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17.封印されし神具

※以前執筆していた作品の31話~32話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。

「あと目ぼしい物はこの魔剣くらいかな?魔法陣が刻まれているみたいだけど、なんの魔法だろうか?」


制御室に入って一番最初に手にした魔剣には宝玉が埋め込まれており、最初はただ宝玉が付いた儀式用の剣かと思ったが、よく見てみると宝玉の部分が魔道具になっていた。


魔法の解読に必要なのは結局知識であり魔法に対する理解力であるため、何かがあることを見抜く力は持っていても、それが何かを識別するだけの知識がないため取り合えず持ち上げて何度か振ってみたが特になにも起きなかった。


「あ、なんかそっちに落ちてた剣と形が似てるね。ほら、宝玉が赤いか青いかの違いだけっぽいし、これも何かの信号を送るものなんじゃない?」


相変わらず虹色に輝く髪をしているシールが別の剣を持ってきて見比べている。見た感じだと剣の部分は魔道具に何も干渉しておらず両方ともただの剣だ。


信号を送るというのであれば、例えば戦場で離ればなれになっても連絡を取り合うことができるとか、何か有効な戦術があるのだろうか?そのために剣に付けているとか。


だが、一緒に見ていたリリムは先ほどまでと違い真剣に宝玉を見ている。その表情や解読に掛かる時間から察するによほど難しい魔法が付与されているのだろう。


「これは・・・なるほど・・・シール君。そちらの青い宝玉が付いている剣を持ってこの広場にいてください。」


そういってリリムは赤い宝玉が付いた剣を持ち出し、広間から外へと出て行ってしまった。その数分後、こんどはシールの持っている青い宝玉が光ったかと思うと、目の前に魔法陣が展開されリリムが突然現れた。


「やはり、これは赤い宝玉の魔剣に魔力を流すことで、青の宝玉の魔剣の所まで転移できるようです。しかも魔力消費もわずかで、術者以外に三人までなら共に転移できるようです。」


「おぉ!・・・ん?それってそんなに目を輝かせて説明するほどのことなの?」


シールの疑問は確かにそうかもしれない。少しばかり興奮して説明するリリムには申し訳ないが、そこまで興奮するほどのものとは思えない。


転移魔法の魔力消費が少ないことや複数人で転移できるなどは確かに便利だし、転移魔法が苦手なこの姉妹や、そもそも使えない人なんかには有用かもしれないけど、例えばアガレス王家の者なら全員転移魔法が使用できる。


「んー・・・普通に転移魔法を使うより便利っていうなら、戦場とかで有効活用できるってことなのかな?でも、起動はそこまで早くないみたいだし、どうなんだろう。僕は自分でできるし。」


確かに自分で転移魔法を使用することができるのであれば、わざわざこの魔剣を使用する必要はないのかもしれない。長距離を移動しようと思ったらかなりの魔力が必要になるが、竜神であるシールならばその問題もない。


