フェンリル達とメイ
「え?今なんて言った?」
リーヴ君が目を真ん丸にして聞き返してくる
「だからね、シルフとケレス達も一緒に街に行くからって言ったのよ?」
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起きたらフェンリルの子供達も私の側で寝ており
幸せな朝の目覚め。
二日酔いでふらふらするリーヴ君のために
昨日の夕食で余ったキノコと山菜スープに玉ねぎと冒険者の常備品、固いパンを一口サイズに切ってトロトロに煮込んだオニオンパンスープを作り、食べ終え
なぜか釈然としない様子のリーヴ君と苦笑いのレンとマリー
今日も精霊達にドッサリとお魚、貝殻、綺麗な石、木の実やお花など貢がれて ありがとうとお別れの挨拶をする。
さぁ魔の森を出て街へ行こうかと、存在を忘れかけていた子フェンリル誘拐犯達の檻を回収し、ギガントボアはフェンリルの気配を感じ身を隠しているみたい。男達は気絶しているので静かで運ぶの楽ね。とか言いながら魔の森を歩いていた。
子フェンリル達は嬉しいのかすごくはしゃいでる
フェンリル達を見て
ふと疑問になったのかリーヴ君は私に問う
「なぁマキナって呼んでもいいのか?」
「いいわよ?」
「わかったよ、これからよろしくな。マキナ」
「ありがとリーヴ君」
私が昨日普通に接して欲しいと言ったのでリーヴ君は普通に接してくれるみたい。
昨日の事も何も触れないので私も何も言うまい
「あのさ、シルフ様とフェンリル達は魔の森までだよな?」
「ん?ケレス達とは契約したからこれからも一緒に行動するよ?シルフは自由に気の向くまま行動するから分かんないけど」
「シルフはウンディーネに会うまでマキナ様と一緒に居るよ!」
「そうだね、湖の乙女の儀式だっけ?楽しみね」
さすがに元気なシルフも人混みは苦手なのでウンディーネに会ったらひとまず自分の森に帰るみたい
「え?今なんて言った?」
リーヴ君が目を真ん丸にして聞き返してくる
「だからね、シルフとケレス達も一緒に街に行くからって言ったのよ?」
そうそうケレス―――フェンリル達とは主従契約をしたの。
フェンリルの子供達はまだ子育ての途中で
普通は親フェンリルの魔力と自然の魔力を取り込み成長するんだって
でも私が助けた子フェンリルは私の神力入り魔力を身体に取り込んだので、これから私が魔力を与えないと成長出来ないと。
だから助けた子だけ主従契約してフェンリルから預かる予定だったんだけど…
他二匹の子フェンリルからブーイングの嵐
⦅兄ちゃんだけずるい!俺も!⦆⦅僕も!⦆きゃんきゃん!
⦅子達よ、我こそ一緒に居たいのを我慢しておるのに!⦆
まさかの親フェンリルまで!
じゃあ皆仲良く一緒に契約しちゃえばいいんじゃない?ってことでポンっと契約しちゃったのよ
それで名前を与えたのよね
まず私が助けた一番上のお兄ちゃんの名前は[ロムルス]
神話で兄弟を命がけで助けて英雄になったロムルスから取った
それと、ロムルスには少し変化が…
私の魔力を取り込んだせいか、毛先がほんのり金色に変わっていた。
次にやんちゃっ子[レムス]と少し大人しい子[ラムス]
英雄ロムルスの兄弟の名前からもじって
親フェンリルが[ケレス]
ロムルス兄弟を助けて育てたと言われる女神の名前から
フェンリル達を名付けると
なぜかシルフも名前欲しい!と寄ってくるけどシルフは名前じゃないの?代替りすると受け継ぐ継承名なんだ?
じゃー安直だけど[シルフィー]でいい?
