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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第四章:魔族領からの刺客

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その76:ナンバー2の男


 「そんな……【霊王の檻】がこんな簡単に破られるなんて……!?」

 「な、なんだこの威圧感……さっきまでとはまるで別人じゃないか……。キルミス!」

 「え!?」

 「邪魔だ」


 俺は片手でキルミスを押してファムから遠ざける。軽く押したつもりだが物凄い勢いで離れた場所にある木にぶつかった。


 「あ、ぐ……」

 「キルミス!」

 「息はあるな、大丈夫そうだ<ヒーリング>」

 「ん……」


 傷を癒すと、脂汗が徐々に引いていき呼吸が楽になった。

 それでも少し危なかったかとファムの顔を見つめていたら、ルーンベル達も姿を現した。


 「あ、居た! ってどうしたのファム!? それにザガムもなんかカッコいい鎧とマント着ているし!?」

 「うるさいぞルーンベル。……メリーナ、ミーヤ、ご苦労だった」

 「問題ないですみゃ! ファム様は体力ギリギリだったのに、ザガム様がここに居ると分かって全力で走ったのにゃ」

 「そうですよぅ。それで、そちらの方々はぁ?」

 「ルーンベル、ファムを頼む。こいつらは【霊王】らしい。俺の抜けた穴を埋めてくれているそうだ。どうやら俺を狙ってここに来たらしい」


 近づいてきたルーンベルにファムを渡す。するとルーンベルが訝し気な目をして口を開いた。


 「ということは魔族……でもどうしてザガムを? もしかしてあんたのたくらみがバレてって感じかしら。でも、人間と停戦状態だしここまで騒ぎにするとは思えないわね」

 「ふ、ふん……そんなことを人間が知る必要はないね。大丈夫かいキルミス」


 強がってルーンベルへ言い返しながらキルミスを助け起こすイルミス。

 だが、明らかに焦りが見える。


 「さて、そのあたりはこいつらに吐かせればいい」


 畳みかけるように一歩前へ。

 死にはしなかったが、こいつらには【王】である意味を教えてやらねばなるまい。


 「……ちょっと油断しちゃっただけなんだからね! い、行くわよ」

 「どうした、さっきまでの威勢は」

 「うる、さい……! <サモン>」

 「あららぁ、大きいですねぇ」


 メリーナが呟いた通り、イルミスの目の前に巨大なドラゴンの骨が現れた。ドラゴンゾンビ、いや、スケルトンドラゴンとでも言うべきか。


 「ふ、ふふふ……こいつは僕が呼べる最大のアンデッドだ! 上級魔族10人を相手にしても――」

 「ゴァァァァ!?」

 「ふん、脆いな。ああ、なにか言いかけていたな、なんだ?」

 「い、一撃……」

 「そんな……私でも少しだけ手を焼くのに」

 「どうやら万策尽きたようだな」

 

 俺は無残にも崩れさったスケルトンドラゴンをまたぎ、ゆっくりと近づいていく。


 「く、来るな……!! <メガアイシクル><ギガファイア>」

 「フッ、そんなものが効くとでも思っているのか?」

 

 「あ、あれ? ザガム様?」

 「どうしたのよミーヤ」

 「な、なんでもないにゃ……メリーナ」

 「……」


 イルミスが放つ魔法は全てマントに弾くことができるので無傷。

 俺は残り数歩まで近づいていく。


 「うう……うわあああああああ!」

 「まだ向かってくる勇気はあったようだな」

 「なんで!? なんで効かないの! 本気で斬っているのにぃぃぃ!」

 「避けるまでも無いくらいに軽いな」

 「あ!?」


 戦意喪失していなかったキルミスが斬りかかってくるが、ダメージは無い。鎧は特殊な魔法がかかっているので一定以上の威力を出さなければそれを破れないからだ。

 俺がナンバー2で居られた理由の一つでもある。


 「ルーンベル、ここに来るまで死人は居たか」

 「へ!? い、いや、けが人はいたけど死人はいない、はずよ」


 斬撃を甘んじて受け続ける理由も無いので、俺はキルミスの両手を掴み上げて吊るし上げると、ルーンベルへ質問を投げかけた。

 なるほど、一応この二人は大魔王の教えは守ったわけか。


 「キルミス!? おい、お前達! なにをボーっと突っ立っている! キルミスを助けるぞ!」

 「あ、いや、無理っす。ザガム様に勝てないっすもん」

 「なんだと!? 死ぬ気でやれよ!」

 「だから言ったじゃないですか、やめておいた方がって。あの人ガチで大魔王様以外のヤツに負けたの見たことねえんですよ? ナンバー2ですよ?」

 

 砦にいた魔族がため息を吐いてから首を振ると、イルミスは声を震わせて言う。


 「そんな……【炎王】は大したことないって……」

 「あー、あの人はザガム様に負けたと思ってないですからねえ……全敗しているのにまだザガム様が弱いとか言う人なんで……」

 「そ、それじゃ大魔王様はなんで僕達をザガムと戦わせたんだ……」

 「それは分かりませんけど……」

 「まあ、そういうことだ。では、お仕置きといこうか」

 「ひっ……!? え、えっちなことをするつもり!?」


 まだ余裕がありそうなキルミスを脇に抱える。

 尻が前だ。


 「ちょ、ちょっと何する気!」

 「ふん」

 「いたぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 「キルミス!?」


 俺はバタバタと暴れるキルミスの尻を思いっきりぶっ叩いた。

 子供にはやはりこれだろう。

 死人が居ないとはいえ、混乱を招いた罪は重い。

 俺もよくメギストスに尻を叩かれていたものだ……


 「ああああ!? ひぃん!?」

 「キルミス! くそ……<ギガファイア>!!」

 「甘いな。……次はお前の番だからな」

 「ひぃ!?」


 一人百叩き。

 一度の罪は百回の罰をもって償わなければならないのだ。

 

 「あふん……もう、ダメ……」

 「百……さあ、イルミス。お前の罪を償え」

 「い、いやだ……! ああ!?」

 「フッ、どうして逃げられると思った?」

 「……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ――」

 

 夜の闇にイルミスの絶叫が響き渡る。


 「うわあ、大人だったら立ち直れないわね……」

 「ああ、いいですわぁ……ザガム様の叱咤……」

 「マニアックねー……」

 「メリーナさんは責められ側ですにゃ」

 「むにゃ……ザガムさん……お尻……ダメ……」


 そして――

 

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