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へんな怪談集

オの交差点

作者: 夏野篠虫

 出張で某地方都市へやってきた。仕事の関係でよく全国各地を回っているが、ここは初めて訪れる。初めての土地に来たら知られざる観光地やご当地料理なんかを楽しみたいが、それにはまず取引先で打ち合わせを済ませないといけない。

 駅前のレンタカー屋で予約していた車を受け取り、見知らぬ幹線道路を北へ走る。平日の午前中、通勤ラッシュも終わった今は車通りもまばらで、社名ラベルを付けた車とすれ違うたびに勝手な親近感を覚える。お互い一日何事もなく過ごせますように、なんて思う。


 事前に先方から頂いた地図をカーナビに入れたおかげで迷うことなく会社付近まで来られた。オの字の交差点で信号待ちの間、送られてきたメールを再確認。交差点前の3階建ての建物で駐車場は社用車で埋まってるから悪いが近くのコインパーキングを使って欲しい、とのこと。ナビは周囲1kmにあるPのマークを表示している。3つしかない。しかも少し遠い。寒空をテクテク歩くのは億劫だ。

 長い赤信号を見つめ考えていると、少し変なことに気づいた。私から見て右斜め方向、オのはらいの部分が未舗装のまま途中で柵が立てられ行き止まりになっている。

 変な道だと思いながらも誰の土地でもないなら駐車しても何も言われないだろという悪知恵が働いてしまった。青信号と同時に右斜めに発進、難なく車を止めた。



 時間も間に合い先方の担当者と初顔合わせ。打ち合わせも順調に進んで正午を迎えた。

 担当者の提案で一緒に昼食をと言われ、車はどこに止めたか訊かれた。まずいかなと思いながらも隠しても仕方ないので、あの道に止めたと話した。

 すると担当者が顔色悪くして聞き返した。私はちょうど窓から見えるあそこですと指差した。

 それを見た担当者はさらに慌てた。やはり駐車禁止だったのか。

「あの、ダメなら今すぐ移動させますけど」

「……もう遅いです」

「え?」

 車を見下ろして震える担当者。

 私は自分で止めたオの斜道の車をよく見た。




 フロントガラス越しの車内には真っ黒い人間が体をへし曲げ合ってぎっしり詰まっていた。


 説明しておけばよかったですと脂汗を流す担当者を横にして、私はアレをどうやってレンタカー屋に返すか途方に暮れた。

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