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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
人魔統一編 ~序~
30/42

第30話 : 本国からの使者

コンコンコンッ……


コンコンコンッ……


ゴンゴンゴンッ……



窓を叩く主は余程せっかちなのか、その音が徐々に大きくなっていく。

そんなに音を立てたらバレるっての……


これ以上強くなっても困るので、急いで窓の方まで移動する。

カーテンを避けて窓を開くと、コムギがひょっこりと顔を出した。

と思ったら、その姿が下へ消える。

また顔を出したと思ったら、その姿が下へ消える。


「……ウェイン」


「……助けに」


「……来たわよ」


窓の高さに到達する度にコムギが言葉を残していく。


何でそんな事してるんだ?


そう思って下を覗いてみると。

バレーボールのレシーブの要領で、ラリゴーがコムギをこの部屋まで打ち上げている。

しかも、10mはあろうかと思われるこの高さをだ……


「……入り口は」


「……警備が」


「……厳重で」


「……入れないの」


「……よ」


よ、だけ残す意味ある?


「……それで」


「……どうすれば」


「……良い?」


取り敢えず、そのレシーブやめたら?


マップを見たところ、シロも近くに居るはずなんだけどな……


「シロ?居るのか?」


『うむ。ここに居るぞ』


「うおっ!びっくりした!」


問い掛けに対する答えは、右耳のすぐ近くで聞こえた。


『何をそんなに驚いておる?』


「いや、予期せぬ場所から声が聞こえてきたから……

小さ過ぎて見えないから、手の平くらいの大きさになってくれないか?」


『お主はこの大きさが好きじゃな』


「まあ、丁度いいからな。

ところで……この2人を呼んできてくれたのはシロか?」


『そうじゃ、お主の状況が悪いと思うてな。

もちろん妾だけでも何とかなったが、穏便には済まぬからな』


でしょうね……


しかし、未だにレシーブを続けているこの2人を連れて来たことが、

果たして賢い判断と言えるのだろうか……


「このレシーブもシロの考えか?」


『こんな阿呆なやり方が?そんな訳なかろう。

こうして妾が小さくなって飛べば済む話じゃからな』


「……」


阿呆2人を連れてきてくれてありがとう。

事態が余計にややこしくなりそうな気がするけど……


『それで、どうするつもりじゃ?

このまま逃げるつもりでは無いのだろう?』


「ああ、やろうと思っていた事がある。

だがな……思っていた状況とはどうやら違うみたいなんだ」


『違う、とは?』


「……取り敢えず、あの2人にレシーブ止めるように言ってくれないか?

それと、2人ともこの部屋に引き上げてくれ」


『……そうじゃな。少し待っておれ』


そう言うとシロは、最初にコムギを、次にラリゴーを掴んで部屋まで運んできた。


「この人誰?」


部屋に入ってきたコムギの第一声がそれだった。


「ロゴポルスキーからの使者らしい」


「へぇ〜 じゃあ、敵ね」


「おい、余計な事するなよ」


コムギが怪しい挙動を見せたので釘を指しておく。


「冗談よ、冗談。

で、何でウェインと一緒にいる訳?」


「それを今から話そうと思う。

それから……ダリアさんには知っている事を話してもらう」


「そんな事できるの?簡単に口を割るとは思えないけど」


「それは問題ない。

ダリアさん、良いかな?」


「はい……何でもお答えします」


「うわっ、出た!」


ズルしてるみたく言うな。

ズルだけど……


「……まず、この地区の住人達は魔晶石の採掘に従事させられている訳だが、それはロゴポルスキーの指示だろう。そして、それを管轄しているのがこの屋敷に住んでいるミゴだ。

