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34.隠れ民家での出会い

※以前執筆していた作品の50話~51話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「さてリリム、私たちがどこに向かうか分かっているかしら?」


「もちろん分かっています。」


領主亭に招かれることになったグラたちと別れた際に、私たちは情報収集に向かうとだけ伝えておいた。おそらくグラとノエルは食べ歩きでもしてくるのだと思っていることだろう。


まあ事実として食べ物を購入して収納魔法に仕舞っておいたりしているのだけど、目的はそれだけではない。この漁師町に入ってからずっと感じている異質の気配。賑わっている通りから外れた場所から感じるその気配は、こちらからも魔力反応隠さずにを出してみると、さっきまでより強く感じられるようになった。


「人目の少ない場所ですね。戦闘狂でもいるのでしょうか?」


わざと強者を誘い出して闘いを挑む者もいるにはいるけど、今感じているのはそういったものとは違う感じがする。


気配の漂わせ方が無差別に、誰かに気づいてもらうためだけのようにも感じるし、何より弱っているような印象を受ける。


「どちらかというと、強者が間違って奴隷商にでも捕まってしまって、助けを求めているような感じがするわね。」


「強者が奴隷商に捕まるなんてことがあるのでしょうか?あぁ、いえ、そうですね。有り得ますね。例えば食い倒れて眠りこけてしまっていたりしたら。」


誰のことを言っているのか分からないが、半目になってこちらを見てくるリリムを無視して気配の出どころを探る。


そして辿り着いた所は、見た目はなんの変哲もない普通の民家のような場所だった。だが周りは木に囲われ、家自体に姿隠しの魔法が掛けられている時点で明らかに異質な家だ。


「さて、潜入捜査は苦手なのだけれど、頑張りましょう。」













「レオナ様ぁ・・・私たちどうなっちゃうんでしょうか・・・。」


室内に弱弱しい声が響く。巻き込んでしまったのは申し訳ないが、そのような声を出されても現状は何も変わらない。だからこそ、余計な体力は使わずに待つしかない。


「女ばかり集めて売り飛ばす先なんて、どこだろうとヤバい奴らしかいないでしょ・・・。奴隷として生きていられるならまだマシだけど、変な趣味した奴に買われたりしたらすぐに死んでしまうでしょうね・・・。」


「やだぁ・・・私まだ死にたくないよぉ・・・。」


二人が捕まってしまったのは私のせいだ。私がもっと早くに敵に気が付くことができていれば、こんなことにはならなかったはずだ。


だがそれも、彼女の鼻と耳ですら感知できないような相手を見つけることなど叶うはずもなく、私たち三人は捕まってしまった。


閉じ込められた狭い檻は鋼鉄でできているから、力づくでの突破は不可能だ。ご丁寧に魔力封じの首輪に腕輪に、足枷まで付けられているため、魔法など何も使えなくなっている。


「それでも・・・大丈夫。希望はまだある。私の気配に気が付いた人が近くまで来ている・・・。」


「見つけられる訳ないですよ・・・。アルルの耳も鼻も、私の翼も、何も感知できなかったんですよ?レオナ様の気配を追ったところで、近づくだけで結局どっか行っちゃいますって・・・。」


暗くて表情は見えないが、涙を流して項垂れているであろうアルルと、諦めて項垂れているであろうセインに向けて励ましの言葉を送り続ける。


捕まってから既に三日経っている。飲まず食わずで放置されてしまっていては、どこかに売り飛ばされる前に飢えて死んでしまう可能性もある。


だからこそ、この近づいてくる気配の人に賭けるしかない。もしこの人たちが気付かずにどこかへと行ってしまったら、その時はこの命を贄とし、せめて彼女たちだけでも救おうと心に誓う。













「んー・・・取り合えず全員倒してみたはいいけど、どうしようかしら?」


民家の中へと入り、とりあえずこちらへ敵意を持っていた者は全員倒して捕縛してみたものの、彼らが一体何者でここで何をしているのか分かる証拠が何も見つかっていない。


「これだけ念入りに隠していたのですから違法なことをしていたとは思いますが、証拠どころか何も情報が無い状態で踏み込んだのは勇み足でしたかね。」


現状このままだと私たちのしていることは強盗と何ら変わりがない。不思議な気配を追って不思議な民家に入り込んではいいものの、コソコソと調べるのが一瞬で面倒になってしまった。


