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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
始まりのはじまり
13/42

第13話 : 魔族との会合

「皆さんにお願いがあります」


俺はいま、再び集められたコムギを含む6人を前に話しをしている。


「コムギ……じゃなくて、パメルが言っていたように人間に攻撃を仕掛けるのはもう少し待ってもらえないでしょうか」


「その必要はない。

非は人間の方にあるのだからな」


すかさず、参謀のカーリス・マインドが応答した。


「珍しく意見が合うじゃないか、カーリス。

こんな奴に同調するのは不本意だが、俺もそう思っている。

俺たち魔族は600年もの間、この土地で約束を守り続けてきたんだ。

600年だぞ?想像できるか?」


イビル・デモリーナは、強く握った拳を机に打ちつけながら突っかかってくる。

ニコリスに助け舟を出してもらいたいところだが…ここは俺の力でなんとか説得しないといけない。


「お気持ちを分かると言えば……それは、嘘になります。

600年前の戦いも、その後の長きに渡る我慢の日々も、俺には分かりません。

でも、もしここで戦う事を選んだのなら、魔族を信じてこの土地まで一緒に来てくれた人間達はきっと悲しむと思います」


イビルは何か言いたそうではあったけれど、それを我慢して話を聞いてくれている。


「だから、少しで良いんです。少しで良いから、俺に時間を下さい。

俺がハイレインさんを連れ戻して、魔族と人間が一緒に住めるような国を必ず作ります」


「無理だ!そんな事できる訳ない!」


我慢のできなくなったイビルが、喚くように答える。


「いえ、やります!必ずやり遂げます!」


「不可能に決まってるだろうが!俺たちが600年もの間、何もしてないと思ったのか?

必死に考えたさ。考えに考えて……それでも状況を変えられなかったんだ。

それをモヤシのようなお前が、少しの期間で実現するだと?

からかうのも良い加減にしろ!

時間稼ぎのつもりで誤魔化しているなら、容赦しないからな!」


今にも飛びかかってきそうな、イビルの剣幕に思わず圧倒されてしまう。

でも、確かにそうだ。彼らが600年もの間、何もしてない訳がない。

だとしても、俺のこの力を使えば……上手く使いこなす事が出来れば、可能性は必ずある。


モヤシって言うのはやめてほしいけど…


「イビル、少し抑えろ。お前の悪い癖だ」


それまで静かにしていたニコリスが、イビルをなだめる。


「しかしだ、ウェイン。イビルの言っていた事も事実だ。

我々は何もしてこなかった訳ではない。それを短期間でやり遂げると言うのであれば、それなりの根拠を示して貰わねば到底納得などできない」


そりゃそうだ。

得体の知れない口先だけの人間を信用できる訳がない。


「勿論です。あまり詳しい事は話せませんが…皆さんの前でその根拠を示してみたいと思います。コムギ……じゃなくてパメルの隣にいる女性の方、俺の前まで来てもらえませんか?」


そう言って、コムギの側に立っている世話役らしき女性に声を掛ける。

女性は一瞬戸惑ったかのように見えたが、素直に従ってくれた。


それにしても、パメルって言い慣れてないし、言い辛いな……


「俺の目を見て、名前を呼んで貰えませんか?

名前はウェインです」


側に来てくれた女性の耳元で、出来るだけ周囲に聞こえないように小さな声で語りかける。


「……はい、分かりました。

ウェインさま」


すると次の瞬間、その女性の瞳が真紅に染まり、首筋に薄っすらと紋様が浮かび上がった。

当然、ステータス画面も表示される。


《対象従属者ステータス》

 状態:魅了

 名前:デモニス・テイレスト

 性別:♀

 年齢:730歳

 分類:魔族


周囲にいるイビルやニコリスは、訝しむようにその様子を眺めている。

当然だ。彼らからは変化を見とる事はできない。瞳の色も、首筋の紋様も俺にしか見えていない。


「それで、何を見せてくれるって言うんだ。

面白い手品でも見せてくれんのか?」


イビルが茶化すように言う。


「今から見せます。

それじゃあデモニス、ニコリスの頬を全力で叩いてきてくれ」


「……畏まりました」


そう答えたデモニスはニコリスの方まで真っ直ぐ歩いていき、言われた通り全力でその頬を叩いてくれた。


パーッン!!


