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その131:イスラさん、調子に乗る


 サンダーストーム。

 師匠が長い時間をかけて開発した雷を呼ぶ大規模魔法で、空気・湿度・温度といった様々な要因で発生する雷を、魔法を使い条件を合わせることで放出することができる、というものですね。


 あれです、寒い日に金属に触れたらバチっとするじゃありませんか? あれの超強力版だと思っていただければ幸いです。


 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!?」

 「嘘だろ、こんなことでワイバーン部隊が――」

 「ぶくぶく……」


 効果は抜群ですね!

 残っていたワイバーン部隊は煙を上げたり、気絶した状態で落下。

 黒竜の三馬鹿についてはというと、


 「グォォォォ……」

 「あ、がが……」

 「ち、くしょう……こんな馬鹿げた魔法……で……」


 肉薄していた二頭の動きが鈍り、騎手は髪の毛が爆発したみたいになって兜が転げ落ちましたねえ。


 「ぷくく……」

 「笑っちゃいけませんよう……ぷふー」

 「フルス、キリック!? まさかドラゴンまで効果がある魔法とは……! あ!?」


 残った一頭が旋回し、救援に来るのが見えた瞬間、メリーナさんが黒竜へ飛び移り――


 「えい♪」

 「な――」

 「あば!?」


 ――騎手二人を、捨てた。


 「容赦ないな……」

 「まあ、一番戦力を削ぎやすいですしね、騎手潰し。これは騎馬でもおなじことでは?」

 「まあ、落馬と違って助からないだろうがな」


 スパイクさんが落下していく二人を見ながら冷や汗をかく。

 この場合は落竜ですかね?


 そんなことを考えていると、まだ動ける黒竜が急降下して救出。

 その間にスパイクさんを黒竜へと移します。


 「でかいな、こりゃ」

 「安定感が違いますねぇ。さて、魔法抵抗力が高いので魅了はまだ難しいですけど、再騎乗はこれでできないからいいでしょう。後は残りを叩くだけですけど、どうしましょうか」

 「小回りの利くブレイブ君で攪乱し、叩き落としてやりましょう! 行きますよ!」

 「ぴぎゃぁぁぁん!」

 「あ、援護できないから突っ込まないでくださいよぅ!?」


ブレイブ君の翼を癒し、急下降しメリーナさんの言葉を振り切り黒竜へ。


 「生意気な……!」

 「こっちは三人居るんだ、近づいたら叩き落としてやる!」

 「ククク……その狭い足場でどこまで耐えられますかね? <ギガロック>!」

 「なんとぉ!?」


 巨大な岩の塊を頭上に出現させ、確実にトドメを刺しにかかるわたし。

 魔法は効きませんが、こういう物理的な力なら届くんですよねえ。

 

 「町の人を殺した罪、その身で償いなさい!!」

 「くそ、黒竜よ! 叩き潰せ!」

 「ガルォォォォ!!」

 「あら!?」


 黒竜が落ちてくる岩石に目を向け、両の拳で粉砕し、その破片がわたしたちに飛んできました!?


 「ぴぎゃ!?」

 「ああ、ブレイブ君!? いたっ!?」

 「ふん、自身の魔法を返された気分はどうだ! ワイバーンが気絶した、黒竜よ尻尾を掴め!」


 騎士の指示で飛び掛かって来た黒竜に、岩が頭に当たって落下を始めたブレイブ君に為すすべなく捕まり、落ちそうになったわたしは背中にしがみ付く。


 「この……<ギガアイス>」

 「魔法は掻き消えるんだよ。さて、このまま槍を投げたらお前は串刺しだな。かみ砕かせるのもいいか。……ん?」

 「こっちは任せろ」


 上空からスパイクさんが矢で援護をしてくれますが、三人いるので防御面も安心とばかりに迎撃。

 その瞬間、ブレイブ君の尻尾がくしゃりと潰されるのを見て、わたしは息を飲む。


 「まあ、とっとと殺そう。また、つまらねえ手を使われたら困るしな。あばよ」

 「あ……」


 っという間に、騎士の手から槍が離れ、わたしはそれを避けるため身を翻す。


 が、ダメ。


 そのまま体は落下を始めた。

 スパイダーネットは間に合わない……! さらに上空に見える黒竜が動かないところを見ると、制御は出来ていないらしい。

 顔を出しているスパイクさんとメリーナさんのぎょっとした顔と目が合い――


 「ああああああああああああああああ!? 死ぬ! このままだと確実に死にますねぇぇぇ!? 何故こんなことになってしまったのか……それはわたしが可愛いからに違いありません……!!」