ダリアさん、合ってますか?」


「はい、合っております」


ダリアさんが頷きながら答える。


「魔晶石という希少な資源を採掘しているような場所だから、その管轄者はロゴポルスキーから遣わされた人間だと考えるのが妥当なんだが……

恐らく、ミゴはこの地区出身の人間だと思われる」


「ミゴって誰だっけ?」


『地区の管轄者と言っていたじゃろうが。黙って話を聞いておれ』


「ああん?チビ(ドラゴン)が喧嘩売ってるの?」


「2人とも、後にしてくれ」


『しかし、何故そのような人間が地区を管轄しておるのじゃ?』


コムギがシロを睨みつけて挑発しているが、シロはそれに構う素振りを見せない。


「それをダリアさんに聞きたいんだ。

ここの住人が失敗作(フェイルド)と呼ばれている理由も含めてね」


「誠に申し訳ございませんが……私も詳細を把握している訳ではございません。

ウェイン様の仰る通りミゴ・マーナは当地区の出身者でございますが、管轄者に選出された経緯や当地区の住人が失敗作(フェイルド)と呼ばれている理由などについては存じ上げていないのです……お力になれず、申し訳ございません」


「いや、気にしないでください。大丈夫です……」


使者だと知っている事も限られるのだろうか……

ロゴポルスキーという国の実態を把握できていないだけに、使者という役職の立ち位置もイマイチ良くわからない。


「ところで……今回はどういった目的でこの地区に来たんですか?」


「統治会議の命により、当地区の閉鎖を通告しに参りました」


「閉鎖?それは……良いことなのか?」


「いいえ、大変言い辛いのですが……

地区の閉鎖とは、地区住人の殲滅を意味しております」


『何と酷いことを……』


「……は?意味が分からないんだが」


一瞬、ダリアさんの言っているのか理解ができなかった。


「何でそんな事をしないといけなんだ?」


「一言で言えば……用済みなのでございます」


「用済み?」


「はい。理由は、当地区の魔晶石が枯渇した事にございます」


「魔晶石の枯渇と住人に関係があるとは思えないが……」


「いいえ、大いに関係がございます。

何故なら、魔晶石の採掘は当地区の人間、つまり失敗作(フェイルド)にしか行えないからです。

ご存知かもしれませんが、魔晶石には魔素を吸収すると言う特殊な性質があり、

通常の人間が採掘に従事した場合には、身体に不調をきたしてしまうのです」


「それがこの地区の住人にはないってことか?」


「はい、そうでございます。当地区の住人は魔素の流れが通常の人間とは異なるのです。

それ故、魔晶石の採掘には重宝されてきたのですが……

資源が枯渇した以上は不要と判断されたのでしょう」


「でも、始末するほどの事じゃないだろ。

何もそこまで極端な手段を取る必要はないじゃないか」


「申し訳ございません。

統治会議の命を伝える事が私の役目ですでの、その理由までは……」


例え理由があったとしても、許される事ではない。

本当に、何を考えているのかさっぱり分からない。


「……誰なんだ、ダリアさんにそんな酷い事を命じたのは」


「私に命を下されたのは、統治会議第三席の……」


そう言い掛けると、ダリアさんの表情が急に苦しそうになった。

目が充血して呼吸が徐々に早くなり、手足が痙攣しだした。


「……統治会議……第三席の……」


『やめろ!それ以上話すな!』


シロがダリアさんに向けて、叫ぶ。

ダリアさんの様子は明らかにおかしい。


「ダリアさん、もう良い!話さなくて良い!」


「…………………はい……」


咄嗟の呼びかけで、話を続けようとするダリアさんを遮る事はできた。


そして、暫くするとその症状も徐々に落ち着いてきた。

目の充血はまだ少し残っているが、呼吸も落ち着き、手足の痙攣も止まっている。


『統治会議の名前を出した途端、体内の魔素が急に乱れておった』


「スキルか?」


『いや……このような類のものは目にした事がない。

少なくとも魔族の中には使っているものはいなかった』


5月初旬に連載を初めて、ようやく30話に到達致しました。


なかなか気持ちをお伝えする事ができておらず大変申し訳ありませんが、

貴重なお時間を割いて読んで下さっている皆様には常日頃感謝しております。

ありがとうございます。


今後も、少しでも多くの方に面白いと思って頂けるよう精進して参ります。


よろしくお願い致します。

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