桃太郎と決闘
これはそう遠くない未来の話。
地球は宇宙人、異世界人からの攻撃を受ける。
宇宙人や異世界なんて存在しない?否。地球の科学レベルが低すぎて地球に干渉してこなかっただけである。
発展を続けた地球は、宇宙人から略奪の対象となり、異世界人からは警戒の対象となった。
だが、いくら発展したとはいえ、宇宙人たちの技術には地球は到底及ばない。
しかし、そんな時にある天才科学者が現れた。その男は地球外生命体にのみ効果を発揮する強力な武器を創り出した。
それから訓練を積んで宇宙人や異世界の怪物たちと戦える存在が現れる。
徐々に事態を好転させていく地球だが、侵略者たちも対策を重ねて諦めることなく攻撃を続けてくる。
そんな中、地球外からの侵略者たちと戦える者たちを育てる学校が世界中に建てられるのであった。
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今日は入学式だ。戦闘員育成教育学校の一つ、和堂学園の入学試験に主席合格した俺、物部紡は、ワクワクしながら学校に向かっていた。
和堂学園では、学年ごとの序列1位の生徒には学食を全て無料で食べることのできる権利が与えられる。
そして、入学してすぐの序列は入学試験の順位となっている。つまり俺が序列1位だ。楽しみで仕方がない。
そうこうしている内に到着した。
「こちらが学園のバッチになります。ご自分の学年ごとの序列順位が乗っているので校内にいるときは常に付けていて下さい。」
入学受付のカウンターに行くと、受付のお姉さんからそう言われる。
バッチは銀色の淵で覆われていて中には4という数字が。
恐らくこれが学年の序列だろう。
ん?4?1じゃなくて?
「あの、この序列順位というのはどうやって決められているのでしょうか」
俺はついつい受付のお姉さんに聞いてしまった。
「はい。基本的には入学試験の順位ですが、特待生3名が同立1位となるため、入学試験の順位よりも3位だけ落ちていることになります」
「な、なるほど。わか、りました。ありがとうございます」
お、落ち着け!落ち着くんだ物部紡!
まあいい。どっちにしろそのうち抜かせばいいんだ。気にするな。
その後入学式に参加する俺たち1年生は体育館に集められる。
まあ特に変わったこともない普通の入学式だった。
書くこともないのでスキップさせて頂く。
そして、俺たちはそれぞれ各教室に集められる。
俺はAクラスだった。
因みに特待生たちはそれぞれ別のクラスになったらしい。
もちろん俺のクラスにも一人いる。河流桃という女子だ。機会があったら戦ってみたい。
説明しておくとこの学園、というか全ての戦闘員育成教育学校では、生徒同士で模擬戦を行えるようになっている。
一時的に身体を地球外生命体、宇宙人や異世界の奴らと同じように変化させられる空間が開発させられたのだ。空間から出て、身体の変化が終わると同時に傷なども元に戻るようになっている。
教室で席に着くと担任と思われる教師が入ってくる。
「では、全員席に着いたな。私はAクラスの担任を務める浅宮だ。よろしく頼む。今日は簡単な説明を受けた後、今後の特別授業等に関わってくるチームを決める。」
説明によると、この学園では、毎週末に戦闘訓練の授業があり、チームで実施することになっているらしい。
チームは一人でも構わないが、チームでの実績が成績に関わってくるのでおすすめはされないようだ。
そしてチーム決定には模擬戦空間の使用が許可されている。チームメンバー候補の実力を測ることができるのだ。
「ねぇねぇ河流さん私達と組んでくれない?」
「河流さん、俺達と」
河流桃の人気は凄まじいな。
小学校6年の時、訓練中の身でありながら、異世界から送り込まれてきたオーガを一人で倒してしまったらしい。
そしてついた二つ名が【鬼殺し】。安直な上に物騒だ。
「静まれ!悪いが私は誰とも組む気はない!誰と組もうと足手まといにしかならない!私は一人で十分だ」
おっと。これは驚いた。確かにアイツの実力なら断るのは当然だが、こんな言い方をするとは。
河流の周りに集まっていた奴らが離れていった。
俺はその隙に河流に近づく。
「おい河流、俺と組まないか?」
「なんだお前は、話を聞いていなかったのか?私は誰とも組まないと言っただろう」
「理由は足手まといになるから、だろ?自分より強い奴と組む分には問題ないだろ」
「なに?お前は私よりも強いと言うのか?」
