第5話 ゆきだるまとおだんご
もう遊べない──
本当に会えなくなってしまうその前に、今という時間を、何も考えずただ楽しんでいた私達。
「いのりは、このくらいの丸を、2こつくって」
天くんは両手を使って、大きさを説明してくれた。
「わかった! ゆきだるまさんつくるの?」
「うん。1こはボクで、もう1こはいのりだよ」
ころころ──
とんとん──
小さな手で小さな雪玉を完成させると、バランスを取るように積み重ねた。
「……天くん? ゆきだるまさん、おかおないねぇ」
「これじゃあ、おだんごみたいだ」
「ホントだぁ。おだんごだねぇ。ママぁ? みてぇ? おだんご」
ママはバッグからカメラを取り出すと、私と天くんに、雪ダルマを持って並ぶように言った──
「もっとくっついて(いつか……この写真が二人を……)」
「ママ? おだんごおちちゃうよぉ」
「はいはい、ごめんね。じゃあ、お写真撮るよぉ」
カメラを見たまま話し掛けてきた天くん。
「いのり? たのしかった?」
「うん。天くんは?」
「ボクもたのしかったよ……いままでありがとう」
カシャ──
シャッター音がしたあと、私は天くんの方を向くと、きっと泣いていたのだろう。袖で目の辺りをごしごしと拭っていた。
私も悲しかったけど、涙が溢れそうだったのをグッとこらえた。
だって、もう遊べないのに、もう会えなくなるのに、最後が泣き顔なんてそれこそ悲しかったから。
だから、天くんには、私の笑顔を覚えていて欲しかった。
(わたし、天くんのこと、わすれないからね……)
「いのり、おひっこしの日に、おてがみかいてくる」
「うん。ボクもかくよ」
雪の冷たさなんて、心の中のポカポカが消してくれていた。
その後、葬儀は滞りなく進み、積もった雪によって静まり返った街に、悲しみが吸われていった──
次回──
いよいよ別れの時が……。