13.遺跡の種類
※以前執筆していた作品の26話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「さて、遺跡攻略の話を始める前に、そもそも遺跡とは何なのかというところから説明するわね。」
宿に戻って打ち合わせを開始しようとしたのだが、遺跡の種類などによって対応方法を変えるため、まずはその特徴を知らないといけないということで、僕とシールが生徒となって教わっていく。
「古代遺跡と言ってもその種類はいくつかあるわ。まず、一番厄介なのが神話の時代から遺っている遺跡ね。これは今の戦力じゃ手に負えないから周辺の土地ごと纏めて封印するわ。」
ルルたちが生まれるよりもさらに遥か昔、地上に神がいた時代から遺された物は奇跡なんて生易しいものじゃないくらいの力を持っている。攻略するには全ての竜神が集まり力を合わせて、やっとどうにかなる可能性があるという程度だと説明された。
ルル達も以前何度か挑んだことがあるらしいが、二人だけだと入り口に入ることすらできなかったそうだ。
「それと、何かの研究所だった場合、これは入り口から制御室までの距離はそれほど長くないのだけれど、危険な研究をしていた場合は封印する必要があるわね。」
神話の遺産に比べて、過去の研究室には資料が残っていた場合再現することも可能になってしまうので、攻略者に対してというよりかは世界に対しての危険性が高い場合があるらしい。
善良な研究者が遺した遺跡の可能性はないのかと尋ねれば、そういった研究所はちゃんと歴史に残っているようで、歴史から消えた研究というのはつまり、そういうことのようだ。
「ちなみにそういった研究所は壁に魔力網が張られていて、破壊などに対して凄まじい耐久力を持っています。周辺への被害無しで破壊することは不可能と言えるでしょう。なので今回は絶対に破壊という選択肢は取りません。」
「それはここに住んでいる人のためだよね?私欲のためじゃないよね?」
一応、破壊すること自体は不可能ではないようだが、ルルが本気を出さないといけないということなので全力で却下した。ルルは仮にリリムと敵対したとしても、真剣には闘うが本気を出さなくても勝てるというくらいらしいので、逆に本気で闘うところを見てみたい気もするが・・・。
「一番楽なのは避暑地であったり休息地、つまりは別荘のような目的として建てられた場合ね。これは危険度が一番低くて、せいぜい中の魔力濃度次第で魔物が出てくる程度だから問題ないのだけど、今回は残念ながら違うと思うわ。」
立地的にあの遺跡が避暑地ということはなさそうだし、リュフカの町が出来たのはそこまで昔でもないので観光地のために作られたということもないだろう。
「可能性が一番あるのは制御室に何かが封印されているような、いうなれば神殿のような役割を持っているような遺跡の場合ね。道具だったり武器だったり色々とあるけれど、まあ冒険者が挑む遺跡と言われて一番最初に思いつく種類よね。」
おとぎ話の中では邪神が封印されているだとか、英雄の剣が封印されているような遺跡のことで、大抵は戦場などで活躍した者の武器や防具などが悪用されないように封印するために建てられた物だという。
この場合、正しい手順で罠を解除することで最深部まで到達できるようになっているとか、王家の封印のように特殊な血を引いている者だけが入ることができるようになっているなど、条件が厳しい所ほど性能の高い物が封印されているので、誰でも入ることができるのであればそこそこ程度の物が殆どだそうだ。
「それと最後に・・・建設者の趣味で作られた遺跡ね。大きく分けてこの5つよ。」
特にこれといった目的もなく、強いて言うのであれば遊び場のような感覚で作られた建物が長い年月を経て遺跡化してしまったもので、即死級の罠こそないがそこら中に罠が仕掛けられている上に、踏破したところで手に入るのは魔物の素材と記念硬貨のようなものだけで、意地悪な人が建てたものだった場合は何も得るものがないこともあるという。