「えへへっシルフはシルフィーなの!」
子フェンリル達と名前の自己紹介を繰り返すシルフ
余程嬉しかったみたいで、もうちょっとちゃんとした名前を決めれば良かったかしらと不安になる。いや気に入ったならいいんだよ、うん。
「なぁマリー…フェンリルって街入れるか?」
「さぁ?テイマーって職業があるくらいだから大丈夫じゃない?」
「まぁそうか?でも大きすぎだよな?」
「そうだね、テイマーが使役してる魔物の中でも一番だよね」
「あぁ…なんせフェンリルだしな」
「レンとマリー!現実逃避は止めろよ!この現実をどうすればいいんだ?!」
頭抱えて うにゃんうにゃん唸るリーヴ君可愛い
今から行く街は魔の森の西側に面して造られた街
«ボルドス辺境伯領»【メドラド】
魔の森の魔物の脅威から長年街を守り続けてきた歴史ある貴族が治め、冒険者が沢山集う街
「ねぇ西のボスのレッドコカトリスも出てこないけどケレスが?」
「うむ、マキナ殿に名を貰ってから力が漲るようでな 勝手に威圧してしまったみたいだ」
そうなの、名付けてからケレスの魔力が多くなったみたいで更に風格のあるフェンリルになったのよ
「それはしょうがないわよね」
レッドコカトリスって大きい鶏みたいなモンスターを一目見たかったけどしょうがない
そのまま魔物に会うことなく森の中を歩く
「ねぇシルフィーにロムルス、レムス、ラムスお願いがあるんだけどいい?」
「何々~?」
⦅マキナのお願い聞く!⦆
⦅まかせて!⦆⦅僕も!⦆
この子達と契約したら言葉が分かるようになったの
まだ念話が出来る年でもないが私と契約して魔力の繋がりを持ったせいみたい
私の魔力って便利ね
「コカトリスの卵や珍しい物があったら拾ってきてくれる?」
シルフには籠バックを持たせて
子フェンリル達の首にマジックバックに造り代えたショルダーバッグやエコバックを掛けながら防御をかけてお願いすると
いってきまーす!とあっという間に探索に行った
ロムルス達の場所は把握してるし最悪強敵に遭遇しても私の側に召還すればすぐに避難出来るので安心して送り出す
「ケレスも行ったらいいんじゃない?その威圧抑えないと街の中に入れないんじゃないかしら?」
「ふむ、それもそうだな では少し制御してくる」
ダンッ!!
すごい勢いで森を駆けて行くケレス
「マキナはテイマーでフェンリルは突然変異のシルバーウルフって事にしたらどうだろう?」
「あーシルバーウルフかぁこっちじゃあまり見かけないから行けるかもな!」
「問題はマキナよ!神族ってバレたらやばいでしょ?」
「そうだな、下手な貴族に目を付けられたら厄介な事にもなりかねない」
「俺はフェンリルが言うまで神族だって分からなかったぞ?とゆうかな、神族って言っても皆信じるか?」
パシュン
「おーレンはなかなか鋭いこと言うね」
さっきからリーヴ君達が私達の事を考えてくれてたのは嬉しいんだけど、下手に誤魔化してもバレる人にはバレると思うんだよね
完璧に偽装するか誤魔化さずにそのまま行くか
バシュン
「私が神族だと分かるのはユノちゃんを信仰する教会の教皇や司祭とか、大精霊と神獣の加護を持ってる者とかかな?」
リーヴ君は水精霊のまとめ役であり大精霊の眷属のセイレーンの強い守護を貰っていて
マリーは二つの精霊に名付けれる程の魔術師としての力があったけど私が神族だとは思ってなかったみたいだし
ピシュンッ
「確かに…フェンリルが言わなかったら神族なんて思いもしなかった」
「神族って子供の時に聞いたおとぎ話に出てくる幻の存在だろ?」
「あと神獣を連れ世界を導く存在って言い伝えがあったような…」
「あ~私も学院の研究で調べた!」
ドシュンッ
「じゃあマキナは少し雰囲気のある少女で通るか?」
「ん~ちょっと存在感が在りすぎる気がするけど」
「まぁユミールの法則にない変な魔法使うし、常識もあるような無いような…」
ドンッ!
「あー…やっぱ変な魔法だよなぁ?これ」
「そうだね…どんな術式かさっぱりだわ~」
「え?マキナ何やってるの?!」
ケレス達もいないしリーヴ君達も話し込んでつまんなかったので
魔法を造って遊んでみたの!
子供の頃 幽霊な白い書 好きだったんだよねぇ
レ〇ガンやってみたかったんだ!
だから指先に色んな属性集めて順番に撃ってみたんだけど
拳銃みたいで楽しい!