そして気の向くままに行動してしまったため、万が一この民家が何も問題なかった場合はこちらが罪人になるし、国が管理している施設とかだったら国際手配されてしまうかもしれない。


「と、とりあえず何かないか探してみましょう。ほ、ほら、この扉の奥から私たちが感じていた気配もするし・・・。」


呆れ顔のリリムを後目に、隠蔽の魔法と強固な鍵が厳重に掛けられた扉を破壊して中へと入ってみる。


鍵だけ壊せばいいのではないかというリリムの言葉は聞こえないふりをした。













「なんか・・・屋敷の中が騒がしいよ?もしかして助けが来たのかな?」


アルルの耳が屋敷内の喧騒を捉えたらしい。よく耳を澄ませば確かに僅かだが物音が聞こえる。だが、助けが来たといっても、助かるかはまだ分からない。


そもそも、例え隠密の魔法に長けた者たちとは言え、私たちが成す術なく捕まったのだから、相当の実力を持った者たちが相手だろう。


ただ強いだけでは敵を突破することはできず敗北してしまうだろうし、仮に勝てたとしても、協力な隠蔽魔法で隠されているらしいこの部屋を見つけ出すのは難しいだろう。


だがそれでも、期待せずにはいられない。両手を腕の前で組み、助かるように祈る。


そして、この部屋を塞いでいた扉が勢いよく破壊されるのが見えた。


「な!?何!?何が起きたの!?」


「と、扉が・・・壊れた・・・?」


アルルもセインも現状に理解が追い付いていない。そしてそれは私も同じだ。


扉を破壊し現れたのは金髪の女性が二人。顔はまだよく見えないがスカートを履いていることと、胸に膨らみが見えることから女性であるとみていいだろう。


そして、この二人が果たして味方なのか敵なのかはまだ判断がつかないため、迂闊なことを言えない・・・のだが、アルルが涙声で二人に声を掛けてしまった。


「うわああああん!助かったんだ!私たちを助けてええええ!」













「ほら!見なさいリリム!悪事の証拠があったわ!これで問題ないわ!」


自分たちが罪人にならずに済んだと姉様は喜んでいるが、違法な手段で捕まったであろう奴隷らしき者たちを見て、最初に言う言葉がそれでいいのだろうか?


世界にはしっかりとした法令整備の下で奴隷の売買を行っている国もある。行き倒れ、死ぬしか選択肢がないような者を救う術として奴隷商売が黙認されている国や地域をいくつか知っている。


この国やこの領がそういった地域に該当するかは不明だが、少なくともここに捕まっている者たちを攫った者は悪であると、違法商売をしていると判断していいだろう。


ならばやるべきことは、この三人を解放して事情を聴くことだろう。必要であれば領主にも報告しなければならない。


「檻から少し離れてください。今、開けますので。」


「は?鋼鉄の檻をどうや・・・てぇ!?」


右手に魔力を乗せて左脇から居合切りのように一閃する。鋼鉄に多少の魔力強化を行った程度の檻を切るのは容易いのだが、先に説明してあげたほうがよかったかもしれない。


「向かいの部屋で私の姉が話し合いの場を設けるために整えています。あなたたちが抵抗する意思がないのであればそちらへ向かってください。」


姉様は部屋の中を確認した後、救出は私に任せて彼女たちから話を聞くための場を整えにいった。話し合いは姉様の方が得意で荒事は私の方が得意なので役割分担をしている。


「て、抵抗しようとしたらどうなるの・・・?」


涙目で訪ねてきた彼女は人の話を聞いていなかったのか、檻にしがみつくようにして震えている。仕方なく残りの一人の方から助け出し、最後に彼女の檻を縦に切り落としてから聞こえるように呟く。


「あなたの体は、この檻よりも切りやすそうですね。」


途端、彼女は慌てて走り出して転んでしまったが、四つん這いになってバタバタと音を立てながら向かいの部屋へと入っていった。


「・・・少し、脅かしすぎましたかね?」

いいねやレビュー・感想など頂けると非常に励みになります。


一言二言でも頂けるとありがたいので是非ともよろしくお願いいたします。


こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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