「ああ、強いね。お前に負ける気はしない。それなら模擬戦でもするか?俺が勝ったら俺のチームに入ってもらう。」
「おもしろい。だが、その条件は駄目だ。私が勝ったら何でも一つ言うことを聞け。それなら相手をしてやる」
「なるほど、いいだろう。ならこっちが勝ったときの条件も同じでいいな?内容は決まっているが」
「ああ、構わない」
話はまとまった。用意された戦闘空間に俺たちは武器を持って入っていった。
「我が家に伝わる秘伝の刀の内の一つ、この《白皇》でお前を切り刻む」
「やれるもんならやってみろ」
河流の武器は日本刀のような刀。俺の武器はオーソドックスな剣だ。
『戦闘準備。双方準備は整っていますか?』
「ああ」
「無論だ」
『では、戦闘開始』
その瞬間。
「河流々剣術秘技‥‥【檸檬式回転突】」
河流の刀の先が完全に俺の首を捉える。ありえないくらい速い。本当に人間なのか疑ってしまいそうになる。
――――――――だが、予想済みだ。
俺は河流の構えから大まかな動きを予測し、受けきれる構えを取っていた。
そして、力で無理やり弾き返す。
これを瞬時にやったと思わせることで俺が河流と同等以上の技術を持っているというハッタリになる。
もちろん河流の実力はその技術からのものだと言われている程なので技術において俺は彼女に敵わない。いや、僅かにおとる。
しかしこのハッタリから河流の動きが制限されてくる。
「くっ‥‥‥。」
河流は素早く俺と十分な距離を取る。
しかし俺はそのまま真っすぐ河流に向かって距離を近づけ、剣を振るう。
俺の技術を過大評価している河流は自分が躱した時の動きを警戒してこの攻撃を受けざるを得なくなる。
しかし俺が河流に勝っているのは技術ではなく力。
真っ当から俺の攻撃を受けきれるはずがない。
「ぐっ‥‥ま、さか‥‥こっちとはな」
「これでっ!終わりだ!!」
俺はさらに剣に力を込める。なんとか持ち堪えていた河流も押し潰されるはずだ。
俺の剣は地面に突き当たる。ん?地面?
「なっ‥‥‥!」
河流の姿は俺の目の前から消えていた。そして斜め後ろから俺の首を寸分違わず捉えた刀が振るわれる。
刹那で回避した俺に待っていたのは
「――――――ぎ」
ぎ?河流々剣術秘技?まずい‥‥!!
「【檸檬式空間斬】」
飛ぶ斬撃‥‥!しかも正確過ぎる。さっきの突きの時にも思ったが今ので確信した。
河流の使っている刀は、能力付きの武器だ。
戦闘員及びその候補生が使用する武器は、かつての天才が生み出した地球外生命体にしか効かないという特殊な武器だが、さらにその中に、特別な効果を持つ武器が存在する。それが能力付きの武器だ。
「くっ‥‥」
バランスを崩しつつも躱すが、斬撃は頬を掠める。
「河流々剣術秘技」
河流は容赦無く追撃を構える。
ははっ。
こうなっては仕方ない。俺の剣術の全てを次の攻防に懸ける。
「【檸檬式回転突】!!」
今っ!!
俺は河流の攻撃に合わせてカウンターを仕掛ける。
俺の剣は確実に彼女の身体を捉えた。
はずだった。
「まだ‥‥‥!」
ギリギリで技を止め、俺の剣に刀を合わせてくる。
ただし、ここまで想定内。
俺は剣が刀とぶつかった瞬間、剣から手を離し、空いた手で河流の首元を掴み、押し倒す。
「く‥‥‥参った」
『戦闘終了。勝者、物部紡。』
危なかった。予想より遥かに強かった。何度も負けるかと思った。
「私の負けだ。お前のチームに入ろう。」
「まあ待て」
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「やはり無理やりチームに引き入れても意味がない。命令は関係なく、俺のチームに入ってくれないか?ここで断るならもう誘わないと約束する。だから安心してくれ。」
「うむ‥‥‥」
そう、強制的にチームに加えても今後上手くいかないのは明白。それなら断られてもいい、自分の意志でチームを組みたい。
「わかった、お前を信じてみよう。これからよろしく頼む」
「‥‥‥ああ、ああ!こちらこそ。よろしく」
記念すべき一人目のメンバーが 決まった瞬間であった。
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キャラクター等の名前の解説です。サブタイトルから分かるかと思いますが、この話は昔話をもとにキャラの名前をつけております。
河流桃→河から流れてきた桃→桃太郎
白皇→桃の品種です‥‥‥‥。