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魅了[絶]?! カンスト(Lv.99)一般職男子  作者: たかしたま
始まりのはじまり
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第11話 : 歴史との邂逅 (2)

「歴史が違うって、どうことですか?」


「250年前の大戦については知っているな?」


「もちろん知っています。グランへイルドを含めた7カ国による戦争の事ですよね」


「それで、その戦いはどう終結したとある?」


「えーっと、それは…...」


ニコリスの手前、名前を出しにくいんだが…...


「遠慮はしなくて良い」


それを察したニコリスがフォローを入れる。


「...…多くの歴史書には、疲弊した国々に魔物が襲来したことが原因と書いてあります」


「そうだろう…...

だがその歴史は、それはお前たち人間が創り出したものだ」


人間がつくった…...?


「まずは大戦の前まで遡って話そう。

今現在、この世界には7つの国があるのは知ってるだろう」


そうだ。この世界には、俺の生まれ故郷グランへイルドを含めた7つの国が存在し、

言語も文化も異なる生活圏を築いている。


「しかし、これらの国々は元を辿れば一つの国家だ。

その国とは、この世界で最古の国と言い伝えられているロゴポルスキーだ」


ロゴポルスキーが最古の国だと言うことは知っているが、ここまでは何ら驚くことではない。

一つの国から、複数の国家が派生的に誕生することは決して珍しいことではないからだ。


「歴史の真実っていうのは、そのことなんですか?」


「いいや、違う。順を追って話すから、少し黙っていろ」


はい…...


「話を戻そう。

このロゴポルスキーという国家は、私の知る限りその歴史は遥かに長い。

少なくとも、私の生まれた1200年以上前から存在している。

そして、かく言う私もかつてはロゴポルスキーに住んでいた一人だ」


住んでいた…...?

思わず口に出しそうになったけど、グッと堪えた。


「…...」


「おい、何か反応したらどうだ?

これでは、私の独り言になってしまうではないか」


あんたが黙れって言ったんだろうが…...


「住んでいたって言うのはつまり、人間と一緒に暮らしていたって事ですか?」


「そうだ。我々魔族と人間は、同じ土地で生活を営んでいたのだ。

つまり、ロゴポルスキーは私にとっての故郷でもある」


「でも…...今はそうじゃない。ですよね?」


「...…」


ニコリスが言葉に詰まる。


「ウェイン、お前はさっき250年前の大戦は7カ国による戦争だと言っていたな?」


「はい…...」


「それは、偽りだ。

そもそも250年前にそのような戦いは起きていない」


大戦そのものが存在していない?


「お前はこれまで、この世界の歴史書や書物に目を通したことはあるか?」


「はい、勿論あります!

というか…...生まれた環境が特殊だった事もあって、そこらの人より多くは読んでいる自信があります」


これは事実だ。

宮廷司書の家庭に生まれた俺は、小さい時から親の働いていた王立図書館にしょっちゅう篭って、あらゆる本を読み漁っていた。

歴史書にも当然目を通している。


「では、聞こう。

それらを読んでいて、違和感を抱いたことは無かったか?」


違和感…...?


「いえ…...感じたことは一度もないです。

すみません…...」


「気にする事はない。思った通りの無能っぷりだ」


何も言い返せない…

しかし、言い方よ...


「では、少し聞き方を変えてみよう。

お前の故郷であるグランへイルドにある歴史書には、いつからの歴史が刻まれている」


「確か、大戦の終結した250年前からです…...」


「では、タンブレニアについては知っているか?」


「それも250年前からだった筈です」


「シーコーストは?」


「記憶が正しければ、250…...年前です…...」


あれ…...おかしい…...

そう言えば、ウェイクイットやパラネルジー、コックダウンタムに関しても大戦以前の歴史を目にしたことがない。

少なくとも、グランへイルドの王立図書館には無かった。

当然、大戦で消失してしまった可能性だって考えられる。


しかし…...全く残っていないというのは、普通に考えてありえない。

一方で、ロゴポルスキーに関する歴史は250年前の大戦以前のものも記述されている…...


「ようやく気付いたようだな」


頭が混乱して、直面した事実に理解が追いつかない。


「…...確かに変だとは思います。

でも、それが今の状況とどう関係しているんですか?」


「続きを聞きたいか?」


ニコリスが意地悪な笑みを浮かべながら言う。


「き、聞きたいです!」


聞きたいに決まってるだろ!

何でこのタイミングで意地悪するんだよ!

って言うか、あんたが話したいって言い出したんだろうが。


「わかった、続けよう。

お前の故郷を含め、これらの国々はロゴポルスキーによって作られたものだ。

そして、そうなった原因には我々魔族の存在が大きく関係している」


グランへイルドもロゴポルスキーに作られた国ってことか?

どういう事なんだ…


「事の発端は600年ほど前に起きた人間と魔族による大規模な戦争だ」


そんな戦争聞いたことないが…...


「先ほども言ったように、我々魔族と人間は同じ土地で協力し合いながら生活を営んでいた。

不思議に思われるかもしれないが、こうした環境が成り立っていたのにはもちろん理由がある。

人間にできることが魔族にできず、魔族にできることが人間にできなかったからだ」


「それは…...何ですか?」


「我々魔族だけが使うことのできたスキルと、人間だけにできた農耕だ」


「スキルは…...人間にも使えますよね?

それと、魔族に農耕ができない理由って何ですか?」


「まずは農耕に関する質問から答えよう。

我々魔族は特殊な体質をしていて、大地から魔素(まそ)というエネルギーを吸収することで活動をしている。その影響で魔族の住む土地は、食物は愚か植物すらまともに成長することができない。

そして、枯れてしまった大地からは、魔素が供給されなくなってしまう。

しかし人間は、彼らの農耕の技術を用いて、枯れてしまった土地を蘇らせることができた。

そのお陰で、我々は魔素を安定的に吸収することができていたのだ」


だから、この建造物周辺には植物が無く、ゴツゴツとした岩で覆われていたのか。

寂しい雰囲気を感じる訳だ。


「次にスキルに関してだが、人間がスキルを使い出したのは魔物との大規模な戦争が始まる少し前からだ。それまでは我々魔族が、言語による意思疎通が困難な魔物の襲撃からの護衛・防衛を担っていた」


グランへイルドの王立図書館で読んだ書物によれば、スキルは誰にでも習得が可能だった筈だ。


「キッカケは未だに分からないが、ある日を境に人間の中からスキルを使えるものが少しずつ出てきた。その人数は数える程しかいなかったが、その頃から我々と人間との関係も徐々に悪化していった」


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