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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第四章:魔族領からの刺客

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その74:混乱する城下町


 「ええい、なんだこの数は! 魔法使いは騎士と兵士の援護をしっかりせんか! 落ちてくるアンデッドを蹴散らしておけよ!」

 「へ、陛下……その、騎士達に任せてもらえませんか……? 前線に出るのはちょっと……」


 エイターがザガム達の屋敷を出てすぐに城へ戻り、くつろいでいた国王アレハンドロが外の状況を確認して町へ出兵していた。


 もちろん騎士達が出て行くのは承知していたが、アレハンドロも装備に身を包み戦いに躍り出ていたのである。

 大臣のザップは引き留めようと一緒に出てきて巻き込まれた形だ。

 

 「一番後方に居るからいいではないか! 町の者は無事なんだろうな!」

 「伝令の話では、確認が完全に取れていないらしいですが、見つけた者は確保していることです! わわわ!?」

 「ふん! どうだ、ザップ。なかなかサマになっておるであろう」

 「は、はあ……しかし、これが陛下を狙う罠だったらどうするのです!?」

 「心配いらん。恐らくこれはそうではなかろう」


 自信ありげに空の魔法陣を見つめながらそう口にし、ザップが眉を顰める。

 

 「もし私が狙いなら直接城を攻めるだろうが、城には一匹たりとも来ておらん。町を混乱に陥れるか、他に目的があるか、だな」

 「な、なるほど……」


 ザガムに説教をされてから目が覚めたアレハンドロは色々と目先を変えて王として励んでいたりする。いつか必ずザガムを見返してやるという勢いだけだが、意外にも噛み合っていた。


 その時――

 

 「うお!? な、なんだ今の爆発は!?」

 「商店街通りか……? おい、そこの者、エイターを向かわせてなにが起こっているか確かめさせろ」

 「は、はい!」


 近くの兵士の首根っこを掴んで指示を出すと、スケルトンを倒して後退する。


 「ふん、一度戻るぞ。ザップが居ては戦いにくい」

 「も、申し訳ありません……」

 「まあ、いい」


 アレハンドロは下がりながら終わらない戦いに顔を顰める。


 「それにしても城下町を襲うとは何者だ……? 魔族が攻めてきたか? いや、ここを狙う理由は人間にしかないしな。それにしてもザガムのやつに私の雄姿を見せたかったな、あやつもどこかで戦っているか? ……あやつが居ればこの騒ぎはなんとかなるが……あ!?」


 さっぱり分からないが、屋敷を与えたザガムが戦ってくれるだろうと考えていたが――


 「まさか【冥王】の差し金!? だ、だとしたら私達は全滅……いや、でも、私を殺さなかったぞ……? えー……ザガムが冥王だとして……あいつの目的はなんなんだ……やっぱり違うのか……?」


 ◆ ◇ ◆


 「えい……! やあああ! ……はあはあ」

 「ファム様、無理をしちゃダメですにゃ。騎士さん達も展開したし、そろそろ戻ってもいいかもしれないにゃね」

 「そうね……<ターンアンデッド>! チッ、こっちは魔法人形……ゴーレムか、メリーナ!」

 「オッケーですぅ」


 メリーナが手刀で近づいて来たゾンビに似たゴーレム五体の首を刎ねて消滅させる。

 屋敷から出て数十分。押し返せてはいるが、ファムの動きが明らかに鈍ってくるのが見えてミーヤが戻ることを提案する。


 「だ、大丈夫、です……コギーちゃんの無事は確認できたけど、まだ敵は多いし……」

 「でもファムはもう限界でしょ? 訓練しているって言っても多数を相手にしている戦いはまだやってないから緊張で体力がもうないのよ」

 「うう……」

 「ルーンベル様の言う通りですよぅ。ここは一度屋敷に戻ってください、後はわたしとミーヤ、それとイザールさんで何とかしますから」

 「私もやれるわよ」

 「ルーンベル様はファム様の傍にいてくださいませぇ♪ 大丈夫、ザガム様も出たようですから」


 メリーナがそう言って微笑んだ瞬間、商店街の通りで赤黒い炎が噴きあがり、爆発を起こした。


 「い、今のなに!?」

 「ザガム様の魔法ですねぇ。ちょっと本気かも?」

 「……」


 ルーンベルが驚き、メリーナが説明をする横でファムが黙って体を震わせていた。


 「ちょっと、ファム大丈夫?」

 「や……」

 「「「や?」」」

 「やっぱりザガムさん戦いに出てました! 見捨てたりしてなかったんですね!」

 「最後まで話を聞かないからですよぅ。この様子だと黒幕を見つけたみたいですね。ではわたし達は戻っても――」

 「行きましょう皆さん! ザガムさんの応援に!」


 目を輝かせて拳を握るファムに、ルーンベルが呆れた顔で笑う。


 「いやいや、あんたもう体力ないでしょ?」

 「いけます……! あっちですね! 待っててくださいザガムさん……!!」

 「あ、ちょっと待つにゃ!? って、めちゃめちゃ蹴散らしてる!?」

 「あー、感情が振り切ったかしら……元に戻った時が怖いわね。ともあれ、一人にするわけにはいかないし」

 「ふふ、行きましょうかぁ。……ファム様、本当にザガム様が好きなんですねぇ……」

 「怖い目してるわよ!? と、とにかく行くわよ! ファム、まちなさーい!! もう、スケルトン邪魔よ!!」


 ルーンベルが黒い笑顔のメリーナから距離を置いてそう言うと、二人は頷いてファムの後を追うのだった。


 ◆ ◇ ◆


 「それそれぇ!!」

 「ふむ、なかなかの攻撃だな。並みの魔族ではないようだ」

 「強がっちゃって♪ あんたイケメンだし私のモノになるなら攻撃を止めてもいいわよ?」

 「子供の戯言に付き合っている暇はないんだがな」

 「馬鹿にして……! イルミス!」

 「ああ。<シャドウスナップ>」


 なるほど、二対のダガーで攻め立てる女児が前衛で攻撃を仕掛け、男児が魔法で援護か。

 俺の足に絡みつく漆黒の影がその場に俺を縫い付ける。


 「動きが止まった! 死んでちょうだい♪」

 「ふん」

 「ぐぐ……しつこいわね……。きゃあ!?」

 「ああ、だいたいお前達の力は分かった。俺を【冥王】だと知って襲ってきたのはどうしてか聞かせてもらおうか?」

 「言う必要があるとは思えないですけどね?」


 男児が不敵に笑いこちらの挑発には乗らずに返してくる。しかし、女児の方は不服なようで口を尖らせて俺に言う。


 「えー、いいじゃんイルミス! 名乗ってみたかったんだよね、私。よく聞きなさい! 私達の名前はキルミスとイルミス。大魔王メギストス様から直々に【霊王】の地位を与えられたのよ。あんたの後釜ってわけね」

 「ほう……」


 そういえばユースリアには容姿を聞いていなかったが、こいつらが新しい【王】か。確かに攻撃・魔力ともに申し分ないが……。

 とりあえず情報を聞き出すため、少し遊んでみるか。

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