 自分でもなにを言っているのか分からないですが、とりあえずこのままでは原型が残るかどうかも怪しい死に方を……あ、意識が遠く……


 気絶して死ぬならまあいいかと目を瞑って思いつつ、最後に着地する瞬間、爆発魔法を撃てばふわりと浮いて助からないかと考えを巡らせる。


 「ええい、ままよ……!」

 「なにをぶつぶつ言っているんだ、お前は?」


 聞き覚えのある声が聞こえたその瞬間、体がふわりと浮かび浮遊感が消えた。

 恐る恐る目を開けてみると――


 「黒竜三頭とは驚いたな。あれを相手にしていたのか、よく止めてくれた」

 「ああああ! ザガムさん!!」

 

 黒い鎧にマントを羽織ったザガムさんがわたしをお姫様抱っこして顔を覗き込んできていました!? うう……この人、結構ずるいですよねえ……カッコいいし……

 だから一緒についてきたというのは内緒ですが。


 「そうだ、ブレイブ君! あのワイバーンを助けてあげてください! 一番の功労者!」

 「む、派手にやられたな。任せろ」


 そう言うと、わたしを抱えたまま上昇して黒竜へと迫り――


 「あん!? そ、空を飛んでいる男が出て来たぞ!?」

 「馬鹿言ってないで上昇しろ、俺達のドラゴンを取り返――ええ!?」

 

 驚愕の表情で騎士達が叫ぶが、構わずブレイブ君を摑まえている黒竜の眼前でザガムさんが止まり、口を開く。


「お前達なかなか強そうだな。ウチで飼ってやろう。だが、まずはお仕置きからだな」

 「グルォォォォ……!!」

 「わわわ!?」


 カチンときたという咆哮を上げ、空いた腕で殴りかかってくる黒竜。

 しかし、ザガムさんはそれをただの拳で払った後、ブレイブ君を掴んでいる右腕を殴った。

 

 「ギャオォォォォ!?」

 「む、折れたか? すまん、手加減をしたつもりなんだが。ワイバーン、大丈夫か? <マクスヒール>」

 「ぴぎゃ?」

 「おお!」


 片腕でわたしを支え、ブレイブ君をもう片方で尻尾を掴んだ後、聞いたことない回復魔法を使うザガムさん。

 すると一瞬で傷が癒えた上に目を覚ましましたよ。


 「すまんがこいつの背に乗っていてくれ」

 「あ、はい! 良かったですねえブレイブ君」

 「ぴぎゃー♪」


 嬉しそうに鳴くブレイブ君はもうウチの一員ですね!

 後は、目の前に居る三馬鹿を倒すのみ! 


 「グルゥゥゥ……」

 「く、くそ、空飛ぶ魔法なんて知らんぞ……!」

 「大きさならこちらが上だ! 黒竜やれるな!」

 「グ……グオオオオオオ!」

 「その意気や良し。少し力が余っていてな、使わせてもらう……!」


 ザガムさんが目を細めると、周囲の空気が一気に冷え、背筋が寒くなる。

 いえ、違いますね……これは……ザガムさんに恐怖しているから……

 ちょっと力を出しただけでこれ、ですか!? 【冥王】とはいえいくらなんでも――


 「む、なんだ?」

 「ぐるるん……」

 「「「……」」」


 それはわたしだけでなく、相手にも伝わったのでしょう。黒竜は折れてない腕で白旗を上げ、三馬鹿は気絶。

 空中戦の決着がついた瞬間でした――

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