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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
始まりのはじまり
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第4話 : 少女の正体

「取り合えず…...自分が魔王だと言うことは、絶対に周りにバラすなよ」


「そんなの、分かってるわよ。

そもそも自分の正体を明かすつもりはなかったのに、逆らえないのよ。

それにバレたから仕方がないと思って、貴方のことを消そうとしたけれどスキルが発動できないの」


サラッととんでもない事カミングアウトされたけれど…...


しかし時間が経って冷静さを取り戻した今、俺は騙されない。


そう、情報に惑わされてわいけないのだ。

自分のこの目で真実を確認するまでは、鵜呑みにしてはいけない。


冷静に状況を確認すれば…...

目の前にいる女の子は、ただのか細い少女じゃないか。

全くもって、強そうじゃない。

俺一人でも簡単にねじ伏せられそうだ。


急に出現したステータス画面だって怪しいし、目の前にいる女の子が魔王という事も疑わしい。


そう考えていると、


「わたし、スキル使えなくなっちゃったのかしら…...」


魔王が何やらブツブツ呟き始め、次の瞬間、窓の方に手を向けスキルを発動した。


「スキル解放…...獄炎(ヘルフレイム)!」


直径3mにもなろう真っ赤な炎の塊が窓を吹き飛ばし、隣の民家を巻き込みながら空の彼方へと飛んでいく。


「……」


「あー良かった。スキルが使えなくなった訳じゃないのね。

でも、不思議。なんで貴方には使えないのかしら」


「……」


前言撤回。


しかも、獄炎(ヘルフレイム)って言うたよな?

威力によっては、街一つ吹き飛ばしちゃうって本で読んだ気がするんだが…

お試し程度でそんなスキル使っちゃう?


「心配しないで!威力はかなり抑えておいたから」


いやいや、壁吹き飛んじゃってますけど…...

隣の家、2階部分が減築されちゃってますけど…...


し、しかし!

これで状況は完全に把握できた。

こいつに掛かっている魅了は絶対に解除しちゃいけない。


少なくとも、俺は無事でいられる…...

出来れば、勝手にものを壊したり人を攻撃して欲しくないんだが。


「今後、スキル使って破壊するの禁止な」


聞き入れてくれるか分からないが、ダメもとで言ってみる。


「わ、分かった」


あら、意外と素直。

これでひとまず大丈夫…...なはず…...


「それと名前なんだが…...

実名を呼ぶわけにもいかないから、コムギって呼ぶぞ」


「コムギー?芋くさい名前」


芋じゃなくて、小麦だけどな。


「他に良いのが思いつかないんだよ」


「まあ、良いよ。

コムギね。コムギ」


ひとまず、これで良いだろう。


それよりも、この吹き抜けどうしよう…...

隣の家、どうしよう…...


「に、逃げるぞ!

今すぐ!」


「逃げるって、何でよ?

わたしお腹空いてるんだけど」


「おめぇが壁を吹き飛ばして、

隣の民家の2階をさよならしたからだよ!」


宿の周囲が騒がしくなってきている。


そして、

コンコンコンッ

と扉を叩く音が聞こえた。


「あのー、物凄く大きな音が聞こえたんですけど何かありましたか?」


「き、聞こえましたよね!大きな音。

ど、何処からだったんでしょうね」


「バレそうだから、消しとく?」


コムギが耳元で囁く。


「消すわけねーだろ!」


「け、消す??」


扉の外から心配そうな声が聞こえてくる。


「あ、いや、こっちの話です」


下にも人が集まってきているし、扉の外には従業員らしき人がいる。

逃げられる状況ではない。

誤魔化そうにも、この惨状を説明できるほどの言い訳が思いつかない。


正直に話そう。

そう思って扉を開け、宿の女主人に事の顛末を全て話した。


「本当にすみません。

壊すつもりはなかったんですが、不可抗力といいますか…...災害といいますか…...

はい、弁償します」


コムギの事を知られると面倒だったので、窓と隣家の二階を吹き飛ばしたのは自分のスキルによるものだという事にしておいた。


「どうしようかしら…...

