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戦闘員育成教育学校(仮)  作者: 藤木一花
3/3

家来の襲来


 「ん‥‥桜か?」



 「はいっ、そうです。桜です!」



 「久しいな、桜。まさかこのクラスにいたとは」



 どうやら急に声をかけてきた謎の少女は河流の知り合いみたいだ。



 「おい、河流‥‥‥」



 「ああ物部、紹介が遅れたな。私の両親が師範を務めていた河流々剣術の道場の後輩だ。私のことをよくしたってくれていてだな‥‥‥」



 「おう‥‥そんなことはどうでもいいんだが‥‥」



 「なんだ?言いたいことがあるならはっきりと言わないか」





 「なんでそんなヤツがクラスにいるのに気づかねーんだよ!!」



 「‥‥‥‥‥」



 「おい、言ってやったんだから何か言えよ」



 「それで、桜よ。何か用があったのだろう?」



 

 「おい!露骨に話を逸ら――――――――「その人なんかじゃなくて私と組んで下さい!」え?」




 コイツ、今なんて‥‥‥?




 「おいお前、桜と言ったか?いきなり出てきてそれはないだろ。」



 「気安く名前で呼ばないでください。私は犬塚桜です。いきなり出てきたのは重々承知ですが、貴方のような人と組むくらいならいきなりだろうと私と組んだ方がいいに決まってますっ!」



 何なんだコイツは‥‥。意味が分からない。全く話が通じる気配がない。



 「桜。その申し出はありがたいんだが、私はもう物部と組むと決めてしまったんだ。悪いな」



 よし、流石に本人に言われれば諦めざる負えないだろう。



 「で、では!私がその人を倒せば問題はありませんか?」


 

 本当に意味がわからない奴だ。だが、それは聞き捨てならない。


 

 「おい犬塚、随分簡単に言ってくれるな。俺に勝てるとでも思っているのか?そこまで言うんならその勝負、受けてやろうじゃないか」



 「私は今日、調子が良いので負けるとは万が一にも思っていませんっ!」



 「調子がいいだけで勝てる訳ないってことをわからせてやる」



 互いの同意を得て、俺たちは模擬戦空間に入る準備をする。



 「気をつけろよ物部、私の桜との戦績は、99勝‥‥‥‥1敗だ。」



 な!?河流に勝ったことが‥‥‥てかそもそも戦績って


 

 「お前の実家の道場には‥‥模擬戦空間でもあったのか?」


 なんて、さすがにないか‥‥。おそらく竹刀を使っての勝負だろう。


 「あったぞ?」



 はあ!?ありえない。どれだけ希少なものだと思ってるんだ。


 まあそんなことはどうでもいい。河流に1勝していることが問題だ。



 「話を戻して言っておくが、体調管理もできてこそ一流だ。調子が悪くて負けたわけではない」



 俺の考えていたことをきれいに否定してきやがった。


 「桜はその日の調子によって強さが大きく変わるんだ。私を倒せるくらい調子の良い日は相当珍しいが、あの言い方だと可能性はある」



 「なるほどな‥‥‥因みに秘技も使えるのか?」


 「いや、秘技は日によってブレのある者に教えるほど軽いものではない」



 そんなに凄いものなのか。しかし、あの厄介な技がないだけでかなり違うので素直に安心しておく。



 言うまでもなく、犬飼の武器は刀だ。



 『戦闘準備。双方準備は整っていますか?』



 「もちろんですっ!」


 「いつでもいける」



 『戦闘開始』



 ひとまず、犬飼と距離を取――――――――


 「させませんっ!」



 どこかで見たことがあるような、完璧に首を捉えた一振り。


 なんとか間に剣を滑り込ませる。が、体勢が悪かった。そのまま吹き飛ばされる。

 

 さらに恐ろしく正確な追撃。

 開始早々、俺は防戦一方になる。

 

