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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第四章:魔族領からの刺客

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その64:宴と使用人


 「あ、凄い! ふわふわの毛がこんなにたくさん! 流石ザガムさん!」

 「俺だけじゃない、ファムとルーンベルも倒しているぞ」

 「えっへん!」

 「ファムさんもなんだ! レッドアイって強いんでしょ?」

 「まあね。でも私達って勇者見習いと聖女見習いだからこれくらいはね」

 「すごーい!」


 総計13匹ほどを狩って町へ帰還した俺達は査定屋へ立ち寄っていた。

 荷台に乗ったレッドアイの体はギリィが査定中で、見事な毛をコギーが撫でながらルーンベルの得意気な話に目を輝かせている。


 「はは、でもザガムとファムちゃん達が倒したのは見れば分かるぞ」

 「ぶー、ギリィさん言わなくてもいいじゃないですかー」

 「でも倒せるだけで凄いからファムさん勇者っぽいです!」

 「うんうん、コギーちゃんはいい子だね」

 

 ファムがコギーと抱き合いながらそんなことを言い、ギリィが肩を竦めながら俺に金を渡してくる。


 「報酬だ、今日は状態がバラバラだからこれくらいで頼む」

 「ああ、それでいい」

 「それでも3万ルピちょっとか、一日一人1万なら悪くないわね」

 「宿代を払ってもお釣りがくる。それじゃ、ファムに1万、ルーンベルに五千だ」

 「わーい! でもザガムさんが持っていてください、私は使うことないですしね」


 ファムは笑顔でいつもどおり俺に返して来たので、ファムが稼いだ用の財布に入れておく。大金は収納魔法の中だが、小銭や依頼報酬はきちんとわけている。

 

 「じゃあまたな」

 「いや、ちょっと話があるんだが――」

 「待って!? 私はなんで半額なの!?」


 俺がギリィに話をしようとしたところでルーンベルが5千ルピを手に俺の肩へ手を伸ばして声を上げた。


 「なんだ?」

 「いやいやいや、お金……私、結構頑張ったと思うんだけど……」

 「ああ、そのことか」


 軽くショックを受けているルーンベルに向きなおり、俺は懐からとある紙を取り出してからルーンベルの頭にそっと貼り付けてやる。


 「なによこれ? ……あ、ああ……あああああ……」

 「分かったか? お前は奴隷で俺達に買われたんだ、自由になりたいから金は返すと言っただろう? だから報酬の半分は俺が管理している」

 「そういうことか……!」


 膝から崩れ落ちるルーンベルに、一応提案をしてみることにした。


 「残りを渡してもいいが……一生奴隷契約から抜けられない、それでも良ければだな」

 「一生奴隷……ザガムはイケメン……お金持ち……いいかも……へへ……」

 「良くありませんよ、なんで光悦の表情でお金を握ってるんですか!? ザガムさんも甘やかしたらダメです!」

 「ああ……私の掛け金が……」


 ファムが頬を膨らませながらルーンベルが掴んだ金を奪い取り、俺の手に戻したので、財布に入れながら小さく頷く。


 「それもそうだな。残り995000ルピだ、頑張れよ」

 「いえーい! ちくしょうめ! でも三食食べられるし、屋敷が豪華なので地道にやります」

 「あはは、ルーンベルさんって面白いね! ねえねえ、ザガムさんはお父さんと話すみたいだからあっち向いてホイをやろう?」

 「ふふふ……私に勝てるかしらね?」

 「私もやります!」


 女性陣は少し離れたところであっち向いてホイを始めたので俺はもう一度ギリィに話しかける。


 「なんだ?」

 「今夜、スパイクがウチの屋敷で引っ越し祝いをすると言い出してな。あまり知り合いが居ないから来てくれないか? 後はクレフの爺さんも呼ぶつもりだ」

 「へえ、引っ越したのか? 家を買えるとは……」

 「まあ、貰い物だがな。時間は準備もあるから18時位で頼む、スパイクと一緒に来てくれるか?」

 「そりゃもちろんだ、コギーもお前達のことを気に入っているし嬉しいぜ」

 「ではよろしくな。ファム、ルーンベル、話は終わったぞ。……む?」

 「「……」」


 ギリィからファムたちへ目を向けると、ファムが地面に手をついてがっくりしており、ルーンベルは横になって白目を剥いていた。


 「わーい! 私の勝ちー!」


 どうやら勝てなかったようだなと、俺は動かなくなった二人を担いでこの場を後にする。食材なんかはマリーヤに任せてあるから買い物は不要だろう。


 ギルドに顔を出し、クーリやザガート達にも声をかけて屋敷に戻ると、門番のミーヤがルーンベルの庭ベッドでくつろいでいるところに出くわす。


 「戻ったぞ、変わりないか?」

 「あ、お帰りなさいザガム様! 特に怪しい者も来てないにゃ。……にゃ? ファムちゃんとルーちゃんはどうして担がれているのにゃ?」

 「色々とあったんだ」

 「過酷な依頼でしたのにゃあ……」

 「では引き続き頼むぞ」

 「お任せあれ♪」


 そう言ってまた日光浴を始めるミーヤも相変わらずだなと思いつつ屋敷の中へ入り、二人をベッドに寝かせてから時間が来るまで適当に過ごす。


 そして時間になり――


 「なんだこりゃ……」

 「すっごい豪邸じゃない、なんでEランクなのにこんなところに住めるわけ!?」

 「ザガートも負けないでよ? Bランクが泣くわ」

 「無理いうなニコラ。執事が居るってどういうことだよ……」

 「いらっしゃいませ」


 ミーヤに連れてこられたザガート達は驚愕の声を表情をしながら恐る恐るついてくる。


 「お父さん、凄い壺!」

 「こういう屋敷にはつきものだよなあ。割ったらコギー、アレと同じになるぞ」

 「私を見ないでくれるかしら?」

 

 ギリィとコギーも屋敷の装丁に感心していた。

 そこで、ザガートのパーティであるレティが壁を撫でながら口を開く。

 

 「でも本当に凄いですねえ。どうしたのですか?」

 「じゃな、ワシも知りたいわい。というか呼んでくれてありがとうなザガムよ。それにワシと同じジジイもおるようじゃし、あんたもこいつを飲むか?」

 「ははは、興味がありますね。宴がひと段落したらいただきたいと思います」

 「話せるな! よし行くぞスパイク、土産があるんじゃろ? ……スパイク?」

 「む、どうしたスパイク?」

 

 クレフの言葉に反応しないスパイクの方を向くと――


 「まぁ、ギルドマスターを? 素晴らしいですねぇ」

 「あ、いや、ははは、そうでもありませんよ! メリーナさんも立派なメイドで……」

 「うふふ、お仕事ですからねぇ。でも、またお仕え出来て良かったですわ。お屋敷はスパイク様と国王様がプレゼントされたとお聞きしております、ありがとうございます!」

 「い、いやあ! これくらい全然ですよ! はははははは!」


 「……浮かれているわね」

 「メリーナさん美人ですからねー」


 ――サキュバスのメリーナに魅了されていた。通り名は天然の男殺しと言っていたな。どういう意味かよく分からなかったが。


 そんな調子で宴が始まる。

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