メドラドの街
魔の森を抜け
見渡しのいい平原を二時間程歩くと城砦が見えて来る
歩いてるのはリーヴ君達だけど
私はケレスに乗って揺られてるだけ。
さすがにワンピース姿とウェッジミュールで歩くのしんどいって
時刻も夕方になる頃、無事に街に入れそうで何よりね
「さぁ皆行くよ」
「あぁ!街に無事に入れるといいな!」
「シルバーウルフって騙されてくれるかな?」
リーヴ君達なんでそんなに鬼気迫る感出してるの?
大丈夫だってば~きっと何とかなるよ~
何か城砦から人がすんごい出てきたね 兵士の人達?え?騎士もいる?
「お止まりください!」
一人の騎士が前に出てきて叫ぶ
「やべーよ!やっぱ大事になったよ!」
「なんで騎士がいるの?」
「騎士は基本王都から出ないはずなのに」
ブリューレイク王国の騎士は国王や城を守るのが勤めだ
国を守るのは王国軍の兵士達
リーヴ君ちらっと私を見てどうしたの?
「そう言えばさっきフェンリル達と契約って話の時にウンディーネ様に会うとか言ってたような?」
「そうだよ?ウンディーネは湖の乙女の儀式があるって先に王都に行ったけど私とシルフィーは街を観光しながら王都に向かう予定なのよ」
ねー!とシルフィーと顔を合わせる
「そこにいる大型の魔物はこちらに危害を加える事はないとしていいでしょうか?」
騎士は少し警戒しながらも私達に声をかけ近付いてくる
レンとマリーは目を合わせ頷き
「そうだ!この少女の従魔だ!」
「Aランク冒険者の私達が保証します」
2人は金色のカードを騎士達に見えるように掲げる
やーね、ケレス達がむやみやたらに危害加える訳ないじゃない
…初対面で襲われかけたけど
後ろに五人組の兵士を連れ騎士が私達の元にくる
「私はブリューレイク王国騎士団所属。聖騎士ガラハットです」
金色の飾緒に左胸には勲章のメダル
赤色のラインが所々に入った白色のスーツベースの制服をピシッと着こなし
足を揃え手袋をはめた右手を胸に置き騎士団の敬礼する
おーなかなかの好青年だ。清廉潔白って感じ
「聖騎士だって?!」
「ガラハット様ってお父様直属の部下じゃない!」
「おや、マリー嬢もご一緒ですか。それに貴方はサクソン伯のご子息ですね?」
マリーの父親はモルドレッド·ボルドス
このボルドス領の当主であり国王直属の聖騎士だ
レンの父親はボルドス家の分家でボルドス辺境の北側を治めているサクソン伯爵だ
まぁなんて事でしょう
レンとマリーは貴族の出でしたか
全然貴族に見えないレンと
少し良いとこの出身くらいの見た目のマリー
「レンとマリーは貴族出身だったのね?私、敬語使って敬った方がいいかしら?レン様マリー様」
敬うつもりはないが、からかう程度に言葉を投げ掛けると
「やめてくれ!伯爵家って言っても俺達は家を出た、ただの冒険者だ!」
「そうだよ!マキナに様付けされるなら私はマキナ様ってあがめたてまつるよ!」
わたわたする二人が面白くてつい笑っちゃった
「まぁここで話すのもなんだから中に案内してくれる?」
イケメンエリート騎士ガラハットに提案する
「はっ!では案内致します」
「あっそうそう!これあげる」
またまた存在を忘れかけて
わざと森の中に置いたままだった
誘拐犯の檻を捕縛で、そのままわざと地面を引きずるように思いっきり魔力で引き寄せる
ズザザザザザザァァァァ――――!!!!!! ズンッ!
ガラハットの後ろにいる兵士達の前に置く
すごい勢いで現れた檻の中に気絶している男達を見て唖然とする兵士達
ガラハットも動揺している
「もう俺この人達が可哀相にしか見えない」
「うん、わざとが二回もあったもんね…」
「森に放置したのも目が覚めたこいつらが喚いたからだもんな!」
誘拐犯達は涙、涎、鼻水、漏らしてるのもいて気絶していても近付きたくない「うわ汚…」つい漏れる声
「自分でやっといてまじかよ!怖っ!」
「さて、ガラハットさん行きましょうか?レン、兵士さん達に説明よろしくね?ケレス達もしばらくその汚物…間違えた、誘拐犯達を見張っててくれる?」
大声を出したレンに後は任せよう
「マキナといると俺疲れる…」
少し疲れた様子でボソッと呟くリーヴ君
ケレス達フェンリルは外で待機することになり、
リーヴ君の手を逃がさないとばかりにガシッと握り
マリーと一緒に街の入り口である城砦に入り、少し歩いて階段を上がり貴賓室であろう一室に通され
テーブルを挟んでガラハットの向かいにある三人掛けの椅子にリーヴ君とマリーと座る。
皆が座った頃、ミドルエージな執事とキリっと品のあるメイドが部屋に静かに入り
紅茶と軽食の用意をしてくれたので
「ありがとう」と声をかけ紅茶をもらう
「うん美味しい」軽食のサンドイッチと焼き菓子をパクリ
「マリー嬢とケットシーの貴殿もどうぞ」
「ありがとうございます」
「ご好意に感謝します」
リーヴ君達が貴族の作法で紅茶や軽食に手を付ける
私は貴族じゃないしそんなのしないよ?
