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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
人魔統一編 ~序~
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第32話 : 使者の使命

有事の最高戦力って、何だか物騒だな……


「それで……その第三席のユリウスって人が、ダリアさんにこの地区住人の殲滅を言い渡したってことですよね?」


「はい、その通りです」


そしたら、ミゴがダリアさんを閉じ込めたのは、ロゴポルスキーの指示に従うつもりがないっていう意思表示の現れなんだろうか……


「それを聞いたミゴは、どんな反応をしたか覚えていますか?」


「一瞬苦い表情をされてはいましたが……

要請自体は素直に受け入れていらっしゃったかと思います」


「統治会議がミゴに殲滅を命じた事までは理解しました。

でも、数千人は居ると思われるこの地区の人達を、一体どうやって殲滅するんですか?

ミゴ1人にそんな力があるとは思えないですし……」


「いいえ、これは地区の管理者たるミゴにしか出来ない仕事なのです」


「……と言うと?」


「鉱山に埋めるのです。

この地区出身のミゴの(めい)のもとに……」


本国から遣わされた人間ではなく、同地区出身として信頼されているミゴの立場を利用するって事か。


「でも、集落に住んでいた女性や子供まで鉱山に行かせるのは不自然じゃありませんか?」


「はい。ですから、鉱山に埋めるのは男性のみです。

彼らさえ居なくなれば、女子供の処分など容易だと言うのが統治会議の考えでして……」


『酷い話じゃの……

しかし、失敗作(フェイルド)の処分に拘る理由が分からぬな。

何か不都合でもあるのじゃろうか……』


「その理由は確かに気になるところだが……

その前に、ミゴの真意を確かめる必要がありそうだな。地区住人が殲滅されるのを見過ごす訳にもいかない」


『そうじゃな。

しかし……その女の役割も単に指示を伝えるだけでは無かろう』


「どうしてそう思うんだ?」


『見届ける必要があるからじゃ。

統治会議からの命を遂行したか否かをな』


「確かに……シロの言う通りだ。

ダリアさん、指示を伝える以外に与えられた役割はありましたか?」


「……はい、2つございます。

1つは、全てを見届けて報告する事。

もう1つが、この屋敷の人間全てを始末する事です」


ああ、また物騒な言葉が聞こえてきた……


「始末って……

ミゴ達も処分するって事か?」


「はい、そうでございます。

この地区での出来事を知っている人間を生かしておく訳にはいきませんから」


「その事を、ミゴは知っているのか?」


「いいえ。彼らには、指示に従う代わりに身の安全を保障しております」


「それは建前って事ですね……」


「はい……」


「そういう汚いやり方は、昔から変わらないのね。

ほんと嫌になる」


話を聞いて腹を立てたコムギが怒りを露わにする。


「というか……ダリアさんにそんな事が出来るんですか?

この屋敷には強そうな男達が何人も居ましたけど……」


「ええ……

暗殺は私の専門ですので」


うわ……

これまた物騒な……


「ですので、本国から助けに来たと仰っていたウェイン様の事は疑っておりました。

私を遣わせた方は、当然私の力をご存知でしたから」


あれは、演技だったのか。

てっきり非力な女使者さんだと思っていましたよ……


魅了[絶]を掛けていなければ、この地区の前に俺の人生が終了していたかもしれない。


「でもそれだけの力があるなら、捕まるような事もなかったと思うんですが……」


「様子を見る為にあえて捕まったのです。

下手に抵抗すれば、住人を鉱山に埋めるという計画が頓挫しかねませんので……」


「……そうだったんですね」


まあ、俺も敢えて捕まったようなもの……だよな。


『しかし、そのミゴという男……

良からぬ事を考えておらねば良いんじゃが……』


「そうだな。

正直、ロゴポルスキーを刺激するような事はして欲しくない」


『であれば……本人に問いただす以外に手段は無いであろう』


「強引な気もするが……致し方ない」


「えっ!暴れて良いの!?」


強引な手段、という言葉に反応したコムギの顔をパッと明るくなる。


「暴れはしないが……屋敷を制圧する」


自分の口からこんな言葉が出るようになるなんて……

俺も変わったな……


「はい!私に任せて!」


案の定、コムギは真っ先に立候補してきた。


「ダメだ。コムギとシロには大人しくしていてもらう」


「え〜!!何でよ!私がやれば一瞬で終わるのに!」


まあ、一瞬で終わるだろうけど。

違う意味で終わっちゃいそうなんだよ……


「もう一度言うが、ダメだ。

今回はラリゴーとダリアさんに任せる」


『妾と小娘が参加しない理由は理解できるが……

ロゴポルスキーの手先である、この女を信頼するのか?』


「そこは心配しなくて良い。

ダリアさんは言われた通りに動いてくれる」


『う〜む、俄かには信じ難いが……』


「そうしたら、シロはダリアさんに付いていると良い。

不審に思うことがあれば、シロの判断で止めてもらって構わない」


『まあ……それなら良いじゃろう』


「ラリゴー、任せても良いか?」


「ええ、勿論です!お任せ下さい」


「じゃあ、私はラリゴーさんに付いていく!」


「ダメだ、コムギは俺と行動してもらう」


「え〜!そんなの、つまんない……」


「大丈夫だ。とっておきの仕事を用意してある」


「とっておき!?

……だったら、しょうがないわね。ウェインに付いていくわ」


俺の護衛という、とっておきの仕事だ。

バレたら後で面倒臭そうだが、ここで暴れられるよりマシだ……


『それで、具体的にはどうするのじゃ?』


「まず、ラリゴーには屋敷の警備の人間を任せたい。

正確な人数は把握しきれていないが、見た限りでは屋敷の外の衛兵が10人程度、それと屋敷内に屈強な男が少なくとも3人は居る。

そいつら全員を騒ぎが起こらないように制圧して、目立たないように何処かの部屋に閉じ込めておいて欲しい。

それが終わったら2階の食堂に来てくれ。

できそうか?」


「ええ、全く問題ございませんわ」


全く問題ないんかい。

だいぶ無理を言ったつもりだったんだけど……


「それから、ダリアさん。

ダリアさんには、警備の人間以外の制圧をお願いします。

ただ、ミゴだけは意識を残したまま食堂に連れて来てください。

それと……決して命は奪わないでください」


「はい……畏まりました」


『それで……

今すぐ決行するのか?』


「時間からすると……おそらく、もうすぐ夕食が運ばれてくる。

部屋の扉が開いた時、それが決行の合図だ」


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