第8話 駆け出す
午前の授業も終わり、仲良しグループが集まって昼食を摂る中、私はひとりママの手作りお弁当を食べていた──
(……朝の沖田さんの発言……これは早急に対処しないと、高校生活も思い出から消さなくちゃいけなくなっちゃうわ)
「じゃーん! 持ってきたよ。中学の卒アル」
「マジかぁ。私は無理だわ。中学時代の自分なんて見せれんもん」
一番近くでお昼を食べているグループの一人が、卒業アルバムを取り出し、キャッキャと騒いでいる。
「イケメンはいるかなぁ?」
「イケメンねぇ……あっ、そうそう。私は話したことないんだけど……」
ペラペラと分厚いページをめくる度、こちらに風が吹き付ける。
「いた。この人なんてどう? 誰かと一緒にいるところなんて見たことないけど、ぼっちだったのかなぁ?」
「……誰かさんみたいにね」
あきらかに私に向けての発言だ。
気付かないふりをしつつ、お手洗いへ席を外そうと立ち上がったときだった──
「そういえばこの人、この学校にいるよ?」
「えっとぉ……南海 天君?」
「違う違う。確か……南海 天君だったような……」
その名前に思わず反応した私は、二人の話に割って入っていた。
「天君がここにっ? 何組ですか?」
「えっ? あぁ……二組? だったかな?」
気迫に圧されたのか、戸惑いながらも教えてくれたことにお礼をいうと、私は廊下へと駆け出した──
(天君がこの学校に……)