ホラー番外編~夏の終わりに~思い出一筆
夏の終わりに……。
怖い話には2通りある。
友達の友達から聞いた話など信憑性のない創作怪談。
本当にあった事、または本当に感じたことを元にした実話怪談。
この両者は真偽の表裏一体というよりも同一から産まれた類似品と私は思っている。
例えば出所が不明な怖い話は一般的にほぼ創作に分類されるだろう。
逆にどんなに作った話に思えても目の前の体験者が真に迫る恐怖を感じたのならばそれは紛れもない実話怪談なのだ。
故にこれから私はひとつの話をする。
それは、ある人には取るに足らない与太話なのかもしれない。
また、別のある人には思いがけず共感できる実話になるかもしれない。
まあ、厳密に言えば伝達手段が、言語という制約を受けている段階で既に私の妄想に成り下がっているのかもしれない。
ともかく、これは私が体験した話だ……。
青年期、私は病んでいたことがある。
俗に言ううつというやつだ。
結構ひどい症状だった私は日常生活も覚束なく、まともに働ける状態ではなかった。
それでも何とか生きながらえていたが、心がすり減り、精神のガス欠状態だった。
それでも休むため、眠れずともベッドに横になる。
そこで―――――――騒音に見舞われる。
時間にして10分ほど、ピシ、パキッ、と散発する物音。
そう、オカルト風に言えば私はラップ音に見舞われていたのだ。
時期は早秋くらいだったか……エアコンの冷房を点けていたから暑い日だったのだろう。
だから初めはこのラップ音が寒暖の差からくる物音なんだと思っていた。
しかし、部屋を冷やし続け既に15分、未だ鳴り響く怪音。
今の私がそんな状況に陥ったらすぐ驚き、部屋から逃げ出すだろうが、当時はそんな気力がなかった。
なにより、どう考えてもおかしい状況なのに、それをおかしいとさえ思えなかったのだ。
そんな異常な状況で私が正気?に戻ったのは、最後のラップ音から3分ほど経過した頃―――――――。
あり得ない音が鳴り響いたのだ。
バキッッ!!!
部屋中に弾けた暴音。
反射的に動けない身体を跳ね起こす程の驚き。
その音はテレビから聞こえ、バキッというプラスチックが壊れたときの音とそっくりだった。
私は慌てて電気を点け、テレビを調べる…………も、どこも異常がなかった。
そこで私は久しく忘れていた怖さという感情を取り戻し……神社の一件に続くことになる。
…………と、ここで創作ならば一盛りどころか幾重に伏線張って重厚な話に持っていくのだが今回は実話(実感としての怖い話)なので落ちだけ述べるとする。
その恐怖から数日後とある神社に行くのだが、ここは結構大きな神社で参拝者も多く訪れていた。
ひとりでは行けない状態だったので家族と一緒に訪れたとき、家族が「一緒にお祓いを受けようか」と私に訊ねる。
すると―――――――、
(お祓いなんて意味ないよ―――――)
という誰かの声が頭に入ってきたのだった。
流石にこのときだけは、俺はもう駄目なんだと思った瞬間でした。
まあ、それから紆余曲折合って、今の私はこの一瞬一瞬を楽しく生きているのですが、当時を振り返ると…………本当に怖い状況の渦中にはまると怖いと思わないのかも(思う余裕すらない)しれないと思った振り返りの夏でした。
以上、ホラー番外編でした。
嘘か真かそれは神のみぞ知る――――――――――――――――――――――。
閲覧ありがとうございました。