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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第二章:勇者

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その33:嘘と真実を混ぜて話す


 この場に居る全員が俺に注目し、言葉を待つ態勢になっていた。

 さて、どうするかと考えるがこうなると下手に隠すより真実と嘘を織り交ぜて話した方が信用されやすいと思う。


 「一応、アレを倒したのは俺だ。ゴブリンロードなら大魔王と戦うより楽だからな」

 「おいおい、まるで戦ったことがあるような口ぶりだな……」

 「あるぞ。俺がファムと一緒に居る理由もそこでな、ヤツを倒すために勇者の力を借りるためこの地にやってきたのだ」

 「あるの!?」

 

 半信半疑といった顔でスパイクが俺を見るが、ゴブリンロードを倒したというザガートの言葉は無視できないようで、悲鳴に近い声をあげたマイラを手で制すと、


 「続けてくれ」


 そう言ったので、俺は話を続ける。


 「まあ、早い話、大魔王に仇や恨みがあって倒したい。しかし俺だけでは勝ち目が無いので、勇者の力を借りたい……のだが、皆も知っての通りファムはただの村娘でFランクだと認定された。これでは俺の目的が達成できないため、鍛えることにしたのだ」

 「そうなの?」

 「ええっと……色々すっ飛ばしてますけど、そうですね」


 歯切れの悪い言い方をするが、余計なことを言わないファムは偉いと思う。そこでスパイクが考え込む仕草をし、しばらく沈黙が訪れる。


 「……強力なゴブリンロードをファムというお荷物を抱えても倒せると考えれば魔王軍の領地に赴いて大魔王と戦うくらいはやってのけるかもしれん……。分かった、君の強さは後程、改めて確認するとして、ゴブリンロードを倒せる人物がEランクというのはこちらとしてもバツが悪い。ランクを上げてもらえないだろうか?」

 「必要あるか?」

 「まあ、俺達の都合だ。いわゆる『見る目が無い』と思われる。他のギルドから来た冒険者に示しがつかん」


 ファムに嫌がらせをやったのは国王の独断。

 基本的にはきちんと実力に応じたランク・依頼・報酬を見極めて斡旋するのがギルドだとスパイクは言う。

 故に、単体でゴブリンロードを倒した俺はAランクかそれ以上が相応しいと。


 「断る。俺はEランクのままでいい。お前達、特に一番偉いお前が知っていてくれれば問題はないだろう。高ランクになってファムと差が開くとこいつの修行がしにくくなる」

 「別に高ランクの依頼を受けてからでも修行はできるのでは?」

 「……大魔王と戦ったことのある俺だ、あまり目立ってヤツに知覚されると困る。派手に名を上げて俺が勇者と一緒にいると分かれば、大魔王が軍勢を率いて押し寄せてくるかもしれん。噂というのはすぐに広がるしな」

 「絶対活躍するって言い方がむかつくな……」


 ザガートの呟きはスルーだ。さて、もっともらしい嘘だがどうだ?

 まあ、実際には俺が連れ戻される程度だと思うが『この町に危機が及ぶ』となれば迂闊な真似はできないだろう。

 そんな危ない奴を町に置いておけないと追い出すのであれば、他の国か町へ行くだけなので俺とファムに痛手は殆どない。

 最悪ファムの村へ行ってもいい、などと思っていると、スパイクは俺とファムを見て口を開いた。


 「……なるほど、確かに考えうる対策の一つとして目立たないことが重要ではあるな。大魔王は君が生きているのを知っているのか?」

 「半々というところだ。迂闊に人間の領地にまで手を伸ばしてこないはずだから目立たなければ気づかれることは稀だろう。特に魔族領から遠いからな、ここは」

 「名声が要らないまでもお金は必要じゃない? 黙っていてあげるからランクを上げておいた方がいい気するけど」


 俺の言葉にニコラが反応するが、もちろん理由があるとばかりに目を向けて話をする。


 「それはそうだ。しかし金よりも命が大事だと思わないか? ヘタをすれば先のゴブリンロードなクラスや、比べ物にならないくらいの軍勢と戦うんだぞ。」

 「う、それは怖いかも……」


 首を掻っ切る仕草を見せると、ニコラが青い顔で呻き委縮する。どうせ奴が出て来ることなどないのだから驚かせるだけ驚かせておこう。

 するとスパイクが膝を手で打ってから決断をした。


 「分かった。ではザガムはEランクのままで、Fランクのファムを鍛える。で、この件は我々だけの胸中にとどめるということとする。他言無用だ」

 「うーん、ギルドマスターが言うなら異存はありませんけど、大魔王と戦って生き延びる男がEランクってのもなあ……」

 「気にするな。少なくとも俺は気にしていない」

 「Aランククラスの力があるのに固執しないって凄いですねー。ファムちゃんのためになんて素敵ですよ」

 「えへへ、師匠でもあるんですけど、お嫁さん候補なのです」

 「「「はあ!?」」」

 

 ファムがへにゃりと顔を緩ませて言わなくてもいいことを口にし、一斉に目線が俺に向く。


 「俺から言い出したことじゃないからな? お見合いを断る口実に――」

 「お見合い!? ……ねえ、ちょっとあんたいいとこの坊ちゃんかなにか……?」

 「見ての通りEランク冒険者だから気にするな。話はこれで終わりか?」

 「あ、ああ、そうだな……報酬があるから少し待っていろ」

 「?」


 スパイクが席を立ってどこかへ行くと、緊張の糸が途切れた一行は肩の力を抜いてファムと俺に質問攻めを仕掛けてきた。


 「勇者をお嫁さんって大胆ですよねー。ファムちゃんが強くなって、今でも十分強いザガムさんの子供ができたらめちゃくちゃ強いんでしょうか?」

 「ほう、その考察は面白いな。だが、ファムが強くならねば意味を成さないがな」

 「ぶー、ちゃんと強くなるもん! そしたら、え、え、えっちも……」

 「婚前交渉はしないぞ。お見合いはどうせすぐ諦めるだろうから、お前もいい人が居れば遠慮することは無い」

 

  まあ、メギストスを倒せるほど強くなるとは思えないので、どこかのタイミングでお別れすることになるだろうと俺がそう言い放つと、ザガートが席を立ちながら大声で叫ぶ。


 「真面目か!? いや、お義父さんか!? そしたら僕は欲望の権化じゃないか……」

 「人それぞれだ、気にすることは無い」

 「悟ってるわねー……ファムちゃんにこの男なら安心かもしれないわね」

 「もうザガムさん以外の人は嫌だよ私? 国王様に直接文句言える人なんて居ないもの」

 「また驚きの話が出てきたわね……」


 マイラがため息を吐いたその時、スパイクが革のカバンを持って部屋へ戻ってくる。


 「お、なんだか賑やかだな? 待たせたな、これが報酬だ」

 

 スパイクが出した金額は驚くべきもので――

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