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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
人魔統一編 ~序~
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第37話 : 統治会議第三席 (1)


……ドゴーン!!ドーン!ドゥーン……



外に響いた音を聞いて、屋敷の食堂に集まっていた全員が状況を確認する為に屋敷の外へ向かっていく。


「音はどっちの方から聞こえてきた?」


「恐らく鉱山の方からです!」


屋敷の階段を降りながら、ミゴが答える。

重そうな身体をしているが、動きは意外に俊敏だ。


「……ごめんウェイン、先に向かうね」


『妾も先に()く』


階段を降りて屋敷の出口に辿り着いたところで、コムギとシロがそう言い放った。

その瞬間、2人(1人と一匹)は一気に加速し、あっという間にその姿を視界から消した。


何故先に行くと言い出しのか理由を聞く余裕は無かったが、去り際に見せた表情は厳しそうに見えた。向かう先に強敵か厄介事があるかのようだった。

それに、シロも一目見て分かるほどの緊張感を漂わせていた。


只事ではない……


その事を、2人の様子を見て確信した。


「ミゴ!鉱山の方に地区の住人たちを近づけないように、ここで声を掛けてくれ。

良からぬ事がおきているみたいだ……」


「はい、承知しました!地区住人の安全はお任せください!」


夕日が沈みかけ、周囲は徐々に暗くなってきている。

周囲の状況が確認できなくなれば、混乱が広がっていくだろう。


「ラリゴー、悪いが俺を抱えて鉱山の方まで向かってくれ。

超高速で頼む」


コムギとシロの様子が心配だ……特急ラリゴーの力を発揮してもらおう。


「畏まりましたわ!」


そう言うと、ラリゴーはお姫様抱っこをするように俺を抱え上げた。


おんぶにして貰えば良かったな……

しかし何だろう……この逞しい腕に包み込まれている安心感は……


「あの……私も付いて行ってよろしいでしょうか?」


特急ラリゴーが出発しようと構えた時、声を掛けてきたのはダリアさんだった。


すっかり忘れていた。

鉱山の方で何が起きているか分からないけど……


「かなり危険な状況かもしれませんが、大丈夫ですか?」


「はい……危険は承知しております」


「……では後について来てください。

ラリゴー、向かってくれ!」


「はい!では、行きますわよ〜!」


そう言い終わると、特急ラリゴーは物凄い勢いで出発した。

お姫様抱っこされているから、右耳にだけ猛烈な風音が響いてくる。


屋敷から鉱山までの距離は凡そ400m。

一般人の場合、全力で走ったとしても60秒以上は間違いなく掛かる。

しかし、特急ラリゴーなら……


……20秒ほどで到着しました。

はい、クオーターホース並みの速さです……



「ラリゴー、ありがとう。

降ろしてくれ」


「……はい」


鉱山に到着したラリゴーは、正面を見たまま慎重に俺の事を降ろした。

見つめる先に轟音の元凶となる人物がいるに違いない。


地面に降りて、ラリゴーが目を向けていた方を見ると最初に目に入ったのはコムギとシロの姿だ。

2人は並ぶようにして、10mほどの距離をとった状態で1人の男と向き合っているようだった。


その男、見た目は老人だが腰が曲がっている様子もなく、姿勢からは足腰の強さと肉体の強靭さが伝わってくる。


「……おー、ダリアよ。そこに居たか」


暫く無言のまま向き合っていた両者だったが、俺の後ろにいるダリアの存在に気付いた老人が初めに口を開いた。


「無事だったか?」


その老人はダリアを気遣う素振りを見せる。


「……」


しかし、その問い掛けにダリアは答えを返さない。

知らない爺さんに話し掛けられて困惑しているのか、答えに窮しているのか……


「ダリアさん、知り合いですか?」


「あの……」


『知り合いもクソも無い……』


答えあぐねているダリアさんの様子を感じて、口を開いたのはシロだった。


『此奴がユリウス・ブレッドじゃ。統治会議のな……』


ユリウス・ブレッドと言えば統治会議第三席で、この地区の殲滅を命じた奴の名前だ。


シロとコムギが漂うわせていた緊張感の原因はこいつの存在だったのか……


「おいおい、ニベル・アドラクトよ……長い付き合いじゃないか。

そんなに簡単な紹介で済ませないでくれよ?」


『黙れ……

何故、人間である貴様が未だに生きておるのじゃ』


「面白い質問だ……答える気は無いがな。

それと……そこの小娘はハイレインの娘かな?大きくなったじゃないか」


「あんたと口聞きたくないの。話し掛けないでくれる?」


「ふっ……まあ、良い」


『お主、何の用で来たのじゃ?』


「それは此方が聞きたい。何故お前達がこの地区にいる?」


『お主と同じ台詞を返してやろう……

答える気は無い』


「……ダリアよ、お前に伝えた件は上手くいっていないのか?」


「はい。申し訳ございません……」


そう答えるダリアさんの声は震えている。


「……ミゴの奴も案外使い物にならないな。

父親より御し易いと思い、管理者の座につけたのだが……」


『これ以上、お主らの思い通りにはさせぬ』


「そう思うのは結構な事だ。だが、我々の計画に支障が出ては困るのだ。

邪魔をすると言うでのあれば、力づくで解決させてもらう」


『やってみるが良い』


そう言い放つと同時に、シロは相手への威圧を強める。

ユリウスも突っ立ていた先ほどの体勢から、相手の攻撃に備えた構えをとる。


場の緊張感が一気に深まる。


山の頂上で見たシロとコムギの戦いとは違う、命の取り合いを予感させる張り詰めた空気だ。


「ウェイン様、私の後ろへ……」


危険な気配を感じ取ったラリゴーが、自身の背後に立つように促す。


「2対1とは分が悪いな……」


『戦う前から言い訳か?』


「好きに言うが良い……そちらこそ、2対1で負けた時の言い訳でも考えておいたらどうだ?」


『時間稼ぎは十分じゃ。いつでも来るがよい』


「では……此方から仕掛けさせてもらおう」


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