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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
始まりのはじまり
15/42

第15話 : 故郷へ向けて

「では出発します。皆さん、ありがとうございました」


俺とコムギ、それにラリゴーは大穣祭の翌日早朝にカースアノレイクの地を出発する事にした。

見送りには、ニコリスにデモニス、それからヴァースが来てくれている。


「ウェイン、お前に渡しておきたいものがある」


そう言ってニコリスは、薄緑色の丸みを帯びた石を渡してくれた。

この見覚えのある石は……共鳴石だ。


「どうやら、既に一つ身につけているようだから使い方は分かっていると思うが……

何かあったり、助けが必要な時にはいつでも連絡すると良い。

必ず私が出られる訳ではないが、誰かしら対応するだろう」


「はい、ありがとうございます」


「ところで、身に付けている共鳴石の番は誰が持っているんだ?」


「言っていいのか分からないんですが……」


コムギと目があうと、彼女は頷いた。

言っても良さそうだ。


「グランへイルドの第10地区に居た時にガリアーニという老人から貰ったんです」


「ガリアーニか……聞いた事のない名だが、その石を持っているという事は普通の者ではなさそうだな」


「ネイビス・クローガーの事よ。ガリアーニは彼の人間としての名前」


コムギが解説を入れてくれた。

ネイビスって言う名前だったのか……

あの爺さんには勿体無いくらい格好いい。


「ほう、ネイビスの事か!それは面白い事を聞いた!

あの腰抜けジジイがそんなところに居たとはな。

それを聞いたら、さぞかしイビルが喜ぶだろう」


「ニコリスよ、イビルで遊ぶでない。あやつに言ってはならんぞ」


ヴァースが忠告する。

しかし、ニコリスはそんな事に耳を貸す様子はない。

ニヤニヤしながら、何か良からぬ事を企んでいそうだ。


「ニコリス、絶対にダメだからね。

言ったらタダじゃおかないから」


これには、流石にコムギも釘をさす。

けど……そんな事言ったらこいつ益々喜んじゃうだろ。

コムギの罰は、ニコリスにとってのご褒美な訳だし。

言わない方が良かったのでは……


というか、二人の間には一体どんな因縁があるんだろう……


「冗談ですよ、冗談。する訳ないじゃないですか。フフフ」


あ、こいつやるわ。


「……んんっ!話を戻そう。

しかし、2つも持っていると区別がつかなくなるやもしれん。区別の方法はわかるか?」


わざとらしく咳払いをして再び真面目な表情に戻ったニコリスが話を続ける。


「いえ……同じような見た目をしていたので、どうするべきか迷っていたところなんです」


「今持っている共鳴石を両手包み込んで、その隙間から覗いてみろ」


言われた通り、ガリアーニから貰った方の共鳴石を両手で包み込む。

すると、共鳴石の中心から淡い光が滲み出し、名前が浮かび上がってきた。


~ ネイビス・クローガー ~


確か、ガリアーニの魔族としての名前だ。


「今から渡す方でも試してみると良い」


同じように、今度はニコリスから受け取った方でも試してみる。


~ ニコリス・ダビドレイン ~


「見えただろう?共鳴石は周囲が暗くなり体温ほどの熱を感知すると、番いの所持者名を映し出すのだ。もちろん見えないようにする方法もあるが…それは今必要ないだろう」


「ありがとうございます。これで、区別がつきそうです」


「そうか、良かった。では準備も整ったことだし、そろそろ出発すると良い」


「あ、あの!最後に、ちょっとだけ時間を貰えませんか?」


「お前は”ちょっと”が多いな……

で、何をしたいんだ?」


「デモニスに話したいことがあるんです」


「デモニスに……?」


名前を出されたデモニスは不思議そうな顔をしている。


「ちょっと、ついて来てくれないか?」


そう言って、俺はニコリス達から少し離れたところまでデモニスを連れいていった。


「お話とは……何でしょうか?」


彼女には、昨日の会合の時から魅了[絶]がかかっている。


「デモニスにスキルを使って欲しいんだ」


「スキル……ですか?」


「そうだ。出来れば相手の注意をそらしたり、妨害できるようなものだと有難いんだが……

攻撃系の威力が強過ぎる奴はなしで頼む」


これ以上、強力なスキル使えるようになったら困るからね。

歩く破壊兵器になっちゃうから。


「でしたら…………」


「…………ふむふむ」


「他にも…………」


「…………なるほど!それは良い。

それを今見せてもらっても良いか?」


「今、ここでですか?」


「ああ、いま頼む」


「はあ…畏まりました。

スキル解放、…………」


うおっ!