もちろん何もない空間に撃ってるわけないよ?
《探索》《範囲拡大》広範囲に魔力を放って魔物の位置を把握して
ステータスにあった千里眼ってスキルを使って撃つの
これでロムルス達の様子も視て危なくなったらレ〇ガン撃ってたんだけど
千里眼ってスキルは使いなれてないと疲労が半端ないので一度止める
え?私のステータス視たいって?別にいいけど
ロムルス達が帰って来たからまた今度
「どうりでさっきから俺の気配察知に魔物が引っ掛からないばずだよ」
リーヴ君の気配察知より私のほうが広範囲だからね
今いる場所は魔の森の中層で彼らなら手こずらない魔物でも
話し込んでも警戒は怠らない さすが高ランク冒険者達
⦅マキナ!⦆⦅疲れたよ!⦆⦅ただいま!⦆
「おかえり~」
狩りと採取が楽しかったのかブンブンしっぽを振って駆けよって来るロムルス達をわしゃわしゃ撫でる
「楽しかった?」
⦅うん!⦆⦅あのね!⦆⦅これ!⦆
一生懸命に喋る子フェンリルを見てると人の子供と変わらないなと思う。
マジックバックの中を見ようとしたらシルフィーが急いだ様子で帰って来た
「マキナ様~大変だよ~たいへーん!」
そんなに慌てて何があったんだろう?
「シルフィーどうしたの?」
飛んできたシルフィーは私の手を掴むとこっちに来て!と私をぴっぱって誘導する
リーヴ君達も大精霊の大変な事とは?!と困惑しながら付いてくる
連れられて来たのは北寄りの中層で
大きな木々が生い茂って木蔭が幾つもあり昼間なのに少し薄暗い
そして一つの木の根本に着くと
そこには倒れているグレープフルーツサイズの茶色の毛玉と
みかんサイズの緑の毛玉がいた
人の気配に気づいたのか茶色の毛玉がこちらを向き
キシャァー!と威嚇してくるが動けないようだ
「シルフィーこの子達は?」
「フォレストキャットだよ!縄張り争いで北から西側に来たら冒険者に見つかって子供を守りながらここまで逃げて来たんだよ!」
フォレストキャットは冒険者に森の妖精と言われてる魔物で
警戒が強くなかなか見付けられないが
フォレストキャットのしっぽが幸運を掴むアイテムで
貴族に高値で売れるため冒険者に乱獲され、個体数が一気に減ってしまった魔物だ。
「すごい怪我ね…治させてくれる?近づいてもいい?」
子フェンリルの時の様に癒しの魔法を手に纏い近付くが
ヴヴゥ!と威嚇を止めず身体に黒い霧がかかる
「マキナ様…この子瘴気が出ちゃったの…」
「瘴気?!」
シルフィーの言葉に反応してリーヴ君達が武器を構える
瘴気とは人が纏うと自我を失い欲望のまま行動するようになり
魔物が纏うとより狂暴になり高ランク冒険者でも倒すのが難しく聖職者を連れて大規模な戦闘を想定する
瘴気を纏う理由は幾つかあるが殆どは憎悪や厭悪だ
このフォレストキャットもこうなる程に人や環境を憎んだのだろうか
「瘴気には聖職者か上位の光魔術師しか無理だろ?」
「今からギルドに報告しても時間かかるしその間にどんどん瘴気が強くなっちゃうよね?」
瘴気持ちの人は助かる可能性はあるが魔物は1度瘴気を纏ってしまった場合、自我が戻らないので倒すしかない
「マキナなら何とか出来るのか?」
「マキナ様なら出来るよね!?」
シルフィーの言葉で私に視線が集まるが
私の視線は母親フォレストキャットに向いたままだ
「あっ!」
瘴気を纏った茶色のフォレストキャットが動き出したと思ったら自分の子供に噛みついた
「み"ゃ!」
噛まれ鳴く子供のフォレストキャットをすぐさま私の手に転移させて助け出す
「完全回復」「精神回復」
緑の毛玉に魔法をかけると安心したのか、くてっと気を失ってしまったのでシルフィーに託す
そして目の前の親のフォレストキャットに視線を移した時に気が付いたら千里眼を発動させていた
『千里眼:全てを見通す事が出来る
人も物も過去も未来も
正し使用には物事に見合った魔力が必要』