「つまり系統としては迷路とかの子供の遊び場用の建物みたいな感じってこと?」
「目的があるならそういった場合ね。あとは弟子の修行のために作ったとか、競技用に作ったとかかしら。罠を作ったり仕掛けたりするのが好きでそういう建物を作る人もいたかもしれないわね。」
「見分け方としては入ってすぐにある程度判別可能です。広間があり守護者らしき者がいる場合は神話の遺跡、警報や罠が即発動したら研究所、試練内容であったり案内がある場合は趣味で建てられたもので、何もない場合は避暑地か封印の遺跡である場合が殆どです。」
「といっても、研究所を兼ねている場合もあったりするから絶対ではないのだけれど。あと、避暑地の場合は入ってすぐの場所に部屋があったりするし、そもそも罠が何もないことが殆どだからそこで見分けもつくわ。」
外見で判断がつく場合も稀にあるそうだが、昔の人は建造物の内部には拘っても外部はそこまで拘らなかったらしく、違いがあるとすれば扉の頑丈さ程度だし、避暑地などだったとしても扉だけは頑強にしておく場合もあるので何ともいえないそうだ。
「話を聞く限りだと山にあるのは封印の遺跡かもしれないね。封印を壊しちゃった時についでに中を少し覗いてみたんだけど、入ってすぐの広間には特に何もなかったし、結構奥深くまで続いてそうだったから。」
「へぇ。どんな道具や武器が封印されているのか楽しみだね。」
「あまり期待しすぎないほうがいいわよ?昔踏破した遺跡に封印されていたのは、恋文だったり下手な詩集だったりしたから。封印しておきたい気持ちは分からなくもないけどね。」
そんなものをわざわざ建物を建ててまで封印しなくてもいいんじゃないかと思うが、もしかしたら大切な人からもらった思い出の品とかで、処分するのは忍びないから封印したのかもしれない。
「ん?というか、ルル姉は遺跡を踏破したことがあるの?」
「えぇ。といっても大した遺跡じゃないわよ?封印こそ厳重だったけど、中は特に何もなかったし・・・」
「傭兵所など然るべき組織に認知されていない遺跡は多くあります。少し心得があれば踏破できるような簡易な場所は、そもそも古代遺跡として認めれらていない節がどの国でもありますね。」
ルルたちがどこの遺跡を踏破したのかは分からないが、少なくとも踏破すれば英雄と崇めれらるほどの遺跡は踏破したことがないらしい。
「あ、そういえばさ、迷宮と遺跡の違いもよく分からないんだけど、ルル姉たち的にはどういう区別をしてるの?」
冒険者が挑む所としてよく上げられるのが遺跡と迷宮だが、確かに言われてみれば何となく別物という認識はあっても、明確な違いがどういう所にあるのかまでは分からない。
「んー・・・国や時代や組織によって定義が違うみたいなんだけど、私の見解としては迷宮は魔物の一種ね。まず、入り口に扉がないというのと、中で倒された魔物は地面や壁に吸収されてしまって素材の回収が難しいのよ。そして、迷宮核を破壊すると迷宮そのものが消失するのが特徴ね。」
「加えて、内部が明確に階層で分かれています。そして階層の中には草原があったり、海があったりと、普通じゃない場所が多々存在しています。他にもいくつか特徴はありますが、私たちも最後まで攻略したことがあるわけではないので、もしかしたら私たちより詳しい者がいるかもしれませんね。」
まあ明日行くのは間違いなく遺跡なので、迷宮の知識に関してはそのうち詳しい人に聞くことができればいいだろう。
「それじゃあ作戦会議を始めるわ。まず、先頭は私が盾になるわ。そして二番目にグラが続いて罠の感知をする。後ろはリリムとシール君で警戒して進む。以上よ!」
僕は集団戦などの経験が少ないので何ともいえないが、作戦というのはもう少し細部まで詰めておくものではないだろうか。
ルルたちですら経験も知識も不足しているという遺跡の調査に、不安をぬぐい切れないまま挑むことになりそうだ。
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