なんで異世界まで来て社会人のように気を使わないといけないのよ。めんどくさい。
「では、改めてガラハット·キャラックです。爵位は子爵になりますが王城に勤めています」
ガラハットが座りながらお辞儀をする
「マキナよ。よろしく」
「ケットシーのリーヴです」
「ボルドス家が次女マリーです」
「そしてこちらの二人がボルドス家の執事セバスとメイド長マイヤーです」
出た~セバスー!執事って言ったらセバスチャン!
マイヤーってあれかな?ロッテンマイヤー先生かな?
私が脳内で興奮している間にマリーが挨拶する
「二人とも久しぶりね」
「お久しぶりでございます」
「お嬢様もお元気そうで何よりです」
セバスとマイヤーはマリーにお辞儀をする
「マキナ様、今回私がボルドス領に来たのはマキナ様をお迎えにあがるためです」
「ウンディーネに何か言われたの?」
このガラハットとゆう男、実はウンディーネの加護持ちだ
もちろんシルフィーの事も見えている
なぜ見えているシルフに声を掛けないのかは、貴族の作法だ
貴族は上の者に声を掛けられるまで下の者は話掛けれない
「はっ!ウンディーネ様の主であるマキナ様がブリューレイク王国の王都に来訪されるとの事、不便のないように取り計らえと」
「え?何それ?」
やだリーヴ君びっくりしないで?私もしてるから
ウンディーネの主にいつなったっけ?
「湖の乙女の儀式を観に行くだけだからそんなに仰々しくしないで欲しいの。私は気ままに旅がしたいだけなのよ?ちなみにこの事って何処まで話が通っているの?」
大袈裟にされたらたまんない。
最悪王都に行くのはやめようか?
「はっ!私とモルドレッド隊長にランスロット騎士団長と宰相様閣下、そしてブリューレイク国王陛下です」
国のトップ出てきちゃったよ
大分上に話いってるよ
大事になる予感しかないよ
「ねーねーマキナ様?マキナ様はいつからウンディーネの主になったの?私は?」
微妙な空気の緩和材シルフィーちゃん
「そうね、私もいつなったのかと思ってたの。シルフィー知ってる?」
「分かんない!でもマキナ様がウンディーネの主ならシルフィーの主でもあるって事だね!」
なぜそうなるか分からないがシルフィーが自信を持って言うので、きっとそうなんだろう
「ねーガラハット?ウンディーネの儀式はもう始まるの?」
シルフィーがガラハットの前までふよふよ飛んで行き問う
「風の大精霊シルフ様!お声を掛けて頂き光栄です!
湖の乙女の儀式は二十日後の三の鐘が鳴る頃です」
一の鐘(朝の6時)で起床し
二の鐘(9時)仕事を始める
三の鐘(12時)貴族は昼食 平民は1日2食
四の鐘(15時)仕事を終え帰宅
五の鐘(18時)夕食時
この鐘の音を基準にして行動する
貴族や裕福な家には時計はあるが平民はない
季節は日本と変わらず春夏秋冬
ちなみに今は初夏
ユミールで二十日後は夏の訪れの日と言われている
「楽しみだな」
リーヴ君はウンディーネに会いたいんだもんね
くねくねしている尻尾で嬉しさが表れてるよ
「ウンディーネの気持ちは嬉しいけど気にしなくていいわよ?皆で楽しく観光しながら行くから」
「ですが…」
「ねっリーヴ君!」
「え?俺も?!」
「当たり前でしょ!リーヴも一緒に行くに決まってるんだよ!」
シルフィーが当たり前って言うなら当たり前なのよ?
「旅は道連れ世は情けってね」
「また言った!それ何だよ聞いたことないよ」
「旅をするときに友達がいると心強いよね、世の中を渡っていくには仲良くやっていくことが大切だよね!」
適当にかいつまんで説明しとこう
「マキナ様の言う通りだよリーヴ!」
「まぁマキナとシルフ様がそう言うなら一緒に行くけど」
自分のしっぽを持って友達って言葉にちょっと照れてるのを誤魔化すリーヴ君可愛い
「ではマキナ様の望む通りに、ウンディーネ様と国王達には私から責任を持って伝えますので」
「ありがとうガラハット」
「いえ、それとこちらを」
ガラハットはゼバスに合図をして布に包まれた小さなカードを持ってくる
「これはマキナ様に何かあった場合にモルドレッド·ボルドス様が身分の保証をする物です。それと迎えに行った時の大きな魔獣は聖獣フェンリルですね?」
「えぇ」
「やはり…。混乱を避けるために、街に入れるなら聖獣フェンリルとは明らかにせず冒険者ギルドで従魔として登録する必要があるのですが、そちらはマリー嬢にお願いしても?」
「はい、もちろんです」
「あの、破落戸達の事で冒険ギルドから報告は上がると思いますが…」
リーヴ君が代表して子フェンリル誘拐事件とブラックサーペント暴走事件の説明をガラハットにしてくれる
マリーは森の様子を説明する
その間
森を出てから私の髪に隠れながら右肩で器用に寝ていたメイが起きたので亜空間の私の部屋から新品の猫じゃらしを取り出し
メイと遊ぶことにする。
「みゃっみゃっ!」「やぁ!とう!」
なぜかシルフィーも乱入する
「まぁ可愛らしい猫ちゃん」
どうやらメイド長のマイヤーさんは猫好きのようだ!