「ふむ。転移後のみを見せたのがよくなかったですね。今度はこの広間の端から端までを転移してみせます。シール君はあちらのほうへ。」


シールに奥側の壁へ向かうように指示を出し、リリムは反対側へと移動してから魔剣の転移魔法を起動させた。


「あぁ、なるほど。起動が恐ろしく早い上に気配が微塵も感じられない。」


「本当に一瞬で転移したね・・・。これは確かに興奮するのも頷けるかも。」


リリムが合図を出したのを認識した時点ですでにシールのところに転移していただけでなく、魔力の流れも起動の気配も、音も何もなく消失したと言えるくらい一瞬だった。


「距離に関しては解読しきれずどこまでが有効範囲なのかはわかりませんでしたが、虚を突くにしても逃げるにしても、これほど有用なものはありませんね。」


だがそれでも、何故剣に装着する形にしたのかだけは不明のままだった。冒険者が持っていても不思議に思われないようにするためだろうと一先ず結論付けた。




その後もそれなりに貯めこまれていた金貨などを山分けしていた時、突然ルルが制御室から飛び出して出口を目指して走り去ろうとしていた。


リリムが慌てて赤い宝玉のついた魔剣を渡し、一瞬で解読したのか、すぐ戻ってくるとだけ言い残してルルが広間から出て行ってしまった。


かと思えば、数分で魔剣の転移魔法を使い広間に戻ってきたルルは、先ほどのリリム以上に興奮した様子で、一辺がルルの肩幅ほどある正方形の紙を見せてきた。


「中々とんでもないものが眠っていたわ!これを見て!」


「これは・・・世界地図ですか?」


描かれている物は茶色だったり青だったり緑だったりと、様々な色で着色されており、パッと見た感じだと何が何だか分からなかったが、リリムの一言で何が描かれているのか理解できた。


だが、どこがとんでもないものだというのだろうか?確かに古代遺跡にこれほど着色された地図があるのは珍しいのかもしれない。というか、世界的に見ても中々ないだろう。だが、それがどうすごいのかが伝わってこない。


「この遺跡の設計図を眺めていたら、グラが感知した部屋の一つが記されていないことに気が付いたのよ。その部屋は制御室で正しい魔法式を打ち込むことで隠し扉が開くようになっていて、ちょっと解読に苦労したけど何とか扉を開けて隠し部屋に行ったら、まあすごい物が隠されていたわ!特にこの地図よ!」


そういってルルは一緒に持ってきた物を広げ始めた。微妙に形の違う指輪が三つあり、水中で呼吸ができるようになる指輪、自動的に魔法を防御する障壁を展開する指輪、自動的に物理的な攻撃を防御する結界を張る物と、分かりやすく強力な魔道具だ。


少し大きめの盾も持ってきており、触れた物を魔法だろうと人だろうと跳ね返し飛ばす魔法陣が刻まれているらしい。


そして視界を良好な状態に保ったままでいることができる特殊な形をした眼鏡もあった。普通の眼鏡と違い、目全体を隙間なく覆ってくれる作りになっており、そこに水圧で潰されないようにする魔法陣が刻まれている。


盾と地図はわからないが、残りの魔道具は水中を探索するのにとても便利な魔道具で、深海探索を目的に作られたものだろう。


「もう!そっちも凄いかもしれないけど、同じ効果を得る魔法を使えばいいだけでしょ!こっちの地図なのよ!地図!」


「確かに色鮮やかな地図ですが・・・魔力が蓄積されているのを感じますね。ということは、この地図は魔道具ということですか?」


「んー・・・色付きの世界地図ってすっごい珍しい物だけど、魔道具って言われても・・・劣化しないとかなのかな?なんか古代の秘宝という割に地味だから違うか。」


地図が魔道具と言われたら確かに劣化しない魔法が刻まれているとかそういうものだと思ったが、それならルルがここまで興奮している理由にならない。


「ふふ、見ててね。まず一つ目。こうやって地図に掛かれた所に触れると・・・ほら!」


四人で地図をのぞき込みルルが触れた途端、触れた所が拡大され、さらに地名や簡単な説明文のような物が表示された。


「これはね、こうやって触れることで触れた所の町とか国の説明が出るのよ。それと二つ目はこれね。内側から外側に引っ張るような感じで触れると拡大ができるし、逆にすれば縮小するわ。」


「おぉ!面白いね!アガレスは何て書いてあるのかな?」


シールが触れたのはアガレス王都にある王宮で、"大陸の魔を滅ぼした英雄アガレスによって開拓された土地。東西北を神山に囲まれた王都"と表示された。


「おや?どうやら表示される情報は一般的な教本などに記載されている内容のようですね。」


ルルやリリムが知っているアガレス建国の歴史とは少し違うらしいが、気にするほどでもないようでそれ以上は話題にせず別の場所に触れていた。


「えーっと・・・ウアル連合王国・・・元々独立した小国の集まりだったが、英雄ウアルによって一国家に束ねられた・・・なるほど。確かに歴史書とかで見たことある内容だね。」