こんなに若い子から請求するのも気が引けるし」


宿の女主人が頭を抱えて悩んでいる。

すると突然、体格の良い2人の男を引き連れた白髪の老人が話に割り込んできた。


「ちょっと失礼」


「あら、ガリアーニさん。どうしました?」


白髪の老人はガリアーニという名前らしい。


「近くを通ったら、大きな音が聞こえてきたもんでね。

そこの二人と話がしたんだが、少しの間席を離れてもらえないかな」


女主人はその言葉に素直に従い、その場から離れていく。

この地区の偉い人なんだろうか。そうだとしても、引き連れている2人の男の柄が悪い。


「割り込んですまなかった。

わたしはこの街を管轄する組合の者でな、名をガリアーニと言う。」


「ガリアーニさん。初めまして。ウェインと申します。

街に迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「うむ、見ておったぞ。見事なスキルじゃった」


その視線は、時折コムギの方に向けられる。


「それで本題なんだがな、

破壊した建物については我々が責任を持とう。

そのかわり...…」


建物に関しては願っても無い嬉しい話だが、嫌な予感がする。


「盗賊退治をお願いしたい。

その力を見込んでの話だ。悪くは無いだろう。

もし必要であれば、この二人を連れて行っても良いぞ?」


そう言って後ろに控えるガラの悪い二人を指差す。

答えに戸惑ったので、猶予をもらう事にした。


「大変有り難い話なんですが、

一日だけ考える時間を貰えませんか?」


自分の実力で盗賊団と渡り合える訳がない。

かと言って、建物の損害を賠償できるほどの余裕も無い。


「もちろんだ。答えはまた明日聞かせてもらおう。

今日はゆっくりすると良い。別の宿も用意しておいてやろう」


至れり尽くせりじゃないか。

怖いな......


「何から何まで有難うございます」


じっとしていられなかったのか、コムギが席から離れていく。


「気にすることはない。

では、良い返事を期待しておるぞ」


そう言うと爺さんは俺に近付き、周囲には聞こえないように耳元で囁いた。


「どう行った経緯であの娘と一緒にいるのかは分からんが、

もし何かあればいつでも相談すると良い」


そして、親指ほどの大きさをした薄緑色の丸みを帯びた石を渡してきた。

記憶が正しければ、それは共鳴石だった。


文献でしかその存在は知らないが、距離に関係なく発掘時の番いと通信ができる代物だ。

一般に流通しているのは見た事がない。

何故なら、その希少性故に国の管理下に置かれ、戦争などの有事や国の代表同士の通信にしか使われていないからだ。

それほど価値の高い石を渡してくるとは、ただの地区組合の人間とは思えない。

一体何者なんだろう。


爺さん達が去って行き、暫く経ってからコムギに聞いてみた。


「あの爺さん、お前の事を知っているみたいだったけど知り合いなのか?」


「……」


コムギが一瞬黙り込む。


「そーね。知り合いよ。

あいつは裏切り者なの」


「裏切りって、あの人も魔族なのか?」


「そうよ。

裏切ったと言っても、人間側について魔族に被害を及ぼした訳ではないんだけど......」


コムギは、言葉に詰まっているようにも見える。


「まさか、こんなところで人間に紛れて暮らしているとは思わなかったわ」


なるほど、そういう事か。コムギの話を聞いて腑に落ちた事がある。


話を持ち掛けられた時からおかしいと思っていたんだ。

スキルを見た程度で、見ず知らずの他人に盗賊退治を依頼するとは到底思えない。

組合で抱えている人間を使ったほうが、よっぽど確実に遂行できる筈だからだ。

しかし、コムギの存在が判断を変えたんだろう。


上手く利用されたような気もするが、あの場を救ってもらった事には変わりない。


「コムギ。

盗賊団の話、受けようと思う。

手伝ってくれないか?」


「…...やるわ。

とにかく暴れたい気分なの」


「ほ、ほどほどにしてくれよ...…」


今度は家を破壊するどころか、地形を変えてしまいそうだ…...

しっかり手綱を握っておかなければ。




〜 その頃、魔王の居城では 〜


「おい!魔王様は何処に行かれたんだ!

もうすぐ会合の時間だってのに」


魔王軍幹部のイビル・デモリーナが大広間で喚き散らしている。


「人間界に向かうとは聞いておりましたが、詳しい場所までは…...」


パメルの世話役デモニスが怯えながら答える。

すると、何処からともなく図太い声が聞こえてくる。


「おいおいおい、騒がしいぞ。何があったんだ」


魔王軍参謀カーリス・マインドだ。


「そんなに慌てていては、解決するものも解決しないだろう。

一旦冷静になるんだ、イビル。

まずは事情から説明してくれ」


「そいつに言わなくて良いぞ」


イビルがカーリスの質問を遮ったが、デモニスが答える。


「それが、魔王様の行方が分からないのです」


「なにーーーーーーー!

そりゃ大変だ!どうする?どうする?どうするんだ!」


「ダーーー!オメェがくると余計に物事がややこしくなるんだよ。

少し黙っとけ、お飾り参謀様よ」


「ん??いま何と言った?」


「お飾り参謀様!」


「それは…...

褒め言葉か?」


「めんどくせぇ。

とりあえず、魔王様の行方が分かるまで会合は延期だな。

居場所の検討はつかないが、ニコリスの変態野郎が後をつけていってるだろから、そのうち分かるだろう。

見つかったら教えてくれ」


「承知しました」


「それと、そこの阿呆にも伝えてやっといてくれ」


「阿呆だと!?

それは…...

褒め言葉か?」


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