勤務中に私語を発して「申し訳ございません」と恥じるが
メイドの長であるマイヤーさんが職務中に私語を話してしまうぐらいメイは可愛いってことだね
それならはしょうがない
「メイ、この方はマイヤーさんよ。仲良く出来る?」
私はメイを両手で抱えマイヤーさんの側に寄せる
誰彼構わず人を好きになれとは言わないが善悪の良し悪しのために善良な人に触れさせたい
マイヤーさんは仕事に忠実ないい方だと判断出来る
なんで判断出来るって?
私の勘です!
「まぁメイさんと仰るのね?私と仲良くしてくれるかしら?」
下からゆっくり匂いを嗅がせるため手を差しだしたマイヤーさんは動物の扱いをちゃんと分かってる
でもメイは少し近付いて匂いを嗅ぐだけで直ぐに私の肩に移動する
「ごめんなさいね、この子今日保護したばかりだから」
そんなにしょんぼりしないでマイヤーさん
すごい悲壮感出てるわよ?
「ブラックサーペントの暴走にフェンリル誘拐と瘴気ですか…きな臭い話ですね。私達騎士団でも動いてみます」
どうやら話は終わったようでこちらに視線を向けるリーヴ君達
「マイヤー貴方…」
マイヤーさんのこんな姿は滅多に見ないのか執事のセバスとマリーが驚いてる
「ねぇマキナ?今日はもう暗くなっちゃうから冒険ギルドは明日にして今夜は私の実家に行かない?」
マリーが久しく帰ってないだろう実家に誘う
「セバスとマイヤーがここにいるって事はお父様から許可は降りてるのよね?なら、ボルドス家はフェンリルの大きさも気にしなくていい広さがあるし融通も聞くわ。悪い話じゃないと思うけど」
それは魅力的な提案だね
夕方で外は人も混みだすだろうし宿探すのも大変だしね
「お言葉に甘えようかな?」
私のその言葉にマリーではなくマイヤーさんがとても喜んだ表情を見せた
目的はメイか?
「俺は冒険ギルドに行くよ。レン一人じゃ説明するの大変だろうし」
「あ、そうそう!リーヴ君これ」
立ち上がりガラハットに礼をして出て行こうとするリーヴ君を止めて、ある物を手渡す
「これ…なんで?」
リーヴ君の手に渡ったのは月光草
「リーヴ君ってミーミル湖にこれを採取しに来たんでしょ?それを私が邪魔した形になっちゃったからお詫びに受け取ってくれる?」
そう、本来ならリーヴ君はミーミル湖に月光草を採りに来たのに私が巻き込んだので本人は採れずにいたのだ。
水精霊が運んでくれた貢ぎ物の中に月光草があって気づいたの。ごめんね
「いや、すごく助かるけどいいのか?」
月光草は売れば大金になる貴重品だけど私が持っててもね
「いいの。巻き込んでごめんね?」
「本当だよな、俺マキナに会って二日だけですごい色々疲れたし…。でもすごい世界を知れたから感謝してる」
「これからもっと観て、知って、感じる事になるよ」
「ははっ怖いけど楽しみだな」
リーヴ君は月光草を素直に受け取り
じゃあまた明日と言い冒険ギルドに向かった
「じゃあマキナ、私達も行こっか!」
「そうね。ガラハットお世話になったわ。ありがとう」
「いえ、しばらくはメドラドに滞在するので何かありましたら私をお訪ね下さい」
城砦の街側にボルドス家の馬車が用意してあるので
マリーとマイヤーと乗り込む
ここからはロー、レム、ラムも一緒だ
セバスは御者席にケレスは後ろから着いて来る
街中に入ると人の熱気やざわめきがすごいので
馬車の窓からチラッと外を覗くとローも真似して一緒に覗いてくる
中世ヨーロッパの造りのメドラドの街
道が石畳の大通りは夕方から夜になり街灯に火が灯り
帰路に着く人々や外食や飲みに行く人々
外から戻った冒険者達や商売人達で賑わっていた
そして街の人々は
馬車に付き添う大型の魔物を見てびっくりしている
ただその馬車がボルドス家の馬車だと分かると何も言わずに様子を伺うだけのようだ
シルフィーはキョロキョロしメイは外の喧騒に警戒していて肩と髪の間から出てこない
マリーと他愛もない会話をしながら
馬車はボルドス家に向かって街中を移動する――――――――




