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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第五章:陰湿な逃亡者

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その80:賭博場


 「ごめんね<メガファイア>!」

 「……ぶもぉぉ!?」

 「……ぶふー!!」

 「ファム、こっちにおびき寄せて! <ライトニングスピア>」

 「いいぞ」


 【霊王】騒動からすでに七日ほどが経過し、俺達は日常を取り戻していた。

 

 あの兄妹にあっさり殺されそうになって以降、ファムのやる気が変わって一層修行に励むようになった。

 ちなみに今日も依頼を受けているのだが、少々趣旨が違う。

 

 実はファムのランクアップ試験を兼ねた依頼なのだ。


 「全然余裕ね、つい最近まで血だらけになっていたとは思えないわ」

 「少しずつだが、きちんと成長している。俺以外も使用人が居るから、そこで模擬戦もできるしな」

 「ルーンベルさんも奴隷ながらいきいきしていますね」

 「余計なお世話よ!?」

 「よし! トドメです!」


 受付嬢のクーリがファムとルーンベルが魔物を倒すのを見ながらなにやら書き込んでいく。

 ちなみに俺は『手伝ってはならない』とスパイクから口を酸っぱくして言われたので棒立ちである。

 そしてちょうど今、ファムの一撃がファングボアの眉間を切り裂き、もう一頭の首へ剣が振り下ろされ、血しぶきを上げながら重い体を横たえた。


 「やった……やったぁ! 倒せました! ……ふう、ふう……」

 「見事だ」

 「ええ、本当に強くなりましたね! ルーンベルさんもお疲れ様ー」

 「まあ、ファングボア程度だから余裕よ。これでランクアップ?」

 

 汗を拭きながらファムに並び立つルーンベルが尋ねると、クーリが苦笑しながら言う。


 「本来ならギルドの人間と模擬戦をして判断するんですけど、ファムちゃんはFランクからEランクなので、これで良いとギルドマスターから聞いています」

 「やった! これでザガムさんとお揃い♪」

 「やりましたねー。真面目に凄いですよ、今日はお祝いですね……!」


 目を輝かせるクーリに、ルーンベルが目を細める。


 「……クーリ、あんたあわよくば屋敷に来ようとするのやめなさいよ」

 「そそそそ、そんなことは……決してルックネスさんに会いたいなどと……」

 「ニコラも狙っているから焦ってんでしょ?」

 「えへへ♪」


 舌を出してウインクするクーリ。どうやら図星か。

 まあ、祝うのは構わないのだが――


 「悪いが、祝いは明日にしてもらえるか? 今日はルーンベルに付き合う予定なんだ」

 「付き合う?」

 「ああ、賭博場に行く。どうしても確かめたいことがあるそうだ」

 「ようやくリベンジができるわね……!」

 「だ、大丈夫なんですか? ザガムさんとファムちゃんは絶対にやっちゃだめですよ」


 何故かクーリが難しい顔で俺とファムに指を突き付けるが、理由が分からない。


 「どうしてだ?」

 「ねえ?」

 「いえ……ルーンベルさん、しっかりお願いしますよ……」

 「大丈夫よ、騎士団長のエイターさんも来るから」

 「ああ。それなら……って、もっと大丈夫なんですか!?」


 と、クーリが叫ぶのを尻目に俺達はファングボアを荷車に乗せて町へと戻る。

 もちろんファムのランクは晴れてEランク。

 祝いはしたかったのだが、今日は兼ねてより言っていたルーンベルの賭博場へ行くことが決まっていたのでこちらを優先した。


 そのことを、先日ゆっくり飲めなかったので屋敷に招いたエイターに話したところ、俺とファムを見て笑顔で「うん、まずいね」と言い切りついてくることに。

 後は年配の者も居た方がいいだろうということでイザールも来る。


 「ちゃんと呼んでくださいよー……」

 「ああ、スパイクによろしくな」

 「コギーちゃん達もまた呼びたいですね。それじゃ着替えて賭博場へ行きましょうか!」

 「そうだな。一応、ドレスコードがあるらしいな?」

 「そうね。私は身ぐるみ剝がされたから買い直しになるけど……必ず返すわ」

 「よし、メリーナに見立ててもらうとするか――」


 そんな感じで夜に開かれるという賭博場に向けて準備を進めていく。

 ギャンブルか。やったことは無いが、ルーンベルを見る限りやるべきでは無いと思うが、どんなものだろうな?



 ◆ ◇ ◆



 <賭博場>

 

 「いらっしゃいませ、今日も賑わっていますよ♪ あら、素敵な方達……」

 「ザガムさんに色目使わないでくださいね! でも、綺麗な場所ですねえ……」

 

 薄いピンクのドレスに身を包んだファムが兎の耳飾りをつけた水着の女に食って掛かるのを見ながら俺も周囲を確認する。

 煌びやかな装飾が目にきついと思いながら呟く俺。


 「ここが……」

 「ああ、私はきちんと運営されているかを確認するため稀に来るけどね。ルーンベルさんが破産して身ぐるみはがされた経緯は知っているけど、イカサマがあるとは聞いたことがないかな」

 「……基本的には問題ないのよ」

 「ルーンベル?」

 

 ワインレッドの衣装が勇ましく見えるルーンベルが険しい顔で前へと進む。

 

 「とりあえず、少し私がやるのを見ておいて♪ ちょっと借金を返すため、稼ぐとしましょうか」


 そう言ってルーンベルはカードゲームを行っているテーブルへと着席する。

 俺達は顔を見合わせて、後ろから様子を見ることにする。



 ◆ ◇ ◆



 「……ヴェリナント様、ルーンベルが現れたようです」

 「ん? そりゃ本当か、あいつは全財産を失ったはずだが?」

 「話によると、誰かに買われたと聞いています。連れが居ましたからその内の誰かでは?」

 「なるほどな。あいつ自身が欲しかったが、そこは譲らなかったからなあ……」

 「接収した荷物に固執していましたし、よほど大事なものがあるのではと推測しますが」

 「ふん、大したものは無かったと思うがな……? まあいい、少し様子見だ。……いけそうなら、今度こそあいつを俺のモノにするぜ――」

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