部屋の中にビンタによる澄んだ音が響き渡る。

この光景を見れば、流石に納得してくれるだろう。

立場の上の人をビンタできる訳ないからな。


「別に不思議な事じゃねぇ。

そいつは、しょっちゅうデモニスに叩かれているからな」


「...…え?」


見慣れた光景かよ!

あんた普段から何してんだ……

しかも、ちょっと嬉しそうにしてんじゃねぇよ……


「そ、そうか……

そしたら、次はイビルの脛を全力で蹴ってきてくれ」


「……畏まりました」


「おいおい!それが出来たなら褒めてやるよ。

やれるもんならやってみろ!」


俺の指示を聞いたイビルは笑いながら、俺の方を見ている。


ニコリスの時と同じように、デモニスはイビルの方へ向かっていく。


「お、おい。本気でやるつもりか?

俺が誰だか分かってるよな?」


そんな言葉など構わず、デモニスは椅子に腰掛けているイビルの脛を、言われた通りに全力で蹴ってくれた。


ゴンッ!!


今度は鈍い音が響く。

しかもその音は一回では収まらない。


ゴンっ!ゴンっ!ゴンっ!


ニコリスの頬は一回しか叩かなかったデモニスだったが、イビルの脛は合計で4回も蹴った。

そんなに蹴らないでいいのに……

見てるこっちまで痛くなってくる。


何か恨みでもあるのかしら……


イビルは顔をしかめて痛みを堪えているが、

カーリスを含めた周りの人間は、その光景に呆気にとられている。


「と、とにかくこれで分かって頂けたでしょうか。

俺は、特定の条件を満たした女性を思いのままに使役させる事ができます」


「なるほど、そう言う事か……説得力が無いわけではない。

地味だがな……」


ええそうですとも。

地味なデモンストレーションですよ……


「それに、本質的な解決にはならないと思うがな……」


ニコリスが俺にしか聞き取れないくらいの声でボソッと口にした。


そう……間違いない。魅了[絶]はあくまで手段でしかない。

効果の範囲は限られているし、俺が死んだ時には恐らくその効果も失われる。

結局は、人間が魔族を受け入れることができなければ、またいつかは争いが起きてしまう。


「納得……して頂けないでしょうか?」


「……」


暫くの間沈黙が訪れる。

不安なんだろう。

こんな突然現れた人間をすぐに信じるのは難しい。


「……良いだろう。私は任せようと思う。

どっちにしろ、今の我々には戦う以外の選択肢はないのだからな」


最初に沈黙を破ったのはニコリスだった。


「他の者はどうだろうか。

意見があれば、今ここで述べてくれ。

無いのであれば、これを総意としてこの人間に委ねることにする」


その言葉を聞いたカーリスやその周囲はニコリスの方を見て頷いた。

イビルは頷きこそしなかったものの、特に文句は言わない。


……たぶん、彼らは心の奥底では戦う事を望んでいない。

この状況にまで追い込まれて、その手段を選ばざるをえないんだと思う。


だから、俺はこの戦いを全力で阻止する。


「パメル様、よろしいでしょうか?」


「勿論よ。わたしは初めから戦うつもりはないもの」


「あ、ありがとうございます!」


「しかし我々にも猶予は残されていない。

この土地の魔素も、あと半年もすれば枯れてしまうだろう。

それに、ハイレイン様の無事も保証されているとは限らない。

期限は……3ヶ月だ。

それまでに成し遂げることができなければ、当初の予定通り戦いを始める。

勿論、我々も協力は惜しまない。協力できることがあれば、なんでも言ってくれ」


3ヶ月……

決して長くはない期間だが、やれる事は十分にある。


ハーレムは……これが片付いたらにしよう……




〜その頃、ネガルシアの某所〜


「魔族に動きがあるとの話を聞いた」


「遂に動き出したのねん……時間の問題だとは思っていたけど」


暗い洞窟の中で、全身をローブに包んだ5人の人物が話し合いをしている。


「連中も我慢が効かなくなったんだろう!ゲッハッハッハ」


「下品な笑い方ね...…ところで、あいつは欠席なの?」


「あいつにも立場がある。来るのも簡単ではないだろう。

 ...…しかし、このタイミングで邪魔が入っては困るな」


そう話す彼らの中心では、直径3mほどの大きさをした石盤が青白い光を放っていた。

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