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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
人魔統一編 ~破~
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第42話 : 地区住人の退避

「壮観だな……」


「こんな光景見たことないですわ……」


俺とラリゴーは、目の前に広がる光景に釘付けになっていた。


「スキル解放、区画生成(エリアボックス)……

子供や女性から先に乗るようにしてください!」


数百は下らない地底竜(アングラドラゴン)の群れが、魔晶石(ましょうせき)の鉱山周辺一帯に広がっている。


「戦いへの備えのつもりが、人間を救うのに使われる事になるとは……」


「不思議な事もあるものね」


ニコリスとコムギが、地底竜の大群を見ながら話し合っている。

どうやら地底竜の大群は、人間との戦いに備えて準備されたものらしい。


「それで、お前たちはこれからどうするんだ?」


ふと振り返ったニコリスが話し掛けてくる。


「地区住人が送られたのを見てからロゴポルスキーに向かいます」


「お前達だけで十分か?

必要なら、協力は惜しまないが」


「いえ、あまり人数が多いと目立ってしまうので……」


「俺を連れて行け」


ニコリスとの会話に突如、第三者が割り込んできた。イビルだ。


「1人くらいなら……良いだろ」


「必要ないって言ってたのが聞こえなかったの?」


コムギが冷たい口調で言い放つ。


「ねえ、ウェイン?」


そして、何故か振ってくる。


「お、おう……」


「いや、行かせてくれ!間違いなく力になる」


イビルも簡単には引かず、食い付いてくる。


「いや、でも……」


自分では解決が難しいと思い、救いの目を今度はコムギの方へと向ける。

すると、コムギが仕方なさそうに応える。


「イビル、目立ちたくないって言ってるでしょ?」


「ああ、何度も聞いたさ。でも、俺1人が増えたところで大して変わらないだろ。

あのデカい女?の方がよっぽど目立つと思うんだが……」


それは間違いない。

ラリゴーには、存在するだけで目を引くような威圧感がある。


当然、そう言われれるコムギも返答に窮してしまう。


「あ、あんた、声がデカくてうるさいのよ。

騒がしいと相手の目にとまっちゃうでしょ?

ねぇ、ニコリス?」


とってつけたような理由に、ニコリスへの同意を求める。


「その通りでございます。パメル様」


この変態男がコムギの意に背くような返答をする訳が無い。


「う、うるさいのか……?」


生まれてこの方言われたことのないであろう悪口に、イビルは若干傷ついている。


「ええ、うるさいわ。ニコリスと同じくらいね」


ニコリスもかい!

うるさい奴だらけじゃないか……


「分かった……一言も話さない。道中、一言も話さない。

だから……絶対に迷惑は掛けないから、俺を連れて行ってくれ!」


一言も話さないという無謀な条件を提示するほどイビルは必死みたいだ。

流石のコムギも、その様子を目の当たりにして困惑の表情を浮かべている。


対応に窮した為、暫くは沈黙が流れる。


『ウェイン、1人くらい良いのではないか?』


一連のやり取りを静観していたシロが耳元で囁く。


『交戦を想定していないとは言え、統治会議を相手にするのじゃ。

戦力があるに越したことはない』


シロの言うことにも一理ある。

戦闘を避けてコムギの父親を助け出すつもりでいるが、計画が思い通りに進まない事だって当然ある。そうなった場合、イビルの存在ほど心強いものはないだろう。


「それもそうだな……」


それに、これ程までに付いて行きたい強い動機があるのだろう。

先に潜入する手筈になっているガリアーニとも関わりがあるのかもしれない。

以前カースアノレイクで会合を持った際に、ガリアーニの名前に過剰に反応を示していた事も気になる。


「イビル、ついてきてもらえるか?」


その一言を聞いたイビルの目が輝く。


「本当か?本当に良いのか?」


「むしろ、こちらからお願いしたい」


「必ず力になると約束しよう。

それと……パメル様も、よろしいでしょうか?」


「ウェインが決めた事ならね。でも、一言も話したら駄目だからね!」


「あ、ありがとうございます!」


「はい、いま話したー

早速約束を破ったわね?」


お前は、小学生か……


「……地区住人の保護も滞りなく進んでいることだし、今後の計画について詳細を詰めよう」


『……うむ、そうじゃな』


イビルとコムギのやり取りの呆れた様子でシロが応じた。


「コムギ!ミゴの屋敷に向かうぞ」


「はーい。このお喋り男も?」


イビルには、早速嫌味たっぷりのあだ名が付けられている。


「……ああ、もちろんだ」


「私もついて行ったほうが良いかな?」


ニコリスが問いかけてくる。


「はい、お願いします」


「であれば、こいつらも連れて行かせてくれ。話を聞いておいて欲しいからな」


ニコリスが指を差した先には、カーリス・マインドとヴァース・リエイトンの2人がいる。


「久しいな、ウェイン君」


「おう少年!ガッハッハ」


目の合ったヴァースとカーリスが、それぞれ声を掛けてくれる。


「お久しぶりです。お二人とも大穣祭以来ですね」


「ああ、そうじゃな。

それよりも、こんな形で人間達との生活を取り戻せるとは思っていなかったぞ」


「ご迷惑をお掛けしてすみません。予想もしない事態に直面してしまったもので……」


「いやいや、良いのじゃ。

どんな形であろうと、人間達と再び生活できる事には感謝しておる」


「力を貸して頂いて、本当にありがとうございます」


その言葉に対して、ヴァースは満面の笑みで応えた。


「時間も限られている。早いところ話し合いに移ろう」


話がひと段落ついた気配を察したのか、ニコリスが声を掛けてくる。


「少し歩いた先に屋敷があるので、そこで話しましょう」


そう答えて、ミゴの屋敷にある食堂へと向かう。


「何かお飲み物は用意いたしますか?

もちろん毒は入っておりません。ふふっ」


どうやら、その決まり文句を言わずにはいられないらしい。


「……ああ、頼む。と言うか、ミゴはまだ地底竜に乗らないのか?」


「当然です。私は地区の代表者として、住人全員が無事に出発したを見届けてから最後に行きますので」


こういう所は、妙に肝が座っている……

典型的な悪代官であれば、自分が一番先に避難している所であろう。

悪趣味な内装と、面白くもない洒落を言われても何処か憎めないのは、その信頼感からだろうか。


屋敷の食堂に到着すると、すぐに食堂へと向かい全員が椅子につく。


「では、早速お話しします。

……まずは、この地区で何が起こっていたのかを」

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