母親フォレストキャットを視てしまう
緑色の子供を産んだことで群れからきつく当たられ弾き出され
産まれたばかりの子を魔の森で隠れ潜み1人で育てながら
魔物に襲われ、冒険者に見つかり追われ
辛い思いをし傷付き憎み疲れきってしまい
もう子供を守るつもりもこの世に留まるつもりもないようだ。
この母親のフォレストキャットがこれ以上の瘴気に飲み込まれないために私は頭を動かして考える
「浄化の炎」
瘴気を纏ったフォレストキャットを
ゆらゆら穏やかに揺れる青い炎が包み込む。
私の力じゃまだ完全に救うことが出来ない事が分かったので
せめて憎みの心は持って逝かずまた新しく生まれ落ちて欲しいと願いを込めて送ってあげることにした
「…にゃーん」
最後に一鳴きして彼女は消えた
「マキナ様…あの子ありがとうって言ってたよ?」
魔物だけど人を襲わず森を大切にするフォレストキャットはシルフィーにとっても守るべき存在だ
「助けてあげれなくてごめんね?」
「ううん!いいの!だってあの子辛かったんでしょ?心が悲鳴あげてたもん!」
「そうね」
シルフィーの頭を撫で、シルフの腕で寝ている緑の子供のフォレストキャットを指で撫でる
「マキナすごいね!何あの魔法!」
マリーがとても興奮した様子で私に迫る
「確かにあの青い炎はなんだ?」
「熱を感じなかったよな!」
子フェンリル達は子フォレストキャットが気になるようで
クンクン匂いを嗅いでいる
「この子はフォレストキャットの突然変異ね」
フォレストキャットは子供も大人も茶色だ
メインクーンの容姿と毛並みにレッサーパンダの色合いで顔も少しレッサーパンダっぽい
大人でも両手に乗るくらいの大きさで森の木に住み
子供は人目に付くことがない
この子もまた緑色のせいでまだ小さいのに母と一緒に群れから追い出され人から追われ母にも当たられ辛い思いをした
「俺フォレストキャット初めて見たよ」
「俺は子供を初めてみたな!」
「突然変異なら他のフォレストキャットは持ってないスキルとかあるよね~気になる~」
「…にぃ」
私達の声で目が覚めたようで、か弱い声で鳴く
「もう大丈夫だよ!」
シルフィーに抱かれて安心なのか人の気配に怯えていない様子
「おいで」
私が手のひらを出すと私の匂いを嗅いで私の顔を見て
もぞもぞと動き手のひらに乗ってくれた
「みぃ」
「これからは私があなたの家族になってもいいかしら?」
優しく指先で撫でると気持ち良さそうにくるくると喉を鳴らす
「みっ!」
「ふふっじゃあこれからよろしくね?そうね、あなたの名前はメイ」
メインクーンに似てるからメイじゃないよ?
まぁちょっとはそうだけど
命のメイ 明るく元気になって欲しいからメイ
⦅みゃ!⦆
私の手のひらから肩にととっと移動するので
少しでも落ち着くようにと癒しの魔力を当てておこう
すると、その魔力に気付いたようでくるくると喉を鳴らしながら私の首に寄り添って来た
ふわふわでくすぐったいが可愛いので良し
この子はまだ小さいので言葉は理解できるが喋れないようだ
「さて、寄り道もここまでにして森を抜けましょうか!」
夜になる前には街に行きたい
私の言葉で皆、移動をはじめる
「そうだな!あと少しだ さっさと行こうぜ」
「マキナってやっぱテイマーでしょ?」
「いや、魔法も使うから魔術師だ…全属性の」
「はははっ!ユミール中探しても全属性所持者は居ないな!」
「そうね、ブリューレイク王国の魔導師マーリン様が四属性よね」
リーヴ君達が喋りながら外層の魔物達をさくっと倒してくれる。
子フェンリル達も負けずに倒しに行くのでとても楽だ
私は彼らが倒した魔物から討伐部位と魔石を《自動拾得》する
勝手にアイテムボックスに入ってくれるからただ歩いてるだけ
森を抜けると後ろからケレスが戻って来たので街に向かう
え?私はもちろんケレスの背中に乗って移動だけど?




