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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第三章:堕落した聖女

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その47:疑惑の村


 あれから三日。

 すぐ収束するかに見えた村のゴースト討伐は意外にも難航していた。


 「おい、しっかりしろ! ……くそ、精神をやられちまったか……」

 「大丈夫です、休めばすぐに症状は緩和します! 誰か交代を!」


 「なんか強力になってねえか……? 僧侶さん達も頑張っちゃいるけど、数が減らねえ」

 「これはちっとやばいかもな……」

 「……」


 村を歩いているとこう言った会話が聞こえてくるのが当たり前になり、少しずつ負傷者も増えてきた。ゴーストだけでなく魔物も相手にしないといけないため場合によっては厳しい戦いを強いられるからだ。

 

 「私達も参戦した方がいいですかね……」

 「気に病むな。これは仕事で、覚悟の上で来ている連中のはずだ。指示があるまで俺達は俺達の仕事をすべきだ」

 「はい……」


 ファムは負傷者を見ながら泣きそうな顔で力なく返事をするが、ここは師として無茶はさせられない。

 

 「……」

 「……ひっ」

 「? どうしたんですか、脅かしたらダメですよ」

 「いや、なんでもない」


 村人とすれ違う時、俺は顔をしっかり確認する。


 ……今ので概ね村の全貌が見えてきた。が、まだ確証は無い。

 それでもそろそろスパイクに告げる必要がありそうだなと考えていると、アムレートがこちらを見ていることに気づく。いや正確には――


 「……」

 「あ、アムレートさん! あれ、行っちゃった」

 

 ファムが声をかけるも無言で立ち去っていくアムレート。その背中を俺も無言で見送っていると村の入り口が騒然とした出したので俺達も向かうと、


 「どうしたザガート!?」

 「僧侶さん達が急に苦しみだして、退治どころじゃなくなっちまったんだ。そこで魔物と挟み撃ち……なんとか逃げてきたけど、これは相当キツイよ」

 「っ……はあ……、これ以上はジリ貧よ、グラートのパーティも魔法使いのイセが負傷したし、私も魔力の消耗がきついわ。レッドアイも出て来てたし、ゴーストの数が多かった気もする」

 「Bランクパーティがこれで三つ行動不能か、まさかここまでとは……」


 スパイクが項垂れていると、村長が近づいて話しかける。


 「これだけ雁首を揃えてもダメなら、無理なのではないか? 周辺に来るゴーストだけ追い払えば良かろう」

 「しかし、これがいつ他の地域に牙を剝くか分かりません。……しかし、このままでは打開できないのも確か。今日は村に駐留して明日、負傷者は町へ戻すことにします」

 「ふん、冒険者も質が落ちたかの」

 「村長、失礼ですよ」

 「だけどダリーニャ婆さん、この体たらくじゃ仕方ないだろ。ま、飯は用意してやるけど」

 「申し訳ない、陛下に恩赦を進言させてもらうよ。みんな、今日はゆっくり休んでくれ、僧侶や神父さん達は交代で結界が破られないか警戒を」

 

 悪態をつく村人達に頭を下げるスパイク。

 すぐに立ち直り冒険者メンバーへ声をかけて指示を出していく様はギルドマスターといったところか。

 俺はスパイクに声をかけるため近づいていくと、俺達が世話になっている婆さんが困った顔で頭をさげてなにやら話をしていた。


 「ごめんなさいね、採集にも行けないからみんな鬱憤が溜まっているのよ。皆さんのおかげで安心できているんだけど……」

 「あ、いえ、不甲斐ないのはその通りですので……」

 「今夜も元気を出してもらうため美味しいものを用意するわね。みんな休んでいるから多く作らないと」


 柔和な笑顔でそう言う婆さんに、ファムが肩に手を置いて笑いかけた。三日という短い期間だが村を思い出すのか随分ファムが懐いている。


 「おばあちゃん、手伝おうか?」

 「ああ、ファムちゃんかい。ううん、これは私達の仕事だから……」

 「そう? いつでも言ってね!」

 「もちろんだよ、ご飯の時は家においで」

 「うん!」

 「ザガムもね」

 「ああ」


 俺の腰を軽く叩きながらゆっくりと戻っていく婆さんの姿が見えなくなると、スパイクがこの場を離れようとする。


 「スパイク、少しいいか?」

 「どうしたザガム? すまんが、ちょっと負傷者の確認をして明日町へ戻す算段をつけたい。飯時に話してくれるか?」

 「……仕方ないな」

 

 まあ、明日帰る際に全員引き上げるべきだと言うだけだから問題ないだろう。

 

 どうして全員撤収なのか? それは数人の村人を三日見ていた結果、村人と同じ容姿をしたゴーストが居たからだ。

 その数人が村人のフリをしているのか、死んだことに気づいていないのかは分からない点で確証は無いがこの村にはなにかあるのは間違いない。


 「おばあちゃんの料理おいしいから好きです! 名残惜しいですけど、たまに遊びに来ましょうね! 娘さんが亡くなって寂しいって言ってましたし」

 「そうだな」


 ――そして夜が更け、食事が始まる……はずだったのだが――


 「さあさ、ファムちゃんお食べ」

 「いただきまーす!! ほらザガムさんも」

 「……やけに静かだな」

 「え?」


 ファムが根野菜のスープを口にしながら俺の方を向いた瞬間、家の玄関で鈍い音がした。


 「なんだ?」


 俺が扉を開けると、そこにはザガートが脂汗をかきながら蹲っていた。


 「ザガートか、どうした? 顔色が悪いぞ」

 「ザ、ザガム、お、お前は平気か……? なんだかわからないけど、冒険者達が全員苦しみだして……マイラやニコラは意識も……うぐ……」

 「ザガートさん、しっかりしてください!」


 ファムがザガートを揺するがそのまま気を失ってしまった。

 

 「行くぞファム、先に動かれたようだ」

 「あ、はい! おばあちゃん隠れててくださ――」

 「……!」

 

 ファムが振り返った瞬間、いつの間にか背後に迫っていた闇がしみ込むようにファムに絡みついたかと思うと、そのまま姿が飲み込まれて消えた。

 

 「あ、あわわわ、な、なんだいこれは!? ファ、ファムちゃんは!?」

 「チッ、こいつを頼む」

 「あ、ああ……」


 狙いはファムか? しかし、ここにファムが来ることは予想できないはず……となると身内に謀反者が居るということになるが――


 「うぐ……」

 「うがああああ……」

 「あ、頭が割れる……!」


 ――見た限り冒険者は全員倒れていた。


 「違うか。いや、一人姿が見えない……」

 「ザガム! あんたが犯人だったのね!」

 「無事だったのか、ルーンベル」

 

 俺の前に走って来たのは激昂するルーンベルだった。

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