第23話 : 軍事国家の真実
コムギとデモニスの時には、間違いなくできていた。
もしかして、魅了[絶]に対する俺の理解がまだ足りていないのか?
従属者の使用したスキルをコピーできると思っていたんだが。
スキル、か……
そう言えば……
「シロ。戦いを見ていた気になっていたんだが、お前が使っているのはスキルじゃないのか?」
『ほう?知っておるのか?』
知ってる?
「……何のことだ?」
『知っておる訳ではないのだな。
さて、どう説明したものか……』
シロは俺の目の前を旋回しながら、答えに迷っている。
『まず、妾が使っているのはスキルではない。
先ほどの攻撃も、大地の魔素を己の属性に変換して扱っているに過ぎない』
「それは、スキルじゃないのか?」
『全く違う。もしスキルであれば、魔素を持たぬ人間に使えるのはおかしいであろう?』
「……確かにそうだな」
『そもそもスキルというのは、妾とそこの小娘の父であるハイレインとで考え出した仕組みの副産物じゃ』
「は??……どういうことだ?」
『話せば長くなるんじゃが……
そもそもの始まりは混血が生まれた事にある。魔族であるハイレインと人間の子だ』
「それって……コムギの事か?」
『いや、それよりも前……ユリウス・ロザリンドの事じゃ』
「……」
それ、誰すか?
『おや?聞いてはおらぬのか?
ユリウスはハイレインの長子で、その小娘の兄に当たる男じゃ』
もしかして……
「それってニコリスの事じゃないよな?」
あいつ、自分の事をコムギのお兄ちゃんとか言ってたし……
『あの変態クソ野郎が?そんな訳なかろう』
そうですよね……
しかも、変態は周知の事実なのね……
『ユリウスはもう居らぬ。およそ600年前の人間との戦いを最後に消息を絶っておるからな。
恐らく、人知れず命を落としたのじゃろう。あれは、凄惨な戦いじゃったからな……』
そうか、もう居ないのか……
『……話を戻そう。
あやつは、純血の魔族と同じように大地から魔素を得てはいたが、それを己の属性に変えて扱うことが出来なかったのだ。
人間の血が混ざったことで、何かしらの不具合が生じたのじゃろう。
そこで考えられたのが、スキルという仕組みだ』
「別にスキルを使えないままでも良かったんじゃないか?
人間として生きれば問題ない訳だし」
『ユリウスが生まれた当初は、ハイレインもそう考えておったようじゃ。
しかし、それを阻む大きな問題が生じたのだ』
「問題?」
『そうじゃ。代償、とでも言うのであろうか……
体内に吸収された魔素を外に放出できなくなり、溜まり続けたのだ。
しかし、当然その容量にも限界がある……
最終的に限界を超え溢れ出した魔素は熱となってユリウスの体内で放出され、あやつの身体は信じられぬ程の高温に包まれた』
「つまり、体内に溜まった魔素を放出する手段が必要だったって事か?」
『うむ。そこで偶然生まれたのがスキルという訳じゃ』
「それは、シロのと何が違うんだ?
あんまり違いが分からないんだが……」
『魔晶石じゃ。
太古から魔素を吸収する不思議な鉱石として知られておったのじゃが、それをユリウスの身体に埋め込む事で蓄積された魔素を消費できないかと考えついたというわけだ』
魔晶石?
そんなものは聞いた事がないが……
「それじゃあ、スキルが生まれたのは偶然って事か?」
『その通りじゃ。埋め込んだ当初は気付かなかったが、ユリウスは知らぬ間に属性に合わせて魔素を変換できるようになっていた。その原理についてはさっぱりじゃがな』
「すごい!万能じゃないか!」
『と、思うであろう?
しかし、そこまで万能ではないのだ……
簡単に言うと、燃費が悪い。
例え同じだけの魔素を消費しようとも、純血の場合と比べてその威力は劣るのじゃ。
因みに、そこの小娘も目に付かぬだけで何処かに埋めておるじゃろう』
「コムギも人間との混血って事か……
だとしたら、魔晶石を媒介しているにしては強くないか?」
「それは魔王の血を引いているからじゃろう。
純血の魔王たるハイレインの強さは、その小娘とは比にならぬ程じゃぞ?」
コムギパパ、恐ろしいな……
『それにしても、お主は不思議な奴じゃな』
「不思議?何のことだ?」
『魔素を一切持っておらぬのに、あれ程の攻撃を繰り出せるのは何故じゃ?』
それはこっちが聞きたいよ……
「正直分からない……」
それは、俺がシロのスキルをコピーできない事とも関係しているのだろうか。
「……ところで、何で俺に魔素がない事が分かったんだ?」
『それは、我ら魔族には魔素の流れが見えるからじゃ。
お主の体内には、それが一切流れておらぬ。そこに居る、デカい女?もな』
ラリゴーも?
『今どき、魔素の一切流れていない人間など珍しい』
そしたら、ラリゴーにはスキルが使えないってことだよな?
これまでの数々の人間離れした所業は、生まれ持った身体能力によるものという事ですか……
「もしかして、人間がスキルを使えるようになったのも魔晶石のお陰なのか?」
『残念だが、キッカケについては分からぬのじゃ。
我らの事を参考にはしているのじゃろうが……』
「でも、その魔晶石?っていうのを埋め込んでいる人間なんて見た事ないぞ?」
『それが不思議なのじゃ。
そもそも魔晶石は、体内に魔素を持っているからこそ機能するものであって、魔素を持たない人間に効果のあるものでは無いはずなのじゃが……』
でも、人間は色んなスキルを使っている。
シロの話を聞く限り、本来使えるのは自分の持っている属性に限られる筈なのに……
『じゃが、魔晶石が関係しておる事は間違いない』
「それは何でだ?」
『何故なら、お主らがタンブレニアと呼ぶそこの国は、魔晶石が大量に埋まっている場所じゃからな』