……これは、コムギの獄炎(ヘルフレイム)に比べたらかなり有用だ。

まず間違いなく、地形を変える心配はない。

使い所も多くありそうだ。


「おい!まだ終わらないのか?」


待ちくたびれたニコリスが不満の声を上げている。


「もうすぐ終わります!あと少しだけ待ってください!」


「ウェイン早く〜」


コムギも急かしてくる。


「デモニス、ありがとな。

本当は付いてきて貰いたいんだが…大人数だと目立つから、ここで変態ニコリスの手綱を締めておいてくれ」


「はい、お任せ下さい」


そう言うとデモニスは、深々と頭を下げた。


「すみません!お待たせしました」


「遅い!早く出発するわよ」


「ごめん、ごめん……

ところで、どうやって帰るんだ?」


「来た時と同じよ?」


「ですよね……」


地底竜いますもんね……

そう思って……頑丈な縄を準備してあります!

いえ、用意して頂きました!


「ラリゴー!この縄を使って、地底竜の尻尾に俺を結びつけてくれ。

解けないように強めに頼む!」


「良いのですか?行きと同じように、私がウェイン様を掴みましょうか?」


いやいや……

お前、途中で寝落ちして俺のこと離したろ。

絶対嫌だよ。


「いや、ラリゴーに負担を掛けてばかりもいられないからな。

よろしく頼む」


「……分かりました。キツく縛りますから苦しかったら言ってくださいね」


「おう!頼んだ!」


尻尾の凹凸やトゲトゲを考慮して、背中にはクッションも入れてきている。

準備は万端だ。

ラリゴーが強めに結び付けてくれているが、全く痛くない。

流石にゴーグルまでは準備できなかったけど、今回の地底旅行は快適に過ごせるに違いない。


「結び終わりましたわ!昔習った絶対に解けない結び方を実践しましたので、解ける心配はありません!」


絶対に解けないのは、ダメでしょうが……

アホなのかな?


「途中で落ちる心配が無いのは有難いんだが、これ降りるときに解けるのか?」


「さあ?初めて試した結び方なので」


さあ?

こいつに頼んだのが間違いだったか……


「ん?お前は、何でそんな変わった乗り方をしているんだ?」


その光景を見たニコリスが、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。


「尻尾を掴めないからですよ。俺には長時間掴んでいられるほどの力はありません」


「……スキル解放、区画生成(エリアボックス)


ニコリスがスキルを使用すると、地底竜の背中に大人(おとな)数人が入れる程の大きさをした

半透明の空間が出現した。


……えっ?


「さあ、パメル様。この阿呆は無視して、あちらにお入りください」


「ありがとう、ニコリス」


いやいや……


「お連れの、お嬢さんもどうぞ」


「まあ、素敵!ありがとうございます」


「ちょ、ちょっと待って下さい!そんな乗り方あったんですか?」


「こちらの方が移動に時間が掛かってしまうという問題点はあるがな。

尻尾を掴むのは、よほど急いでいるときくらいだろう」


もう少し早く言ってくれよ……

何で俺だけ尻尾に括り付けられてるの?

罪人か何かですか?


「お、俺もそっちが良いです!ラリゴー、これ解いてくれ!」


「ごちゃごちゃ煩い……

さあ、地底竜よ!行け!」


ニコリスがそう言い放つと同時に、地底竜が地中へと潜り始めた。


「若いのよ……無理をするでないぞ」


カースアノレイクの土地で最後に聞いたのは、ヴァースの言葉だった。


もう地下は嫌だ……

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