「竜神の遺跡なんて物まである・・・神話時代の遺跡。神が世界を創造し支配していた時代に、世界中の竜神が集まり神を自らと共に封印した遺跡・・・とんでもないものがあるな。」


地図の端の方にある祠らしきところに触れてみたら神話時代の遺跡という情報まで手に入ってしまった。


「おそらくだけど、どこかの書庫とこの地図が繋がっていて、そこにある書物から説明文を取ってきているのだと思うわ。だから、その書庫に正確な情報が無ければおとぎ話みたいな表記になってしまうんじゃないかしら。」


なるほど、一体どんな技術を使っているのか、どこの書庫と繋がっているのか全く分からないが、この世界にある書庫だというのなら一度見てみたいものだ。


仮に中の書物が失われたらこの説明文も消えるのだろうか?などと考えていた時、ふと、何かが引っかかるような感覚が脳裏を襲った。そして考え込んでいるとルルが悪戯っぽい笑みを浮かべて話始めた。


「グラに一ついいことを教えてあげるわ。制御室の中にはこの遺跡に誰がいつ入ってきたのか、日付と一緒に記録が残されていたわ。一番新しいのは当然私たちなのだけど、その前の人が最後に訪れたのがおよそ1200年前。間違いなく古代に生きていた者が最後。つまり、この地図はそれより前に作成されて封印されていたことになるわ。」


「ほえー・・・すっげー・・・そんな昔にこんな色付きの地図作れるなんて・・・しかも面白い機能までついてるし、古代の失われた技術って奴はすごいねぇ。」


そんな呑気な感想をシールが述べているが、それが本当なら・・・本当にこの地図がそれほど昔に作成されたのだとしたら、恐ろしいことがある。


「・・・ルルが目を輝かせるのも分かった気がするよ・・・。シール、ウアルが連合国となったのはおよそ400年前、それ以前にウアル連合国なんてものは存在しないし、英雄ウアルも当然生まれていない。」


「そう!つまり、この地図は・・・」


「未来予知できる人が作ったってこと!?」


シールの絶妙に的外れな答えに思わずずっこけてしまった。もし未来予知して作られたならそれはそれで凄いことだが、そういうことではない。


「シール君、この地図は"生きている"のです。そしてこの地図と繋がっている書庫も同じく。時代が変わり、名前も形も変わっていく世界の記録を残すのであれば、その都度世界地図を作成し直さなければなりません。なのにこの地図はその作り直しを自動で行っている。ということですよね?」


ルルに確認を取るようにリリムが訪ね、小さくうなずいた後に地図を上に掲げ、感慨深そうに呟いた。


「人の技術でこんな物作るなんて不可能だわ・・・。空よりももっと高い場所から世界を観察し続けて、戦争の跡地や噴火して形の変わった山なんかも細かく描かれ続けているなんて・・・。まるで神の所業・・・神話の地図とでも言おうかしら。」


根っからの研究者であるルルにとって、神話の魔道具への興味は尋常ではないらしく、そんな物を手にしたら数百年は引きこもって研究し出す可能性があるとリリムがぼやいているが、ルルはそんなリリムを見て同じような表情でぼやいた。


「世界が滅びるまで研究し続けたとしても、こんなの少しも理解できないわね・・・。だから、引きこもりはしないわよ。」


どうやら引きこもっての研究はしないらしい。

いいねやレビュー・感想など頂けると非常に励みになります。


一言二言でも頂けるとありがたいので是非ともよろしくお願いいたします。


こちらのURLが元々の作品となっており、ある程度まで進んでいるので続きが気になる方はこちらもご覧ください。


https://ncode.syosetu.com/n2977fk/

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