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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
始まりのはじまり
6/42

第6話 : 赤ハギ盗賊団 (2)

しかしこの状況になった以上、捕まるのは仕方ない…...

百歩譲って良しとしよう。


譲ったとしてだ、捕まった後の脱出プランとか考えてくれてるよな…...?

遠くで騒ぎを起こして、その隙に助けにきてくれる的な。


考えて…...くれてないだろうな。

自力でがんば!テヘペロ!

とか言いそうだ。


こうなったら、捕まらないように足掻いてやるよ!

前世では空手を習っていたんだ。

その腕前…...見せてやる!


「あの、抵抗しないので武器を降ろしてもらえませんか?」


残念、白帯です。

それに武器を持っている相手に向かっていくのは危ないですよね......


しかし、我らがコムギさん…...出番ですよ!

そう思って振り返ると、大人しく捕まっている。


「おい、コムギ!何でスキルを使って抵抗しないんだ!」


「だって、あんたがスキル使うなって言ったんじゃん」


「言ったけども…...」


「じゃあ、暴れて良い?」


「それはそれで困る…...」


今ここで暴れられたら、俺も巻き込まれそうだ。


「おい!そいつら、拠点まで連れて行け」


リーダーと思わしきスキンヘッドの男が、指示を出す。

余りに弱そうに見えたからなのか、縄で縛られてすらいない。

それはそれで悲しい......


スキンヘッドと取り巻き達は、俺とコムギを囲むようにして鬱蒼とした茂みの中を更に奥へと進んでいく。

彼らに連れられて暫く歩いていくと、道を塞いでいた木々は減っていき徐々に視界がひらけてきた。


すると正面に高くそびえ立った崖が見えてきた。

崖の真下に到着すると、遠くからでは確認のできなかった細長い階段が上の方へと続いている。

しかも、大人一人が何とか通れるほどの幅しかない。


攻め込むにも、この狭い通路に阻まれて容易にはいかなそうだ。

まさに、天然の要塞と言って良い。


落ちる心配をしながら、何とか到達したその崖の頂点は地上から150mほどは離れていた。

状況は最悪だが、眺めは最高だ。


風は心地良いし、雲ひとつない青空には清々しさを感じる。

周辺は見渡す限りが緑に覆われ、大小様々な山が連なっている。

捕まってさえいなければ…...


頂点に立って自然の雄大さをしみじみと感じていると、

後ろから膝の裏を蹴られ、地面に強制的に膝をつかされた。


「イッ…...」


痛さの余り声が出そうだったが、言葉を発したその瞬間にスキンヘッドが睨みつけてくる。


「…...イ、良い天気だな〜」


畜生、怖えよスキンヘッド。

そう思ったとき、スキンヘッドの背筋が急にピンと伸びた。

スキンヘッドだけじゃない。周りにいた男達全員の姿勢が良くなっている。

誰かがきた…...


「お前達か、森の中をウロついていたと言うのは。

森の中で一体何をしていた。何が目的で森に来た」


ん?子供の声?

そう。声の主は少年だった。

幼い顔をした、小学生のような少年だ。


え〜と。

コムギパターンかな。

実は800歳的な?


「君、何歳?」


「無礼だぞ、貴様!」


声を荒げたスキンヘッドは、今にも襲いかかってきそうだ。


「い、いやいや!あの、見た目の割にはしっかりしているなと...…」


「当たり前だろう!何を隠そう、この方は齢10歳にして赤ハギの正当な後継者に選ばれたリドル様なのだからな!」


いやいや、隠しとけよ…...

サラッと情報バラしてんじゃねえか。


てか、今度はガチ10歳か…


「分かったら、さっさと質問に答えろ!」


「く、国々を巡って冒険をしているのです!

しかし途中で道を失ってしまい、この森に迷い込んだのです」


まあ、嘘ではない。


「怪しい、怪しいぞ!

この森は迷って辿り着くような場所ではないからな。

おい!こいつの所持品の確認はしたのか?」


「いえ、まだしておりません!」


探られて都合の悪いものは何も持っていない。

好きなだけ探してくれ。


「リドル様!ズボンのポケットから怪しい紙片を見つけました!」


ん?紙?

そんなもの入れた記憶はないが…


「やはり読みは正しかったか!その紙を貸せ!」


リドルが手下から紙を奪い取り、目を通す。

すると、顔に不気味な笑みを浮かべながら俺の前まで来て、紙を突き出してきた。


「これをどう弁明する」


『ウェイン殿

 例の件、よろしく頼む

 第10地区組合代表 ガリアーニ』


あんの野郎!余計なもの仕込みやがった。

例の件ってなんだよ!


「違います、違います!

これはその…...なんていうか…...、えっと…...」


「言い訳は無用だ!まさか、組合の連中だったとは!

そうであれば、生かして帰すわけにはいかない。

こいつらを今すぐ始末しろ!」


リドルの命に従い、手下の一人が剣を抜いてこっちに向かってくる。


畜生、このままじゃ殺されちまう。

何とかしないと!


コムギさんは…...

あれ?ニヤニヤしてる。

私には出来ないから、やられちゃえ的な?


「ちょ、ちょっと待ってください!

何でも、何でも話しますから!」


「もう遅い!」


俺の後ろに立ったリドルの手下が剣を構え、今にも振り下ろそうとしている。


し、死んじまう…...

どうしよう。何か、何かないだろうか。


必死で起死回生の策を考えていたその時、目の前に見覚えのない画面が出現した。



《発動可能なスキルがあります。発動したいスキルを読み上げて下さい》

 ・獄炎(ヘルフレイム) [0/1]



…...何だこれ?

