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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第二章:勇者

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その32:ギルドのマスター


 「うお……こ、こいつは……!?」

 「話は後だ、ギルドまで行くから通してくれ」

 「もちろんだ。ファムに、ザガムだったか? お前達も一緒だったのか」

 「別の依頼をやっていたところ、たまたま合流したんだ」


 前にも声をかけてくれた門番が怪訝な顔で後から出た俺とファム、そしてザガート達を見比べて首を傾げていたので適当に誤魔化しておいた。


 「どうしたの? いくわよ!」

 「ああ」

 

 先を行くマイラが大声で呼ぶので、仕方なく追いかける。程なくしてギルドに到着するが、荷台を査定場へ持って行かず、そのままギルドの前に止めてザガートだけ中へ入っていく。


 「査定しないのか?」

 「あんたねえ、出来るわけないでしょ? 危険度が超高い魔物が出たんだから、報告義務があるのよ、知らないの?」

 「知らん」


 そのあたりは恐らくランクが上がったり、もう少し依頼をこなせば時に説明が入るのだろう。ファムの顔を見ると無言で首を振っていた。

 すると緑髪の女性ニコラだったかが眉を顰めてマイラへ言う。


 「姉さん、なんでこの人こんなに偉そうなんだろう……」

 「それこそ知らないわよ……ファムちゃん大丈夫? こんなのと一緒で」

 「あはは、不愛想ですけどザガムさんは優しいですよ! 夜も全然怖くないし」

 「「え!?」」

 「ま、まさか同室――」

 「なにを叫んでいるんだ? これがそうです」


 二人がなにか言いかけたところで、歴戦の戦士といった感じの風貌をした大男を連れてザガートが戻ってきた。

 大男は神妙な顔で荷車に載ったゴブリンロードを見ながら口を開く。


 「ゴブリンキング……いや、ロードか? こいつは大物だな、ゴブリン討伐の依頼で出くわしたのか」

 「はい。やけに数が多く、僕達は一昼夜かけて逃走と戦闘を行っていましたけど、恐らくこいつの入れ知恵だったのでしょう」

 「ああ、ここまでランクが上がった個体なら悪知恵も働く。そんな相手に四人でよく無事で帰って来たな、これならいよいよAランク試験も受けられるぞ」

 

 む、ザガート達はAランクになれるのか、話は終わったようだし立ち去るとしよう。


 「あ、いや、それは僕達が倒したんじゃ……って、おい!? どこへ行くんだザガム!」

 「ん? 報酬を貰いにギリィのところへだが」

 「そうじゃないだろ! スパイクさんここじゃアレなんでどこか静かに話ができるところに移動できませんか?」

 「それは構わないが……君は? よく見れば勇者ファムも……なるほど、訳アリか。ではギルドマスター室へ行こう」

 

 なんだか勝手に話が進んでいてこのままでは俺も話し合いとやらに連れて行かれそうな予感がしたため、俺は片手を上げてから口を開く。


 「いや、俺はいいからそっちだけで話をしてくれ。俺は今からスィートビーの査定があるんだ、ついでにこいつを運んでおいてやろう」

 「遺体はまだ必要だから藁を被せてこのままギルド内に置く。さ、こっちだ」

 「俺に話など無いのだが」

 「ま、まあ、念のため聞いてからにしましょうよ。ギルドマスターとお話する機会なんてそうそうないんですよ」


 ファムにそう言われ、確かにギルドのマスターという偉い人間なら学ぶものがあるかもしれないかと渋々ついていくことにした。


 ◆ ◇ ◆


 「さて、みんな席についたかな? ザガム君は初めましてだな、俺はこのギルドを預かるスパイクだ、宜しく頼む」

 「ザガムだ、宜しく」

 「だからなんであんたはそう偉そうなのよ……」

 「気にするな」

 「面白い方ですね」


 別室へ移動する前に目が覚めた金髪の回復術師、名をレティという女が柔らかに微笑むとザガートが咳ばらいをして話を進める。


 「えっと、本題からいきますけど、あのゴブリンロードを倒したのは僕達ではなく、今しがた自己紹介をしたザガムなんです」

 「ほう……見たことが無い顔だが、最近王都へ?」

 「ああ。ほんの数日前だな。これがカードだ」

 「もしかしてAランクか? ……な!?」


 俺がカードを見せると、スパイクが驚愕な表情を浮かべ、ザガート達は口をへの字にしてうんうんと頷き、ファムは苦笑するばかり。そしてなんとか絞り出すように声を出すスパイク。


 「お、おい、Eランクって書いているじゃないか!? お前がゴブリンロードを!? ザガート、俺をおちょくるのもいい加減にしろ」

 「そうだぞザガート、Eランクが倒せるわけがないだろう? よし、では行くぞファム」

 「ええー……」

 「逃げようとするんじゃないっての!」

 「おい、触らないでくれ。俺は女性が苦手なんだ」

 「まあ、冗談は置いといて、話を聞かせてくれるか?」


 【炎王】なら今ので誤魔化せるのだが、如何せん敵が多すぎるか。

 とりあえずどう話したものかと考えながらこの場に居る全員に話し始める。

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