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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第二章:勇者

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その29:Bランク冒険者の……


 「<メガファイア>! ……あの隙間を抜けるわよ!」

 「助かるマイラ! ニコラ、レティ、先に行くんだ! ……チッ、ゴブリン退治なら楽なもんだと思ったけど、これはちょっとドジを踏んだな」

 「まったくね。こんなのあの子一人で倒せるわけないじゃないのよ。<メガウインド>!」

 「グゲァ!?」

 「国王様の手前、嫌味を言わざるを得なかったけど、嫌われ覚悟で代わりに来て良かったってところだな。後は駆逐できれば上等なんだが……!」


 ――ゴブリン退治に向かったBランクパーティのルガード達はオーラムの嫌な予感は的中しており苦戦を強いられていた。

 通常であればゴブリンの群れ程度はルガード達で十分倒せる相手で、Cランクパーティ六人や、バランスのいいBランクパーティ四人なら妥当な線である。


 故に、剣士のルガード、魔法使いのマイラ。ハンターのニコラと回復術師のレティというこのパーティなら完了できるはずだったのだが――


 「ガゲギ……!!」

 「回り込まれた……!?」


 逃げた先にもゴブリンが立ちはだかり足止めを食らう一行。

 本来、ゴブリンの群れは五十体程度から成り立っており、知能も高くないため魔法による範囲攻撃の後で各個撃破すればカタがつく。

 しかし昨日の夕方ごろにゴブリンの群れを発見して攻撃を仕掛けたところ、巣からとんでもない数のゴブリンが出現。

 魔法使いのマイラを軸に四人で戦っていたものの、減らない数に押されてしまい撤退を試みるが追跡されて満足に睡眠できずこの状況になってしまっていた。


 「数が多い……これは町に戻って複数のパーティで討伐しないと、被害が拡大するぞ……!」

 

 ルガードが斬りかかるよりも速く、回り込んできたゴブリン達の額に矢が刺さり、放ったニコラが半ば悲鳴に近い声で口を開く。


 「倒れなさいっての……! おかしくない? いくら移動しても町に辿り着けないんだけど!」

 「そういえば……もしかして町に逃げられないようにゴブリン達が立ちはだかっている、とか?」

 「そんな知恵があいつらにあるか。今の内に逃げ――」


 ルガードが背後に居るレティに反論をしようと振り返ったところで、驚愕の光景を目にし、瞬間、レティと体を入れ替えるように引っ張るルガード。

 何故ならレティの背後に現れたひと際大きなゴブリンが、レティに向かって斧を投げつけてきたからだ。

 

 「ぐああああああ!?」

 「ルガード!? ……あ!?」

 「こいつら……!」


 ルガードの胸部アーマーに斧がぶつかり破片が飛び散るのを見て焦るマイラ達の前に、彼女達を取り囲むようにゴブリン達が木の影から姿を現す。


 「だ、大丈夫、ルガード! <ヒーリング>!」

 「す、すまない……なるほど、こいつのせいか。ファムちゃんはよく逃げ切ったもんだ……」

 

 回復魔法を受けたルガードは壊れた鎧を捨てながら立ち上がり、大きなゴブリンを睨みながら冷や汗をかく。

 

 「あれってまさか……」

 「ああ、恐らくゴブリンリーダー……いや、ゴブリンキングかもしれない。まさかこんなところに変異種が居るとはね。多分、町や村を襲うためにこいつは数を増やしていたんだ」

 「そういうことか、確か変異種は他の個体に比べて頭が良いって聞くもの……ね!」


 ニコラが不意打ち気味に矢を放つ。

 

 しかし――


 「カハハッ! 効かないナ……!」

 「直撃のはずよ!?」

 「というか喋った……」

 「クク……女ばかり連れているとはありがたいゼェ! 人間はすぐに苗床になるからナ……」

 「あいつは僕が止める。その間にマイラ達は包囲を突破して町へ救援を呼んでくれ」

 「そんな……!? みんなで力を合わせれば――」


 ニコラがそう言うが、ルガードは目を細めて一歩前へ出てから口を開く。


 「言葉まで喋るアレはロードの可能性が高い。そうなるとAランク相当の化け物ってことになる。僕達に勝ち目は……無い。捕まったらお前達は辱めを受けることを考えたら僕が残るのがいい」

 「……」


 三人がのどを鳴らし『そうなった場合』を想像し脂汗を浮かべる。


 「できれば僕が助かるくらいの時間で帰ってきてくれると嬉しいかな。……行け!」


 ルガードは言い終わらない内に巨大ゴブリンに駆け、マイラ達三人は頷いてからルガードとは逆に駆け出す。


 「<メガファイア>!」

 「三連射……! どきなさい!」

 「<ホーリーアロー>! できればルガードも逃げ――」


 レティが一瞬振り向いたその時、信じられないものを見て派手に転ぶ。


 「なにやってるの、レ……ティ……」

 「あ……ああ……」

 「ガハハァ……活きのいい女は子をたくさん作れるナ……」


 ルガードが足止めをするはずだった巨大ゴブリンは、すでに転んだレティの前に立っており、その背後では膝から崩れ落ちるルガードの姿があった。


 「う、嘘……Bランクなのよ……それを一撃?」

 「に、逃げないと……」

 「逃がさないゼ! お前達、襲エ!」


 巨大ゴブリンの合図でゴブリン達がマイラ達へ近づいてくる。


 「くっ……<メガ――>」

 「きゃあああああ!?」

 「抵抗したらこいつが先にどうにかナルゼ?」

 「レティ……! くっ、は、離れなさい汚らわしい!」

 「ゲヒッヒヒヒ!」

 「いやあ!?」

 「もっと戦力を増やして次は村を襲うゾ!」


 逆さづりにしたレティの足を舐めながら巨大ゴブリンが言い放ったその時――


 「こいつは確かBランク冒険者の……名前はなんだったか……」

 「ルガードさんですよ! ザガムさんあれ!」

 「ゴブリンロードか、珍しいな」


 ――ザガムとファムが空から降りてきた。

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