これって、街の宿でコムギが使ったスキルだよな。


「えーっと…...獄炎(ヘルフレイム)?」


そう口にした次の瞬間、直径50mほどの大きさをした赤黒い炎の塊が出現した。


ん??発動しちゃった??


にしても、これには見覚えがないぞ…...

コムギのは直径3mほどで、オレンジ色の火球だった。

それと比べると、デカ過ぎねぇか?

それに、凶々しい色をしている…...


「こ、コムギさん??

なんか出てきちゃったんですけど…...これ、どうすれば良いですかね」


「知らなーい、私に聞かないでよ。

自分で出したんでしょ?」


「違う、違う!意図せず出てきたんだよ!

どうしたら引っ込められるだ?」


「ん〜、無理なんじゃない?早く、撃っちゃいなよ」


撃っちゃダメだろ、こんなの。

…...っていうか、こんな時に鼻がムズムズしてきやがった。

集中できない。


「お、おい!僕たちが悪かった!

だから…...頼むから、それを引っ込めてくれ!」


リドルが震えながら叫ぶ。


「うるせー!ちょっと黙ってろ!」


引っ込められるもんなら、すぐにでも引っ込めたい。

できないから困ってるんだろうが。

…...あ、やばい。くしゃみ出る…...


「は、ハクション!!」


「あ…...」


くしゃみをしたその瞬間、赤黒い炎の塊が轟音と共に放たれた。


グウォーーー、ドーン!!ドガーン!!ボガーン!!


この世の終わりとも思えるような音を響かせながら、炎の塊が飛んでいく。


「…..」


開いた口が塞がらなかった。


眼前に広がる景色はスキルによって一変してしまっている。


あれほど生い茂っていた緑は消し炭と化し、見る影も無い。

木々の焦げた匂いが充満し、所々抉れた地面がその壮絶さを物語っている。

それに、正面にあった雄大な山はその半分ほどを削り取られている。

その隣にあったはずの山は、何故だか姿が見当たらない。


と、とんでもねぇ…...

っていうか、フルパワーで発動しちゃうのね…


「ピコンッ!」


目の前の光景に呆然としていると、先ほどの画面に更新情報が掲載された。


《 以下の条件を達成した為、従属可能枠が拡張されます 》

・従属者のスキルを使用

  [拡張内容]

  従属可能枠5 → 従属可能枠10


増えとるやないか…...

さっさと埋めて、一旦実家に帰ろうと思っていたのに…...


「ウェイン、すっごいね!私でもあれほどの威力は出せないよ!」


コムギが横ではしゃいでいる。


後ろを振り向くと、リドルを含めた盗賊団全員が口を開けたまま同じ方を向いて固まっている。

帰るなら今しか無いよな…...


「あの…...帰ってもいいですか?」


リドルに問いかけてみたが、返事は返ってこない。


「それじゃあ…....失礼します」


「こ、コムギ帰ろう」


それにしても、何て事をしてしまったんだ…...

地形を変えてしまったのはコムギではなく、自分の方だった。


あの山、誰かの所有物じゃないよね…...

賠償請求されたら、どうなるんだ…...


「すみません、この事はどうか内密に」


固まったままのリドルに、念の為伝えておいた。

それから拠点の崖を降り、獄炎で消滅して見通しの良くなってしまった道を通って、トンプトンを留めた場所まで向かっていく。


そう言えば、ガリアーニはどうしたんだ?

さっきの獄炎に巻き込まれてくれていれば良いんだが…...



〜 時を少し遡って、ガリアーニはというと… 〜


ウェイン君達の活躍もあって、拠点への侵入はスムーズにいった。


どうやら赤ハギには、新たな後継者が現れたようだった。

その正体までは分からなかったが、現段階ではその規模も含めて脅威となる程ではなさそうだ。

それに、入り口とは別に隠し通路も見つけることができた。

いざとなれば、そこから攻め入ることもできそうだ。


長居は危険だな…...

そう思って情報収集を切り上げ拠点から出ると、

複数人の男達に囲まれたウェイン君達が見える。


しまった…...彼らが捕まった後のことは考えていなかった。

…...まあ、あの娘がいれば何とかなるだろう。


今の優先順位は、取得した情報を確実に持ち帰る事だ。

流石に始末される事はないだろうし……...

しまった!ウェイン君のポケットにメモ書きを忍び込ませてしまった。

おふざけのつもりで入れたんだが…見つからん事を祈るしかない。


大丈夫…...じゃないかもしれんな。


しかし、もし見つかっているとすれば助けに行くのも危険だ。

でも助けに行くべきだろうか…...

トンプトンを留めた場所に向かいつつ頭を悩ませていると、


グウォーーー、ドーン!!ドガーン!!ボガーン!!


と聞き覚えのない音が聞こえてくる。

ん?何の音だ?

それに、何だか背中の方がちょっと暑い気もする。

そう思って後ろを振り返ると、赤黒い炎の塊が迫ってきていた。


な、何じゃこりゃ?

まさか、あの娘が放ったのか?

バカヤロウ!このサイズはやり過ぎだろ!


まずい、逃げなければ!


うぉーーー!

この歳になって、こんなに全力で走ることになるとは。


無我夢中で走っていると、少し先に岩場が見えた。

あそこしかない。そう思って飛び込むと、炎の塊はそのすぐ横を通り過ぎていった。

あ、危ないところだった…...

呼吸が…...苦しい。


しかし、少し経つと呼吸も落ち着いてきた。

また、暑さもだいぶ和らいできたが、何故か頭の熱だけが取れない。


不思議に思って手を伸ばすと…...


あーーっつ!


ひ、火がついているじゃないか!


必死になって何とか火を消す事はできたが、髪の毛がだいぶ焦げてしまった…...


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