 それに、攻撃を仕掛けようにも全く隙がない。どこから剣を振るっても防がれ、その上カウンターを喰らわされそうだ。


 となれば、勝ち筋はたった一つだ。



 俺は勢いよく距離を取る。犬飼は一瞬で反応して距離を詰めてくるが、一瞬あれば十分だ。


 俺の剣が、犬飼の脇腹を掠める。


 「な‥‥‥!」



 俺は距離を取ったとき、犬飼の身体の動きから次の一撃を予測し、それに合わせて剣を振るったのだった。 



 「油断しましたが、もう終わりです!」


 「河流々剣術秘技‥‥‥」


 そんな‥‥犬飼は使えないはず!こんなことはありえない!‥‥とは、言い切れない‥‥‥‥!



 「【檸檬式回転突レモネード】」



 厄介な技だ。しかし一度破った技でもある。


 

 カウンター。当然のように防がれるが、剣を離して手を伸ばす。


 

 「見てましたよ。あなたの模擬戦!」



 完全に狙っていたであろうタイミングで、同じく刀を手放した犬飼の回し蹴りが繰り出される。

 秘技もブラフだろう。


 

 「ああ、知ってるよ。視界の端に入ってたからな」


 半身を下げ、犬飼の蹴りを紙一重で交わすと同時に右手に溜めを作る。


 「か、はっ!」


 俺の正拳突きはきれいに犬飼の溝落に入った。



 『勝者、物部紡』


 

 ぐらっ


 「おっと」


 気を失った犬飼が倒れそうになる。そして犬飼を支えながら気づく。


 

 「やばっ、強過ぎて女の子だってこと忘れてた。本気で殴っちまった」



 俺は慌てて犬飼を保健室に連れて行く。河流もついて来ようとしたが、俺の本気の謝罪を見られたくなかったので待っててもらうことにした。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 河流桃。彼女はずっと私の憧れだった。

 何回模擬戦を挑んでも、全く嫌な顔をせず、笑って受けてくれた。

 そして叩きのめしてくれた。何度もアドバイスをくれた。


 私が勝ってしまったときも、


 「強いな、桜は。私ももっと強くなって、絶好調の時の桜にきっと勝って見せる」


 それから、私は一度も桃さんに勝つことは出来なかった。

 一度勝ったとき程ではなくても、かなり調子の良い日は何度もあったのに。


 

 桃さんが和堂学園に特待生として入学すると言った時には、必死に入学試験の準備をした。


 入学試験当日の調子はあまり良くなくて焦ったが、前もって必死に準備したおかげで楽々合格できた。


 クラスが一緒になった時は初めて神に感謝した。


 そして、だからこそ絶対に勝たなければいけなかった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「ここは‥‥‥」


 遂に犬飼が目を覚ました。


 「保健室だ」



 「そうでした。私は負けてしまったんですね」



 「その件だが‥‥済まなかった。思いっきり殴ってしまった。」


 俺は誠心誠意、気持ちを込めて謝罪する。



 「では、そのお詫びに桃さんを下さい」



 「それは‥‥‥」



 「冗談です。謝らないでください。私の方こそ、無茶言って模擬戦を挑んだんですし、それにあの空間の中では、私達は殺し合いをするんですから」



 「確かにそうだよな。でも、それでも謝らせてくれ」


 

 「俺は、お前が女の子だってことすら忘れて全力で殴ったんだ」



 「‥‥‥‥‥桃さんの時は?」



 「あいつの時は、最後は最低限の力で押し倒したんだ」


 「そうですか、それは‥‥‥嬉しいです」



 「ええ、認められたような気がするので」



 「ああ、強かったよ。また、今度は絶好調な時にやってみたい」



 「(なるほど‥‥気づいてたんですね)ええ、もちろんですっ!」


 



 


 犬飼桜→桃太郎の家来である犬。はなさかじいさんでは最終的に桜になるので桜。

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