第7話 One day “桜”
地域で有名な桜並木を見上げながら、私は高校までの道を歩いていた──
バスと徒歩で四十分程掛かる距離を、毎日好きな音楽を聴きながら通学している。
と言っても、まだ高校生活十日余りの私は、一緒に登校する友達もいなかったので、それなりに独りの時間を楽しんでいたりもした。
「週末あたり満開かな?」
訳あって、小学校、中学校の同級生が誰もいない高校に進路を決めた私。
過去の記憶など、思い返すつもりもないので、抜け落ちてしまっても構わないとさえ思っている。
それだけのことをされてきた──
そんな私だから、いわゆる高校デビューを飾ろうなどとおこがましい考えを、ほんの少しだけ胸に秘め、しかし、なかなか自分から周囲の人に声を掛けられずにいた。
「今日は声……掛けてみようかな」
頭にひとひら桜を乗せて、静かな学校へと到着した──
私は、誰もいない教室が好き。
人がたくさんいる中に入っていくのが苦手だから。
ガラガラガラ──
いつも通り私が一番のようだ。
五十音順に座席指定がされているため、”星野”である私は、一番窓側の列の前から三番目という、そこそこ高立地な席をいただいていた。
「いっただっきまぁす」
ひとり呟くと、たまごがサンドされたパンを口にした。
窓越しに見える中庭には池があり、よくわからないがお魚が泳いでいると、クラスメイトが話していた。
「冬は……凍ってるのかな?」
「何が凍ってるって?」
「ん? お魚……って、うわぁぁぁ!」
声を掛けてくれたのは、いつも私の次にやって来る子で……。
「お、おはよう。沖田さん」
「おはよう。あっ、ねぇねぇ、星野さんてさぁ?」
「うん。なぁに?」
「もしかして…………ぼっち?」
私は知っている。
この人は上下関係を決める”あいつら”と同じ人間だと。
「……まだ、新しい環境に慣れてないだけだよ。やだなぁ……」
「だよねぇ」
あんな思いを二度としたくないし、その為に私は、地元から遠いこの学校を選んだのだ。
だから、絶対に同じ道は歩まない──
(やっぱりもう少し積極的にならないと、ああいう人に目を付けられるのかな? 気を付けなきゃ……)