98.消えた未来
※以前執筆していた作品の113話を一部加筆修正等加えて再投稿しているものです。
「さて、アルルはどこへいったのかしら?早く助けてあげないと。」
私たちを襲ってきた陸竜のうち二体は今倒すことができたけど、残りの一体は未だにアルルを追いかけまわしているようで、少し遠くにその姿が確認できた。
「あそこのようですね。すぐに行きま・・・おや?」
結界の中へ戻るとまた浮遊魔法は使えなくなるので、落下の衝撃に耐えることができるように準備をしていたのだが、突如として目の前の結界が消えていった。
どうやらグラが結界を張っている魔法道具の破壊に成功したのだろう。結界が消失したことでアルルも変身をするだけの魔力を集めることができたようで、大型犬の姿に変身し一目散に空中へと逃げ出していた。
「リリム、ちょっと聞きたいことがあるから、彼は殺さないでね。」
そこまで期待はしていないが、もしかしたら何か新しい情報を引き出せるかもしれない。一応殺さずに、けどあまり時間が掛かるようなら早々に諦める程度のつもりで依頼しておく。
「お疲れ様アルル。よく頑張ったわね。」
「は、はひぃ・・・も、もう走れません・・・。」
空中でアルルに合流して労いの言葉をかけると同時に、アルルの変身が解けて気を失ったかのように落下し始めたので慌てて支えて背中に背負ってあげる。かなり息が荒くなっており本当にギリギリだったのだろう。だけどなるべく早めに息を整えて欲しい・・・最近ちょっと、耳に息を吹きかけられるのが弱点だということが判明してしまったから・・・。
「貴様ら・・・本当に伝導者か?我ら三人相手にここまでとは・・・。」
地面に戻ってみればすでにズタボロになった陸竜が変身を解かれ地面に伏していた。そして、その背中をリリムが踏みつけて抑えており双剣が首元に当てられている。
「質問は三つ。一つでも私たちの望む答えを出してくれたら命まではとらないわ。一つ、ウァレフォルの戦士がシトリ教国側にまで干渉してきている理由は何?二つ、あなたたちの指揮を取っているのは誰?三つ、ウァレフォルが滅ぶことに抵抗はあるかしら?」
質問の意図は受け付けない。もしわずかでも抵抗する素振りを見せるのならその時点で首を刎ねると伝えて答えを待つ。だが、その答えを聞く前に陸竜は絶命してしまうはめになった。
「これは・・・自らの体に毒を盛ったようですね。まるで暗殺者かのようですね。」
どの道助けるつもりなどなかったし、助からないと踏んだのだろう。まあ、竜人の民とはいえ、こんなところで死ぬ程度の末端の者から聞き出せる情報などたかが知れている。
「んー・・・特に指示書とかも持ってないわね。仕方ないわね。私は次の町までの罠を解除しておくから、リリムは町に戻って傭兵所に報告とアルルの介抱をお願い。」
すっかり寝息を立ててしまっているアルルをリリムへと渡し、地面に埋められている罠を改めて確認してみる。まぁとにかくその数の多いこと・・・これを全て直すのはさすがに骨が折れるのである程度の道だけ作っておいて残りは放置しておこう。
それと、落とし穴の中にある剣山も少しばかり回収しておこう。さっき確認したところこの辺りの剣山に使われている素材は銀と鉄の合成金属のようで、魔力の吸収率・伝導率が非常に高く貴重な素材だ。魔力は血液からも流れ出てしまうため、この中にアガレスの魔導士が落ちたとしたら、かなりの量の魔力を吸収しただろう。
とりあえず適当な形に加工して回収し、あらかた回収が終わったら穴を埋めておく。このやることは単純だが一つの穴に対して結構時間が掛かってしまい、気が付けば朝方に町を出ていたというのにすでに日が暮れてしまっていた。
「とりあえず今日はこのくらいね・・・。思った以上に前に進めなかったし明日は穴を埋めるだけにしておこうかしら・・・。」
一応それなりに銀鉄を回収することは出来たし、これだけあればまた新しい武器を作ることも出来るだろうし、グラの装備も整えることが出来る。彼の性質上がっちりとした鎧はいらないというかもしれないが、銀鉄で作られた防具は軽くて丈夫な上、魔法攻撃に対しても物理攻撃に対しても結構な防御力を誇る。関節部分や心臓周りを守るだけでもかなり安全性が変わってくるだろう。
尤も、グラがそんな簡単に相手の攻撃を喰らうとも思えないけど・・・何せ気配読みと気配隠しに関しては私たち以上に優秀な上、身体強化だけなら速度もリリムと同じくらい速く動くことが出来る。
よほどの敵に出くわさない限りは大丈夫だろう。
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