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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第三章:堕落した聖女

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その41:集団依頼


 ――ジャイアントアントの討伐を終えた俺とファムはコギー達に査定してもらっていた。


 「うん、こいつもいい外殻だ。本体に上乗せで5000ルピでどうだ?」

 「構わない。ブライネル王国では一匹あたり150ルピだったが、高く引き取ってくれるんだな」

 「状態がいいからな。……それと、聞いてるんだろ? ゴーストのせいで、ちっとばっかし手に入りにくくなってんだ」

 「ああ、北と南で魔物の生息が少し違うらしいな」


 クーリの受け売りだが、魔物の出現する個体が違うらしく南は昆虫系よりも獣系が多いようだ。

 まあ、ゴーストにわざわざ戦いを挑むのはアホのすることなので人間達は賢いといえよう。適材適所というやつだな。


 「いい金になった、いつも助かる」

 「いいってことよ! コギーにいつも土産を買ってきてくれるしな。……嫁にはやらんぞ」

 「いつ欲しいと言った。ファム、ギルドに行くぞ」


 静かだなと思っていると、ファムとコギーが俺の買ってきた‟ギレコの実”を前にして難しい顔をしていた。


 「あっちむいてホイ!」

 「あああ、またやられた!?」

 「なにをしているんだ?」

 「あ、ザガムお兄ちゃん。これはあっちむいてホイって言って、じゃんけんをして勝った方が指で方向を指示するんだけど、負けた方がその方向と同じ方を向いたら負けなの」

 「コギーちゃん強いんですよ、私全然ダメでした! ザガムさんもどうですか?」

 「いや、俺はいい。行くぞ」

 「えー、一回だけやろうよー」


 コギーが俺の袖を引きながら懇願してきたので、仕方なく一回だけやることにした。


 「じゃんけんほい!」


 俺はグー、コギーはパー。俺の負け、ということは指の方向とは違う方を向かねばならないんだな。


 「あっちむいてホイ!」

 「む」

 「あ、ザガムさんの負けですねー」

 「あはは、わたしの勝ちー!」

 「なるほど、なかなか難しいものだな。……もう一度だ」

 「え? いいの? よーし――」


 負けたままというのは悔しいのでせめてイーブンに、と思っていたが――


 「お兄ちゃんの負けー!」

 「もう一度……」

 「も、もう止めましょうザガムさん、すでにじゃんけんで一回も勝てていない時点でヤバイですよ!?」

 「むう、まさか俺がこうも簡単にやられるとは……やるな、コギー」

 「えへへー! 遊んでくれてありがとう! ギレコの実、お父さんと食べるね!」

 「またな」


 ファムに引っ張られて解体屋を後にし、荷車を返すためクレフの下へ向かう途中、ファムが苦笑しながら俺に言う。


 「ザガムさんも苦手なことがあるんですね」

 「あれはコギーが強かっただけだ」

 「ふふ、そういうことにしておきますねー」

 「……」


 何故か嬉しそうなファムに顔を顰めつつ歩いていると、こちらに気づいたクレフが声をかけてきた。


 「おー、戻ったか」

 「ああ、コギーにはギレコの実を買ってやったぞ」

 「あれは少し酸っぱいが美味いからな。今日も大事に使ってくれたか」

 「ありがとうございました!」

 「こやつは中々男気がある、ファムちゃんしっかりな」

 「はーい♪」


 クレフと別れ、ギルドへ入って報告を済ませるため受付へ向かうと、いつもより多い冒険者達の姿が見えた。この時間ならもう酒を飲んでいてもおかしくないが、各々パーティごとに情報交換などをしているようだな?


 「なんか賑わってますね」


 ファムがそう言いながら歩いていると、その辺の冒険者から声をかけられる。


 「おう、ファムちゃんか! 今日も可愛いねえ」

 「あはは、どうもー」


 愛想笑いで軽くいなし、俺にくっついてくる。動きにくい。

 しかし、国王のお触れが無くなってからファムに声をかける男が多い気がするな。


 「ザガムだっけか? お前、ファムちゃんに変なことするんじゃねえぞ?」

 「変なこととはなんだ?」

 「お、そ、そりゃおめえ……アレだろ……」

 「ザガムさんならいいんですよ! 行きましょ!」


 ……ついでに俺に突っかかってくる輩もいたりするが、だいたいファムが追い払ってくれるので気にはならない。


 「クーリさん、依頼報告!」

 「あ、はいはい! ってファムちゃんとザガムさん! 良かった、お二人にお話があるんです!」

 「話……?」


 俺が聞き返すとクーリは笑顔で頷き、少し場所を変えましょうかと隅に移動する。


 「なんですかお話って?」

 「えっと、今ゴーストが蔓延しているのはご存じですよね? 今度、冒険者を募って一掃することが決定したんです」

 「いいことだな。流石にあれだけ出ていると町に来かねない。それにレイスになってしまうと憑かれるだけでなく、生気を吸われて同族にされる」

 「詳しいですね、その通りです。なのでギルドマスターは打開するため依頼を打ち上げます」

 「いいですね! それで話というのは?」

 

 ファムが首を傾げると、クーリは一瞬、俺の方を見た後で口を開く。その内容は俺も首を傾げるような話だった。


 「えっと、お二人にもその依頼に参加していただきたいんです。これはギルドマスターからのお願いでもありまして……」

 「Eランク冒険者がやる依頼ではない気がするぞ? ゴーストに対抗する手段が無い」

 「ですです……! 怖い!」

 「あ、大丈夫です。お二人の役割は荷物持ちですね、僧侶さんや神父を招いての大規模な依頼になるんですけど、聖水なんかが結構重いとかで雑用が足りずって感じです。後はゴースト以外の魔物と戦う、とか」

 「なるほど……」


 クーリは俺の「Eランク冒険者」に同意のようで、訝しんだ感じが見受けられる。だが、ギルドマスターの言葉に逆らうことはできないのだろう。


 ……スパイクはと言えば、俺の能力を知っているからうまく使おうという算段なのだろう。まあ、口止め料として今回は参加してもいいか。


 「分かった。その依頼、受けようじゃないか」

 「え!? い、いいんですか!?」

 「ああ、裏方ならファムの修行にもなる」

 「言っといてなんですが大丈夫ですか?」

 「高ランクの冒険者もいるんだろ? なんとかなる」


 俺がそういうとクーリは困った顔で頭をかく。


 「分かりました、数に入れておきます! けど、ファムちゃんも居るし、絶対に無理はしないでくださいよ!」

 「問題ない」

 「うーん、ザガムさんなら大丈夫かな……? くっついていようっと」


 とりあえずやるからには原因まで突き止めたいところだ。

 

 そして俺達はあの聖女見習いとやらと再会を果たすことに――

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