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最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~  作者: 八神 凪
第二章:勇者

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その26:勇者は冥王を追う


 「すまなかったな」

 「お、おう……城の兵士を叩きのめすとは……何者なんだお前……」

 「ただのEランク冒険者だ、仕事の邪魔をしたな。もうここに来ることはあるまい」

 

 最初に倒した門番二人に頭を下げて城の外へ出ると、不意に背後から声をかけられる。


 「おい! お前それだけ強いならこの城の騎士にでもなったらどうだ! 騎士団長すら倒したんだろう?」

 「……悪いが興味が無い。じゃあな」


 少し歳のいった男が俺と城のためを思って発言してくれたのだろうが、城どころかこの国に用はないからな。


 「ふむ、とりあえずキアンズの町でハンバーグでも食って城へ帰るか。いや、しかし、宿賃も勿体ないか。人間のルールなどを取り入れるためにもう少し見て回るのも悪くない」


 そんなことを考えながら大通りを歩き、並ぶ商店には服や雑貨の店を物色していく。

 こうなっては大魔王の討伐は火急の用事では無くなったので少しくらいなら羽を伸ばすのもいいだろう。それに帰れば――

 

 「……見合いがある。イザールのことだ、戻った瞬間にセッティングをするに違いない。しばらく戻らなくてもいいだろう」

 「はあ……はあ……お、お見合いってなんですか……!?」

 「ん? ……お前か、どうした?」


 息を切らせて声をかけてきたのは先ほどの立派な装備に身を包んだファムで、彼女は俺の前に回り込むと物凄い剣幕で両手の拳を上下に振りながら大声を上げる。


 「もう、なんで先に行っちゃうんですか! 私に色々してくれたことのお礼も言っていないのに……それにお見合いってなんですか……」

 「あれは俺が短気をおこしただけだ、結果的に良かっただけで本来はこの国を捨てさせるつもりだったからな」

 「どっちに転んでも私が得するやつじゃないですか……あの、本当にありがとうございました!」

 「気にするな、勇者の力がどういうものか知らないが精進すれば身につくのだろう、頑張れよ」


 いつか敵対することがあるかもしれないが、その時にどれほど強くなっているか楽しみではある。

 俺はファムの肩に手を置いてからすれ違うと、またしても回り込んできた。


 「あ、あの、お見合いってなんです……?」

 「気にするな。さ、どいてくれ」

 「お見合い、嫌なんじゃないですか? それで帰りたくないみたいなこと言ってましたよね」

 「……? まあ、面倒だし、結婚などはまだ考えていない」


 俺がそういうと、やや複雑な顔をしてファムはもにょもにょと俺に言う。


 「そ、それじゃ、私が……その、お嫁さん候補ってことで紹介すればいいと、思います」

 「ん? なにを言っているんだお前は。勇者を嫁に出来るわけがないだろう」

 「ううー……! だ、大丈夫です! 私が大丈夫ならそこは自由です! そ、その、代わりと言ってはなんですが、私を鍛えていただけませんか?」

 「鍛える?」


 別に帰らなければいいだけなのでお見合いの件はどうとでもなるが、その後の言葉は少し興味を引いた。

 なるほど、俺が鍛えるのは面白いかもしれない。なんだかんだで魔王軍のNo.2の実力ではあるので、俺と同程度まで鍛え上げれば二人で倒すことが出来るかもしれない……。


 だが――


 「過酷な訓練になるかもしれないぞ? 少し前まで村娘だったお前にはきついかもしれん。それとEランク冒険者に教わっていると嘲笑を受ける可能性もある」

 「構いません! ザガムさんと一緒に居られるなら……じゃなくて、大魔王を倒せるようになるまで頑張ります!」

 「……いい気迫だ。なら、勇者の力を覚醒してもらうとしよう」

 「はい! えへへ、良かった……陛下の言っていた通りだ」


 最後の方でなにか呟いていたが聞き取れなかったので俺はファムに聞き返す。


 「なんだ?」

 「い、いえ、なんでも!? お嫁さん候補だから一緒に居ていいですよね」

 

 教えてくれなかったが、慌てたのは少々怪しいな。まあ、こいつがなにをしても俺をどうにかすることは難しいので、とりあえず話を合わせておくことにしよう。


 「それは構わないが、俺は宿をもう取っているぞ」

 「じゃあ私も同じ‟部屋”で! さっきもらった十万ルピがありますから、ヨユーです!」

 「そういえばそうだったな」

 「あ、でもザガムさんのおかげで手に入ったお金ですし、預けましょうか?」

 「アホかお前は。俺がそれを持ち逃げしたらどうするつもりだ?」

 「ザガムさんはそんなことしませんよ!」


 にこっと笑顔を向けてくるファム。いつか俺に倒されるというのに信頼しきった顔だ。まあ、知らぬ方がいいこともあるか。

 ただ、この顔を見ていると女性を前にすると出る発作のひとつ、顔が熱くなるのが分かる。……調子が狂うなと思いながら、俺はさっさと歩き出す。


 「それはお前がもらったものだ、大事に持っていろ」

 「それなら預かってもらった方がいいかも? 私ドジだし……」

 「どうしてもというなら預かってやってもいいが――」


 と、そんな話をしながら俺達はとりあえずの拠点となる宿へと向かう。

 まさかこんなことになるとは思わなかったが、どうせ領地はそれほど火急の事件なども無いしな。

 ……嫁、か。


 勇者を嫁にした、と言ったらメギストスはどういう顔をするだろうか?

 それはそれで面白い気もするな。

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