レオナ達に聞こえないようにリリムの耳元で呟いていた。


「ねえグラ・・・。あなたの権力でなんとかならないかしら?」


今度はルルが耳元で囁く。息がこそばゆいし何かいい匂いがしたり柔らかかったりしたが、その期待に応えられるほどの力は持ち合わせていないし、何があるのかすら、本当にそんなものがあるのかすら知らないから確約はできない。


「まあ・・・僕なりに協力できることは協力するよ。」

いいねやレビュー・感想など頂けると非常に励みになります。


一言二言でも頂けるとありがたいので是非ともよろしくお願いいたします。


こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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